獣人少女、捕まっていた事情を話す
「ごはん!ごはんー!」
「まだですよ。皆揃ってからです。」
「えー?早く食べようよー。」
「今ロットンが手続きしてるらしいんだよ。全員揃ってからの方がいい。お金はあいつが出してくれるんだし。」
僕達はロットンさんの指示で、カーノンの街の宿屋に一泊する事になったんだ。今は少し時間があるし、僕達はラルフさんの部屋で休んでいるんだよ。
「わん!わん!」
「かめー!」
「タルト、背中洗ってやるからこっち来てくれ!」
「かめー!」
ラルフさんは水の張った桶を持ってタルトの側に座る。タオルに水を浸して、背中の甲羅を拭いてあげてるんだ。タルトも気持ちよさそう!
そうだ、僕は気になった事を聞いておかなきゃ!
「あの、ミーさん。ちょっと聞きたい事があるんですが。」
「ん?なーに?」
「ミーさん、どうしてあの人達に捕まっちゃったんですか?」
「えっ?」
「いえ、強いって自信満々に言ってたから、何でかなって。」
僕が聞くと、ミーさんはこっちを見て、両手をばっと広げた。……何でだろう?
「いいよ!どうしてミーが捕まっちゃったのか、教えてあげるよ!ラルフにも教えてあげる!それはね……。」
ミーさんは床にぺたんと座り、話し始めた。
◇◇◇
ミーはあの山で、配信をしてたんだー!冒険者と配信者を両方やってるけど、どっちかと言うと配信寄りなんだよ!
「みんなみてみてー!ミーはここで日向ぼっこしてるんだ!気持ちいいよー!」
見て分かると思うけど、ミーは獣人なんだ!なんか耳の位置とか、尻尾とか、他の人と違うから一度調べた事があってね。そしたら[ワーキャット]っていう種族だったの!
「あっちには川が流れてる!お魚取ってくるね!」
ミーはこの特徴を活かして配信者になったの!今は人気も出てきたし、色々やるって事が楽しい!だからそれを伝える配信者になりたかったんだー!でね……。
「今日もありがとー!ミーの配信、また見てくれると嬉しいなー!じゃあ、またねー!」
ミーは配信が終わって山を下る途中だったんだ。そしたら……。
「おい、誰にも気づかれてないな?」
「ああ、こっちは問題無い。さっさと行こう。」
何か企んでるのかな?ミーは慌てて、魔導カメラをあの人達に構えたんだ。
「ミスはするなよ、俺達の目的は……」
パキッ
「あっ。」
「誰だ!?」
一斉にこっちを向く男達。でも、ミーは焦らなかったよ!
「ここで始末するぞ!やれ!」
「おう!」
ナイフを突き立てる男。ミーはそれを払い除け、男を背負ってぽいっと投げるんだ!
「えーい!」
「うわっ!?」
投げられた男はベキッと音を立てて崩れ落ちた。腕が木にめり込んじゃってる。強く投げて折れちゃったかも。ごめんね……。
「こ、この!何て事を!」
「先にやったのはそっちだよ!?ミーは反撃しただけだもん!」
「お前達は下がっていろ。私がやろう。」
「あ、ああ。頼む!」
出てきたのは黒い布を着込んだ人。何だか異様な気配を感じたんだ。
「な、何!?」
「お前……珍しいな。ワーキャットの小娘か。高く売れそうだな。」
それで、体が動かなくなっちゃった。力いっぱい動こうとするけど、やっぱり駄目!
「う、動かないー!ミーに何したの!?」
「うるさい。お前達、こいつを袋に詰めろ!」
「おう!」
戦う事も出来ずに、ミーは捕まっちゃったんだ。それでこの後で二人に助けられたんだよ!
◇◇◇
「って事があったんだー。」
「それって、俺達がいなかったら大変な事になってたよな。」
「うん!だから、二人には感謝してるよ!ありがとう!」
「どういたしまして。……ロットンまだか?そろそろ腹が……。」
ラルフさんのお腹がぐーっと鳴っていた。それと同時に、僕のお腹もぐーっと鳴る。
「……今のうちに、明日の準備をしてきますね。レル、行こう!」
「わん!わん!」
「そ、そうだな先生。俺達もやってくるよ!」
「かめー!」
僕達は一斉に動き出した。何かやってれば気が紛れるし、準備は必要だからね!
「ミーはちょっと寝てるね。おやすみー。」
僕達はそれぞれ自分の部屋に入り、準備を始める。ロットンさん早く来ないかな?
◇◇◇
「オッケーオッケー!今日の晩飯は何にするかな?」
ロットンは手に袋を抱え、宿屋に向かっていた。
「体力のつくもの食わせてやらないとな。そしたら……もう一度地図の確認でもしとくか!」
ロットンはラルフの試験の為、色々と準備をしている。その様子は楽しげであった。
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