見習いテイマー、昇格試験を選ぶ
ラルフさん達が村に来た次の日。僕はベッドから起き、すぐに荷物をまとめる事にした。
「おはようレルー。朝早いと眠いよねー。レルはもうちょっと寝てていいよー。」
「わふー。」
レルは座って目を閉じている。やっぱり眠いよね、ごめんね。でも、準備はきちんとしておかなきゃ!僕はできるだけ音を出さないように、リュックに荷物を詰め込む。
「できたー。僕ももう少し寝ようー。」
まとまった荷物を見て安心した僕は、またベッドに入る事にしたんだ。
◇◇◇
「ティム先生、レルちゃん!起きろー!もう朝だぞ!」
「…………ラルフさん?おはようございます!」
「おはよう!今、リースちゃんの家でロットンが呼んでるから、一緒に来てもらっていいかな?」
「はい!今行きます!」
ラルフさんに起こされた僕は、荷物を背負ってリースさんの家に走る!外に出るとピカッと太陽が出でいた、やっぱり明るいと気持ちいいなー!
「今日も頑張るぞ!ね、レル!」
「わん!」
「よっ!おはよう諸君!」
「おはようございます、ロットンさん!」
「おはよう。それで、お前が昨日言ってた昇格試験だけど、何するんだ?」
「ああ、試験内容は……これだよ。」
ロットンさんはクエストの依頼書を持って机に乗せる。依頼書は……全部で三枚かな?
「三枚?何だこりゃ?」
「お前、一応言っておくがこれも試験だからな。ここからもう観察対象になってる事も忘れんなよ。」
「はあ!?普通現地でやるもんだろこういうのは!?気が休まらないぞ!」
「今回は俺が試験官だ、黙って聞いてもらうぞ。現地以外でも、人間性とか不測の事態への対応とか、俺の試験はそういうのも考慮されるんだよ。」
「め、面倒くさい……。」
「なら試験官変えるか?」
昨日とは違う、ちゃんとした役場の職員さんの顔だ。ロットンさんは、仕事のオンとオフをきっちり分ける人なんだね。
「心配すんな!余程目に余る行為がなければ問題無いから。逆に、その行為をする馬鹿を落とすための物だからな。」
「お前、本当そういうのはしっかりしてるよな。」
「悪いがこれが俺の仕事だ。んじゃ、試験の説明だ。」
ロットンさんは一呼吸置き、ラルフさんに昇格試験の説明を始めた。僕はそれを椅子に座って聞く事にした。
「ラルフさん、今から君には三つあるクエスト、いずれかに挑戦してもらいます。どれでも好きな物を選んで下さい。いずれも緊急性は無いので、ご自由にどうぞ。」
「本当に好きな物で良いのか?」
「構いませんよ。ただし自己責任で選んで下さい。」
「分かったよ。どれどれ……。」
机に乗ったクエストを覗くラルフさん。僕も横からこっそり覗いてみる。
・トロールの討伐、並びに周辺の調査
・武具及び農具製造の為、鉱石の採集
・ロストガルーダの動向調査
「……はい試験官さん質問です。」
「何か疑問でも?」
「これ、Cランクへの昇格試験だよな?おかしいのが混じってる気がするんだが。」
「もう試験は始まってますから。[自分に合った]物を選ぶのも実力です。はい。」
「うーん……。」
「本当にどれでも良いですよ?自信があれば。」
こ、これは……冒険者自身に強さを確認させる手法なんだ!力量を把握出来てるかも重要なんだ!
「はい試験官さん質問です。」
「何か?」
「隣の試験官さんに意見聞いても良いですか?」
「……構いませんよ。よく考えて、自分に合った内容を選んで下さい。」
するとラルフさんは僕に近づき、そっと耳元へ。
「ティム先生ならどう見る?」
「えっ。」
「先生なら何受ける?」
「そ、それを自分で決めるのが試験ですよ!?」
「わ、分かってるさ。でも、一応な。俺はトロールにしようと思うんだけど。」
僕はロットンさんの方を見ると、彼は僕にガッツポーズを見せている。いいよって事なのかな?それなら……。
「はい。僕ならトロール討伐に行きます。試験の合格を狙うなら、Dランクのラルフさんとタルトで狙う格上、それでも一番勝算があるのはCランクの魔物、トロールです。」
「採集依頼はどうかな?」
「場所にもよりますが、敵の情報が把握出来てないのは危険です。今は避けたほうが……。」
「やっぱりそうだよな。よし!決めたぞ、俺はこのクエストを受ける!」
ラルフさんがロットンさんに渡した依頼書は……トロール討伐だ!
「了解しました。それでは、試験を始めましょう!」
「ああ!よろしくお願いします!」
そして依頼書を受け取ったロットンさんは、すぐに荷物を持って、背中に背負う。
「じゃあ、行くか!バッチリ観察してやるから覚悟しとけよ!」
「おう!すぐにやっつけて、ランク昇格してやるさ!」
ラルフさんの試験、僕も見て参考にしないと!新しい冒険の始まりだ!
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