配信者三人、観光準備へ/報告と浮かぶ疑念
「ねーねー!ミー達でどこ行く?早く決めようよ!」
「俺は武具の売り場なんかを見てみたいな。ここで出来る装備は一級品だって言ってたし、なんか武器を買っておこうかな?」
「僕は道具を色々と見てみたいです。短剣もほとんど使っちゃいましたし。」
僕達は一度宿屋に帰り、今は観光の為に準備中!どこを見て回ろうかな?
「ミーはごはーん!おいしい料理を探して配信するよ!二人もどう?」
「おっ、良いねそれ!俺もやろうかな!先生はどうする?」
「はい!やります!僕も食べたいです!」
「じゃあ、どこに行こうか?」
「そうだな……。」
色々と見て回る前に、まずはご飯を食べないと!そう思って、僕達は宿屋にあった地図を探して、行き先を調べる。
「わん!わん!」
「かめー。」
レルとタルトも一緒に受付へ。二人も楽しみなんだね!僕も今からわくわくしてきた、ちゃんと地図を確認しておこう!
「ありゃ、地図が無いぞ?」
「本当だ!一枚も無いよ!?こうなったら……ラルフ買って来てよ!」
「いや、ここはミーが行ってくれよ!」
「駄目だよ!ミーは怪我人だもん!」
「ええ……。」
僕達が地図を探していると……。
「おお!ここに居ましたか!」
「貴方は……。」
宿屋に居たのは門番さん!?何でここに?
「はい、私がリーダーより、貴方達のサポートをするよう指示を受けましたので。ここは私に任せて下さい!バッチリ名所をご紹介しましょう!」
「本当ですか!ならお願いします!」
「ああ、頼むぜ門番さん!」
僕とラルフさんは門番さんから案内を受ける事にした。これで観光も安心だ!
「いや、しかし皆様大変でしたね。まさかトロールだけでなく、ロストガルーダまで現れるとは……。」
「まあ……俺なんか体が動かなくなっちゃったよ……。」
「大丈夫ですよラルフさん!きっとロットンさんが何とかしてくれます!」
「そうですよ!そういう時こそリフレッシュです!明日はお任せ下さい!では、失礼します!」
そう言う門番さんの表情はとても楽しそうだった。
それにしても、ロットンさん遅いなあ。フェイクさんとの話が長引いてるのかな。ロストガルーダの事もあるし、きっとそれ関連かも。のんびり待ってみよう。
◇◇◇
「よし、皆帰ったな。」
「ロットン、どうしたんだ?報告は終わったのでは?」
「いえ、まだお伝えしていない事がありましてね。ソファーを借りますよ。」
ロットンは部屋に二人だけになった事を確認して、フェイクへと話しかける。
「実は今回のクエスト、思ったよりも厄介そうなのです。そちらに用意した書類を見て頂きたい。」
「書類を?分かった。」
フェイクは紙をペラペラとめくる。するとあるページでその手が止まる。
「ろ……ロストガルーダだと!?」
「ええ。」
「ロストガルーダがこの地域に……?いや、これとトロールと何か関係があるのか?」
「はい。村に来ていたトロール達、あれはロストガルーダから逃げて来たのです。山から降りて食料が足りなくなったから、あの村に来たと思います。」
ロットンからの報告、それを受けフェイクは頭を抱えていた。
「ですからそれを踏まえて、あの村に支援をお願いします。後は防衛の為に、少し戦力を割いたほうが良いでしょう。」
「そうか。分かった、こちらで対応しよう。しかし、何故ロストガルーダが……。」
「それについてですが、どうやら子育ての為みたいですな。食料も豊富なあの山で、子どもを育てるのでしょう。」
「こ、子ども……?」
「そう、そこです。卵か雛かは知りませんが、見た所、奴の巣から子どもが居なくなっている。そして奴は森の中を探し回っていた。そのせいでトロール達が森の外に来たのでしょう。」
「そ、それではその子どもを見つければ……。」
「ええ。おそらくは森も平和になるでしょう。」
ロットンの報告を聞き、フェイクは汗を流していた。身近にそんな脅威があるとは思っていなかったのだろう。
「では、私はここで失礼します。村の人達への支援、よろしくお願いします!」
「ああ、任せてくれ。」
ロットンは報告を終え、扉に手を掛ける。すると、何か思い出したかのように手を叩き、もう一度フェイクの方を見た。
「…………ああ、そうだ。一つ言い忘れたことがありましたな。」
「……何だ?」
「子どもを山で探していたロストガルーダが、何故リスクのある村への襲撃を行ったのか、どうも気になりましてね。」
「……何が言いたい?」
「いえ、親は子どもの為なら何でもしますからね。……この件、おそらくこの街の人間が関わっているはずです。ロストガルーダの子ども、さぞ高く売れるでしょう。
……そう言えばそんな山の近く、私達が通ったもう一つの山に、たまたま人さらいが居ましてね。偶然でしょうか?」
「…………。」
怒りの表情をするフェイク。それを見てか、ロットンは不敵な笑みを浮かべ、最後に一言付け足すのだった。
「何、ご心配無く!私はしっかりと警戒してますから!」
ロットンが街役場から帰る時、暗い部屋からその背中を、そっと覗いている者がいた。
「忌々しい……やはり早めに始末しておくべき相手か……。」
その顔はやはり見えない。しかし、陽の光に照らされわずかに光った体……そこからは軍服の一部が見えているのだった。
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