予期せぬ乱入者、ロストガルーダ!
「先生……何が近づいているか、分かるか?」
「今は分かりませんが、落ち着いて下さい!焦ったら駄目です!」
もの凄い勢いで近づいてくる魔物……見た目はぼやけているけど、近づくにつれて、少しずつその姿が見えてきた。
「あれは……。」
「ねーティム。あの魔物、翼が背中にだらーんってかぶさってるよ!マントみたいだね!」
「翼が……被さってる。…………嘘でしょ!?」
まさか!?そんな事が!?
「ど、どうした先生!?」
「ラルフさん、ここに来る時に、魔物の話をしましたよね?」
「ああ、昇格試験を選んだ時だろ?確か、ロストガルーダだったかな。どうしてそれを今?」
「今来てるのが……そのロストガルーダです!」
「「へ?」」
僕の言葉で驚いたのか、ラルフさんだけでなく、ミーさんもぽかんと口を開けていた。
「ろ、ロストガルーダ!?どうする先生、何かやっつける方法は!?」
「かなり難しいです!しかもここには民家がある。もしビームを撃たれたら……。」
「ティム、来たよ!ロストガルーダが!」
僕達の前まで魔物が近づき、そして止まる。強靭な足腰、鍛えられた腕、そして背中にある、巨大な翼。
間違い無い、ロストガルーダだ……!
「ウギャァァァ!」
「ひっ!?」
「ラルフ、下がって!ミーが相手をしてあげるよ!」
「駄目ですミーさん!近づくのは危険です!」
「大人しくやられるのを待てっていうの?そんなのやだよ!」
ミーさんはロストガルーダの足下に滑り込む。そして足首を掴んで……。
「せりゃぁぁぁ!」
「ウギャァァァ!?」
頭から地面に叩きつけた!?どんな鍛え方をしたら、そんなパワーが……!
「どんなもんだい!ミーはつよい……えっ?」
ミーさんは何かに気づき、自分の胸を見る。するとそこには、大きな羽が深々と刺さっていた。
「えっ……ガバッ!?」
口から血を流し、その場に倒れるミーさん。ロストガルーダは彼女を足で踏みつけようと動く!
「やめろぉぉぉ!」
僕はブレードを両手に持ち、背中を斬りつける!でも、巨大な翼に弾かれて僕は地面に落下してしまった。
「ウギャァァァ!!」
「くそっ、えいっ!」
僕はロストガルーダへ短剣を投げる。奴はそれを腕で掴み、ギュッと握る。
「ウギャァァァ。」
「今だ!」
「ウギャ……ギャァァァ!?」
「行くよレル!一撃で決める!」
「わん!」
手からドカンと爆風が起こり、ロストガルーダは怯んだ!僕は魔力を全部ブレードに送り、レルに合図を送る。魔装を展開する時間は無い、無理やりにでも技を使わなきゃ!
「魔技、[ハウンドクロウ]!」
ブレードを魔力で変形させ、巨大な鉤爪に。そして素早く腕に嵌め、全力で腕を切り裂く!
「ウギャァァァ!?」
「もう一回だ!」
僕はもう一度鉤爪を振り、今度は足を斬りつける!すると奴は慌てたのか、その場に転んでしまった。
「レル!トドメを!」
「ガゥゥゥ!」
ロストガルーダの首元を狙って、レルのブレードが振り下ろされる!同時に僕も飛び上がり、奴の首に鉤爪を突き立てた。
「ウギャァァァァァァァァァ!!」
「うわっ!?」
「わふっ!?」
その瞬間、翼を動かし、強烈な風を起こしたロストガルーダ。僕達は攻撃の途中で吹き飛ばされてしまった。
くっ……惜しい!確かに当たった、でもダメージにはなっていない!
「ウギャァァァ!」
ロストガルーダは背中を向けると一目散に山の方へ走ってゆく。な、何とか危機を乗り越えた、かな……。
「あ、ああ……。」
「ラルフさん!しっかりしてください!」
ラルフさんは地面に座って震えている。そしてミーさんは……。
「う、うう……!」
「レル!早くロットンさんを呼んてきて!」
「わん!」
まずい、応急処置をしないと!でも、羽を抜いたらきっと血が溢れてくるよね……。
「今はここで治すしかない!羽を抜くのは後だ!」
僕はカバンの中にあるポーションをがぶ飲みし、魔力を補給する。そしてミーさんの胸に手を当て、魔力を送り込んだ。
「よかった、急所は外れてる!急がなきゃ!」
少しずつ傷は塞がっていく。羽は刺さったままだけど、今は血を止めないと!
「うっ……ティム?」
「ミーさん!よかった、起きたんですね!」
「うん……。一撃でやられちゃった……羽の攻撃、気づかなかったよ……。」
「今は喋らないで!もうすぐ傷が塞がりますから!」
僕はポーションを飲みながら魔力を送り続ける。すると、村の方からロットンさんが大急ぎでやって来てくれたんだ。
「な、どうしたんだこれは!?」
「ロットンさん!ミーさんが怪我をしてます!今は回復魔法をかけてますから、安静に出来る場所まで誘導して下さい!」
「分かった!おいラルフ、さっさと立て!」
「あ、ああ。」
「かめ!かめ!」
タルトはラルフさんを引っぱたいた後、足を咥えながら引っ張って行く。
「ティム君!これはいったい……。」
「後で説明します!とにかく急ぎましょう!」
僕はロットンさんと協力してミーさんを抱え、村の方へ!
「俺達が借りる予定だった小屋に行こう!こっちだ!」
「はい!」
僕達は急いで、待機場所になる小屋へと向かって行った。
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