見習いテイマー、パートナーを探す
「さて、まずは仲良く、仲良くっと……。」
俺はラルフ。冒険者と配信者を兼任してるんだ。今は森の中で、テイマーになる為の勉強中。俺を助けてくれたテイマー……ティム先生の指示で、魔物を探している最中なんだ。
「い、居ない……いつもは色々出てくるんだがな。」
つい最近パトロールで魔物を追い払ったからか、今は見かけない。普段はいい事なんだけど、まさかこうなるとは……。
「ん、あれは?」
俺はふと川の方を見る。するとそこには、川辺でひっくり返って動けない魔物が居た。足をパタパタ動かしている、甲羅を背負った魔物だ。
「あれは、サンドタートル!陸地で暮らす魔物だな。何でこんな所に?」
俺は一度辺りを見渡すと、サンドタートルの側には木の実がたくさん落ちていた。そして上を見ると、実のなった木が崖に立っていた。
「あそこから落ちたのか……よし!」
俺はサンドタートルに駆け寄り、甲羅にそっと手を掛ける。俺に気づいたサンドタートルはさっきより激しく足を動かしていた。
「ゴメンな。すぐ助けるから!そーれ!」
俺は甲羅を上に引き上げ、そのまま力任せに前に押す。するとドスンと言う音と共に、タートルは元の体勢に戻った。
「これで大丈夫だろ!俺は魔物を探しに行くから、お前は早く住み家に帰れよ!」
早く行かないと!俺はこの場を離れようと足を動かす。……あれ?動かない。どうなってんだ?気になって足元を見ると……。
「かめ。」
「……はぁ!?」
サンドタートルがズボンに噛みついていた。
「ちょっ、待ってくれよ!気に障ったなら謝るよ!」
俺はズボンを引っ張ると、すぐにこの場を後にする。
「か、かめー!」
「どうしたんだ?まだ何かあるのか?」
もう一度振り返ると、サンドタートルは俺の前に木の実を持って来て、足元にそっと置いた。
「かめー。」
「これ……俺にくれるのか?」
「かめ!」
何だろう……こうやって見ると、意外とかわいく見えるな。つぶらな瞳、つやつやの甲羅。……少しくらいここに居てもいいかな?
「ありがとうな!じゃあさ、一緒に食べよう!」
「かめ。」
それから少し時間が経った。俺はサンドタートルと一緒に木の実を食べながら、今までの事を話していた。
「……って事があってな。俺はテイマーになる為に魔物を探してるんだよ。」
「かめー。」
話が通じているかは分からない。でも、話していると安心する、そんな気がしていた。
「じゃあ、俺はもう行くよ!木の実、おいしかったぜ!またな!」
俺はサンドタートルに手を振って別れ、森の中に戻ろうとする。だがここで後ろからゴトッと音が響いた。
「何だ!また転んだのか?」
俺が振り向くと……サンドタートルはこちらにゆっくりと歩いて来ていた。
「か、かめー!」
「お前……もしかして俺と一緒に来てくれるのか?」
「かめ!」
そして、サンドタートルは俺に追いつくと背中によじ登り、そこにしがみついた。
「かーめー。」
「そっか……ありがとうな!それなら一緒に行こう!俺はラルフ、よろしくな!」
「かめ、かーめ!」
思ったのとはちょっと違ったけど、これで魔物の発見は終わったかな?そう思った俺は、一度先生との待ち合わせ場所に戻ることにした。
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