試験終了、小屋の中にて
僕達は一度、待機場所とする小屋に向かう。扉を足で開けると、先に僕とロットンさんがミーさんを抱えて入り、その後にタルトとレルがラルフさんを引っ張って入った。
「ティム君、ミーはそこに寝かせてくれ。」
「はい!」
ロットンさんが指示をした場所である小さなベッドにミーさんを降ろす。するとロットンさんがミーさんの服を脱がせ、胸の傷を確認した。
「羽が刺さってるのか。」
「はい。今は傷は塞がってますけど、これを抜くのが怖くて……。」
「分かった、俺がやろう。ミーの手を握ってやってくれ、きっと力になる。」
ロットンさんはミーさんに突き刺さった羽に手を掛け、少しずつ引き抜いていく。ミーさんは痛そうに顔を歪めるけど、僕は彼女を押さえながら、両手で手を握っていた。
「うっ。痛いね、やっぱり……。」
「大丈夫です!ロットンさんなら上手くやってくれます!」
「……良し!これで羽は抜けた!」
ロットンさんは羽を抜くとすぐに、刺さっていた場所に触れ、魔力を送り込む。そして傷口を塞いだ後、薬草を傷口に貼り、包帯を巻いた。
「ひとまずこれで良しっと。ティム君、助かったよ!ありがとうな!」
「ロットンさんもありがとうございます!」
「だが、どうしてミーに羽が刺さってるんだ?トロールの討伐依頼で、別の魔物が襲って来たのか?」
「それはこちらで説明します。ラルフさん、こっちへお願いします。」
「分かった。」
僕達はミーさんのベッドの側に机を寄せ、彼女にも聞こえるよう、話を始めたんだ。
「つまり、トロール自体は倒せたって事か。間違い無いな?」
「はい。ミーさんもラルフさんも、それぞれでトロールは倒せていました。」
「そして、ロストガルーダか……。」
「はい。今回は逃げて行きましたが、次に来たらと思うと……。」
ロットンさんは僕達三人を見て、頭を下げた。
「すまない!俺がついていながら守ってやれなかった。本当にすまない。」
「気にしてないよ。だって、あんなのが来るなんて、分かるはずないもの。」
「ロットンさん、皆無事だったんです。大丈夫ですよ!」
「だが、これは何か考えなくちゃならない。何故ロストガルーダがここに居たのかも気になる……。」
そしてロットンさんは、ラルフさんを見る。彼はその場でぷるぷると震えていた。
「ラルフ、お前大丈夫か?」
「あ、ああ。俺、あんなのに会った事、今まで無かったからさ。二人でも歯が立たない相手、もしランクが上がれば、あんなのを相手にしてくんだよな……。急に不安になっちゃったんだ。」
「ラルフ……。」
力は後でつける事は出来るけど、気持ちだけはどうにも出来ない。そして気持ちで負けたら、力も出せなくなっちゃうんだ。でも、ラルフさんには……。
「ラルフさん!隣を見て下さい!」
「えっ?」
「ラルフさんの隣です!何が見えますか?」
「俺の隣……。」
そう、ラルフさんの側にはタルトがいる。タルトは心配そうにラルフさんを見つめていた。
「か、かめ。」
「タルト。俺……。」
「かー!」
「うわっ!?」
タルトは前足でラルフさんをペチンと叩く。その後彼の足に乗り、堂々と座った。
「怖いのは当たり前です。誰でもあんなのを見たら怖いに決まってます!でも、大切なものがあれば、きっと大丈夫です!一緒に乗り越える事が出来ますから!」
「かーめかめ!」
「そうか……タルト、一緒に頑張ってくれるか?」
「かめー!」
「うん……うん!俺、頑張るよ!だからタルト、力を貸してくれ!」
「かめー!」
ラルフさんはタルトを撫でていた。二人とも、とても嬉しそうだ!
「んじゃ、ラルフも落ち着いたし、今後の事を真面目に話すとするか。いいな?」
「はい。」
「うん!」
「ああ。」
そしてロットンさんは咳払いをしてから、僕達三人に向かって話しかけた。
「まず……今回の試験はここで終了になります。」
「「「えっ?」」」
「えっ?も何もねえだろ。これが本題だったんだから。……今回の結果は君達の配信や、ティムさん、ミーさん二人からの話を聞いて判断しようと思います。分かりましたね、ラルフさん。」
「ああ、頼むよ。」
ロットンさんは頷き、言葉を続ける。
「今から一度、私が周辺の安全を確認します。そうしたらすぐにカーノンへ帰還。今回の事をフェイクさんに報告します。」
「分かりました。僕達はその間、ここで待ってますね。」
「では皆様、お疲れ様でした。」
「「「お疲れ様でしたー!」」」
そしてロットンさんは再び咳払い、すぐに小屋の扉に向かう。
「ま、そういう事だから今から見回り行ってくるわ。ミー、お前は一緒に街まで行けるか?キツいならここで待っててもいいが。」
「問題無いよ。それに、ちゃんと怪我を見るならカーノンの街の方がいいでしょ?」
「分かった。ティム君、二人の事は任せていいかな?」
「大丈夫です!そちらもお願いします!」
「ああ!じゃあ、また後でな!」
ロットンさんはそう言って、小屋を出ていった。
「ねーラルフー。ロットンっていつもあんな感じなの?」
「ああ。アイツは仕事とプライベートを分けるタイプなんだよ。」
「ふーん。真面目なんだね。」
「二人は休んでて下さい。僕がここを守りますから!」
「頼もしいなー。さっすがティムだよー!」
「先生、お願いします。」
二人を見て、僕は扉の側に座る。すると側にレルが来てくれた。
「わん!わふー!」
「うん、もう少し頑張ろうね!」
そうだ、僕はテイマーとして頑張ってきたんだ!二人の事もちゃんと守ってみせるぞ!
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