少年テイマー、再び街へ
「よっと。あそこがトロールの、そしてロストガルーダの居る森だな。」
ロットンは小屋から森の近くへ移動し、高い木の上から望遠鏡で周りを覗いている。そこに見える景色は、たくさんの木の実が実っている森の姿だった。魔物達の姿もあちこちに見えている。
「これだけの食い物がありゃ、わざわざこっちに来る必要も無いだろうに。何があるんだ?」
ロットンは更に観察を続けると、森の奥からドタバタと音が聞こえてくる。すると辺り一帯、何やら騒がしくなってきた。
「ウゴォォ!ウゴォォ!」
「きゅー!」
「モー!」
音に怯えたのか、魔物達が一斉に逃げ出す。するとそこに現れたのは……ロストガルーダであった。
「ウギャァァァ。ウギャァァァ。」
「アイツか、ティム君が言ってたのは!」
気配を殺してじっとしているロットン。見つかれば戦闘は避けられない。木の陰に隠れてやり過ごそうとしていた。
「ウギャァァァ。」
「行っちまった。どうするかな……よし、後を追ってみるか。」
やがてロストガルーダは森の奥に入ってしまった。ロットンは距離を詰め過ぎないよう警戒しながら、後に着いていく。
「ウギャァァァ!ウギャァァァ!」
「うぴゃああ!」
「ぴい!ぴい!」
……ロストガルーダの向かった先は、ゴツゴツとした岩場。周りを見渡しながら岩場の陰に行くロストガルーダを追跡すると、大きな巣を発見する。ここまで来てしまったロットンは、冷や汗を流していた。
「ここで子育てしてるのか……。だが、ロストガルーダは滅多に人前に出て来ない筈だ。生態調査なんて依頼が入る位だしな。それが何故?」
ロットンは注意深く巣を観察する。すると子ども達用の小さな巣が、三つ置いてあった。そのうち二つから、小さい雛が出てきて、親の側へと歩いている。
「子どもの声は二匹分だぞ……まさか!」
ロストガルーダは来た子どもに果物や肉を与えている。そして後一個ある巣を見て、寂しそうな顔をしていた。
「ウギャァァァ……。」
「子どもが居なくなったから、人里に来たって事か!」
「ウギャァァァ?」
「や、やべぇ!」
思わず大声を出してしまったロットン。それに気づきかけたロストガルーダ。巣の近くを確認している隙に、ロットンは素早くこの場を離脱した。
◇◇◇
「先生、何も入り口で待ち構えて無くても……。」
「一応です!ロットンさんが来るまで、ちゃんと見ておきますから!」
あれから数時間。定期的に外を見てるけど、特に魔物が襲って来る気配は無い。外もすっかり暗くなっちゃったけど、きっともう少しだ。ロットンさんが戻って来るまで、見張りを続けないとね!
「よっ諸君!帰ったぜ!」
「あっ!お帰りなさい!」
僕が外を見ると、そこにはロットンさん!どうやら見回りが終わったみたいだ!
「どうでしたか?何かありました?」
「まあな。取りあえず中に入らせてくれ。」
僕はロットンさんを小屋の中に入れ、ラルフさんと机の側に座る。ロットンさんは、何か難しい顔をしていた。
「さっき森を見てきたが、今は問題は無さそうだ。食料もあるし、魔物ものんびりと過ごしてたよ。ただ……。」
「ただ?ロットン、何かあったのか?」
「なになに?何かあったの?」
ベッドの上からミーさんも話しかける。
「あのロストガルーダ、子育て中みたいでな。それで森の中で色々と食料を探してたんだ。だからそれに怯えて、他の魔物が外に逃げちまったみたいなんだよ。」
「なるほど。確かにロストガルーダなら、大半の魔物は逃げてしまいます。ご飯が足りなくなったから、それで近くのこの村に……。」
「だから、この事をフェイクさんに伝えなきゃならんな。こんな事態滅多に無いだろうが、やはり対策は考えた方がいい。」
するとロットンさんは寝床をすぐに整え、そこに潜り込んだ。
「だから、俺達は街に戻った後、それを報告しなきゃならん。明日は早いから、お前達も早めに寝とけよ?」
「はーい!」
「了解だ!」
「かめ!」
「分かりました!レル、僕と一緒に寝ようー!」
「わん!」
僕達は早めに寝て、次の日にカーノンの街へ帰る事にした。何だか大変な事になってきたけど、今は体を休めておこう。僕もレルと一緒に寝て、明日へ備える事にしたんだ。
そして朝!僕達は起きた後、ロットンさんの手作りサンドイッチを食べて、外に出る。そしたら、村の人達が僕達の所にやって来た!
「皆様!トロールを倒してくれて、ありがとうございます!これでまた野菜を育てられます!」
「いえ!これが私達の仕事ですからね!それで、報告の為に一度街に帰らんといかんのですよ。」
「そうですか……。お礼もまだしてないのですが……。」
「お気になさらず!」
ロットンさんはおじいさん達に囲まれて嬉しそう!一方僕とラルフさん、ミーさんは、やっつけたトロール達の所へ行く。彼らは村から離れた場所でじっとしていた。
「う、ウゴォォ!」
「待って待って!攻撃するつもりは無いよ!レル、お願い!」
「わん!」
「わん!わん!」
「ウゴォォ……?」
「わん!わふ!」
「ウゴォォ!ォォォ!」
「わん!」
ラルフさんとミーさんは不思議そうにレルを見ていた。
「先生、何て言ってるんだ?」
「あれは……説得してるんです。ロストガルーダの件はロットンさん達と相談して決めましょう。でも。」
「わん!」
「あっ、終わった!」
トロール達は一列に並び、村の人達の所へ。すると両手を合わせ、何か伝えようとしていた。
「ウゴォォ。ウゴォォ。」
「こ、これは……?」
「トロールは皆さんに謝りたいんです。迷惑をかけていたのは分かってるんですね。」
「き、君は魔物の言葉が分かるのかい?」
「はい。全部ではありませんが、だいたいなら!」
「しかし……信用できますか?」
「トロールはロストガルーダに森を追われてここに来たんです。悪気があった訳では無いと思います。被害の事はフェイクさんに相談してみますから、今は一度、様子を見てみませんか?」
僕は村の人達に説明する。すると皆で話し合い、しばらくしてさっきのおじいさんが前に出て来た。
「分かりました。でも、できるだけ早くお願いします……。私達も生活していかないといけないので……。」
「はい!ではロットンさん!」
「おう!早めに行くとしようか!……では、皆さん!私達は報告に行ってきます!」
「冒険者さん、お願いします!」
「さて、急ぐぞお前達!早く帰って報告だ!」
「レルー!全速力だよー!」
「わ、わん!」
ミーさんはレルの背中に乗って大はしゃぎ。僕はラルフさんと並んで走っていた。
「ラルフさん、急ぎましょう!」
「待ってくれよ皆!早すぎるって!」
「かめー。」
村の人達に挨拶をした後、僕達はカーノンの街へ急いで走る。この事を、早くフェイクさんに報告しないと!
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