深まる疑念、リーダーへの不信
「いやー!モテるって辛いねぇ!どうせならかわいい子にモテたいんだけどな!」
ここはカーノンの街中。ロットンは周りを多くの人さらい達に囲まれていた。
「へっ!おっさん一人で何が出来るってんだ!」
「そうだ!俺達の姿を見た奴は、生かしてはおけないんだ。すぐに始末してやるよ。その後は……あのガキ共だ!」
人さらい達は武器を取り、ロットンへと向かう。まずはその内の一人が斬りかかった。
「死ねっ!」
「うーん?効かんなぁ。」
振るわれた剣を片手でガード。そして腕を掴み、ギュッと握った。
「ギャァァァ!?」
「悪いがそれはこっちのセリフだ。……一人残らずとっちめてやるよ。」
腕をダランと下げてその場にうずくまる人さらい。それを見てから、ロットンは一歩踏み出した。
「さーて。誰から相手になってくれる?俺は忙しいんだ、早く終わらせようぜ!」
「な、何だこの男は……。ひ、怯むな!行くぞ!」
今度は三人、人さらい達が三方向から攻めてくる。
「終わりだ!」
「よっと。」
ロットンは避けながらゆっくりとしゃがみ、両手を合わせる。すると地面に手を着け、魔力を送り込んだ。
「グランドウォール。」
「はっ?なにグボォ!?」
人さらい達の腹部に向けて土で出来た壁が突き出し、強く打ちつける。それは奴らを弾き飛ばし、体が地面を転がっていった。
「い、一瞬で三人を……。」
「よっと、グランドバインド!」
「な、しまっ!?」
続けて地面に手を当て魔力を送り込むと、人さらい達の足元から、土で出来た手が現れる。それは足を掴み、人さらい達を地面に引きずり込んだ。奴らは下半身が埋まってしまい、腕を振り回しながらもがいている。
「一丁あがり!全員捕まえてやったぜ!」
「ギャァァァ!?た、助けてくれ!」
「駄目だな。こんな酷い事をしたんだ。タダで済むと思うなよ。」
「た、頼む!助けてくれよ!」
ロットンは手を地面に当てると、人さらい達は地面に埋まったまま彼の側まで近づいてくる。どうやら地面の手を動かし、無理やり運んでいるようだ。
「なら、いくつか質問させてもらおうか。ちゃんと答えてくれれば、牢にはぶち込むが命までは取らない。」
「あ、ああ……。」
「まず、お前達数が多すぎじゃねぇか?どこにこんな仲間が居たんだ?」
「そ、それは言えない!」
「ほほう。」
ロットンが手を地面に当てると、人さらいが地面に少しずつ埋まっていく。
「ちゃんと答えてくれないと、地面に全部埋まっちまうかもな。」
「わ、分かった、分かった!俺達は命令があってこの街に集まったんだ。ここで作戦開始を待っていたんだ!」
「なるほど。じゃあ次だ。お前達……ロストガルーダについて知らないか?」
ロットンの質問に、人さらいは青い顔をする。
「ど、どうしてそれを!?」
「ロストガルーダが暴れまわってるせいで、他の魔物や村が困ってるんだ。何か心当たりは……あるよな?」
「ああ……俺達の狙いはロストガルーダの卵なんだ。貴重な魔物の卵、貴族なんかに高く売れるんだよ。あるお方からの依頼で、俺達は奴の巣を調べ、襲撃したんだ。」
「おう……とんでもない事してくれてるな……。だが、俺にも勝てないのにロストガルーダに勝てる訳ねぇだろ。」
ロットンは話していると、ある一つの事に思い当たる。ティムとラルフを抑えつけ、自分と拳を交えた男の事である。
「一緒に居た奴か……!それで、その卵はどこにある!?」
「そ、それは分からないんだ!襲撃した後、獣人の女が卵を持って行っちまったんだ!本当だ!」
「獣人の女?それは誰だ?」
「し、知らないんだ!分からないんだよ!」
ロットンは周りを見るが、他の誰も頷いている。そこで彼は、もう一つの質問をする事にした。
「分かった。じゃあ、これで最後だ。これに答えてくれればいい。お前達へ依頼したのは誰だ?」
「そ、それは……。」
「もっと簡単に言おうか。お前達を牢から出したのは誰だ?」
「わ……分かったよ!言うよ!お、俺達を外に出したのは……この街の」
「総員、構え!……撃て!」
「「「ハッ!」」」
ロットンが待っていた返事。それは銃声となって帰ってきた。
「ギャァァァ!?」
「ゴフッ!?」
「ホゲッ!?」
「な、何!?」
ロットンが呆気にとられているうちに、人さらい達はどんどん弾丸に撃ち抜かれていく。
「た、頼む!助けてくれよ!たのギャッ!」
「お……おい!冗談じゃねえぞ!」
倒れていく人さらい達。やがて全員が沈黙してしまった……。
「ロットン!大丈夫だったか!?」
ロットンが声の方を向くと、そこに立っていたのはフェイクと街役場の職員達だった。
「アン……貴方は。」
「よく一人で勝てたな。見事な物だ。」
「……来るのが遅かったようですな。街の人達、皆酷い目にあっていますよ。」
「それについては反省している。武器の用意に時間がかかってしまってな。」
職員達は周りの様子を調べる為、この場を離れる。そしてロットンとフェイク、二人きりになった。
「しかし、危ない所だったな。危うく殺される所だったぞ?」
「……奴らは拘束してあります。殺す必要は無かったでしょう?」
「いや、奴らは皆に危害を加えていた。仕方ないんだよ。」
その言葉を聞き、ロットンはフェイクにグッと近づく。
「……口封じのつもりですか?」
「……何の事だ?」
「奴らの尋問が終わればこちらが引き取る……その約束を破るつもりだったのですか!」
「この非常事態だ、仕方あるまい。」
フェイクはロットンの肩をポンと叩き、その場を後にした。
「これで貴方達の役目は終わった。連れて来た三人に何か起こる前に、早く帰るといい。」
「…………っ!」
ロットンの手は強く握り締められ、背中を向けるフェイクに視線を向ける事しか出来なかった。
今回も読んで頂き、ありがとうございます。続きが気になる、面白かったと思って頂ければ幸いです。もしよろしければ、ブックマーク、評価を入れて頂ければ嬉しく思います。




