閑話 どこかの魔族の集会にて
今回も閑話になります。次回から物語を進めていければと思いますので、よろしくお願いします。
グランド王国で魔王とテイマーの戦いが起こってから数日後。テイマーと魔王が勝負していた、それも[勇者でも敵わない魔王]に[ただのテイマー]が勝負出来ていた。この事実は予想外の場所へ影響を与えていた。
◇◇◇
「こ、これより緊急会議を始める!何か質問があれば言ってくれ!」
ここは何処かの地下にある、魔族の集会。ここを仕切っている魔族の男は、住民を集めて意見を募っていた。
「では議題を発表する!今回のテーマは……ズバリ、この配信だ!」
男が前に出て、手元の魔導パソコンを操作する。すると集会に集まった者達の真上に、巨大な画面が現れた。
「「「「「おおおおーー!!」」」」」
映っていたのは、テイマーの二人が仲間の魔物と一緒に、魔王とそのメイドに戦いを挑んでいる場面である。
「今回の議題はこちらの配信についてだ。皆、何か情報はあるか?」
「無いや。初めて見る顔だよ。」
「ギャォォォ。」
「グガーっ!」
「うけー。」
「お、落ち着け諸君!」
ここに住む魔物や魔人達が、次々に声を上げる。予想外の盛り上がりに、男は少し慌てつつも司会を続けていく。しかし……。
「だ、誰も知らないのか。あんなに凄い人なら、誰かが知っていてもおかしくないだろう!」
「でも、リーダーだって知らないじゃん。それを求められても無理だよ。」
「うけー。」
「うう……そうだな……。」
肩を落として地面にうずくまる男。ここのリーダーではあるのだが、少し頼りない印象である。
「し、しかしこれは緊急の課題だ!周りには我らを狙う人間、魔族がたくさん居るんだ。更にこんなのが出てきたなら手に負えなくなる!」
男が頭を抱えている中、返答を続ける一人の魔族がそっと手を挙げる。その魔族はローブを着込んでおり、姿は隠れている状態である。
「あっ!提案、あるよ!」
「何っ、提案だと!?でかした!早速教えてくれ!」
話の最中、男は提案を持って来た魔族に頭を下げる。どうやら意見を満遍なく聞いていくタイプの様である。
「その人達と友達になればいいんじゃない?」
「「「「「と、友達……?」」」」」
突拍子もない発言に、一瞬場が凍りつく。何故かは自分達が一番よく知っていた。
「き、君!人間は悪い奴がたくさん居るのは知っているだろう!?人間達は私達相手に酷い事をする。引っぱたいたり、無理やり働かせたり、最悪殺されてしまう仲間も居たんだ!」
「それはそうだけど……。」
「そ、それにテイマーだぞ!我らをこき使う怪人だ!あの二人もいやいや従ってるに違いない!」
仕切る男はこの提案を何とか打ち消そうとするが、この魔族は更に提案を続ける。
「そうかな?だって、あの人達と魔物達は、ちゃんと信頼関係あるよ?」
「な、何と!?」
画面に近づき、配信に入っている音を拾う男。すると確かに、お互いに信頼し、協力し合っている四人の声が聞こえてきた。
「おお……おお……!」
「それにあの人達、魔物の力をずっと引き上げる事も出来るみたいだし、仲良く出来れば抑止力に……ひょっとしたら人間との関係改善にも繋がるんじゃない?」
「た、確かに!いや、しかし……。」
男は首を捻って、頭で必死に考える。打算と希望が入り混じった混沌を頭に作りながら、何とか解答を出そうとしていた。
「じゃあ、僕がまず行って、あの人達に危険が無いか調べてくるよ!それで、もし本当にいい人達なら、友達になりたいって言ってくる!」
「い、いや!ならば私が!」
「リーダーが居なきゃ誰がここを仕切るのさ!じゃあ行ってくるよ!ほら、行こう!」
「うけー。」
一人の魔族は自分の相方である、のんびりとした鳥の魔物を連れて走り出す。それを見ていた男は、映っていた映像を見ながら呟くのだった。
「……若い世代なら、この状況を何とか出来るのだろうか?ここは任せるしかない。でも…………もしそんな日が来るなら、嬉しい事だ。無事で帰って来てくれ、頼むぞ……!」
「さあ、ここを登れば地上に出られる。まずは外に出て、テイマーさんを探すよ!」
「うけー!?」
鳥の魔物の足を掴んで地上へ向かう魔族。二人は外の世界に向けて飛んでいくのだった。
◇◇◇
様々な場所で、少しづつ変わっていくテイマーの評価。一方そのテイマーの一人である少年、ティムは…………。
「レルー。今日はお家で配信しよう!準備はいい?」
「わん!わん!」
「うん!今用意するから待っててね!」
「わん!」
自宅で配信の準備をしているのだった。
今回も読んで頂き、ありがとうございます。続きが気になる、面白かったと思って頂ければ幸いです。もしよろしければ、ブックマーク、評価を入れて頂ければ嬉しく思います。




