変わり始めるテイマーの評価
グランド王国で魔王とテイマーの戦いが起こってから数日後。テイマーと魔王が勝負していた、それも[勇者でも敵わない魔王]に[ただのテイマー]が勝負出来ていた。この事実は予想外の場所へ影響を与えていた。
◇◇◇
「さーて。帰って来たっすよ!ギル、捕まえた冒険者はいつ頃王国に突き出すんですか?」
「奴らが注目する何かが起きた時だな。一応気をつけるが、すぐに気づかれれば即座に揉み消されるだろう。」
「タイミングって難しいんすね。ならしばらくは、復興を手伝いながら配信をするっすよ!」
サリアとギルは数日かけて、ストーレの街へ帰って来る。街の崩れた壁からそっと中に入り、まとめ役のカインを探していた。
「カイン!どこに居る!我らが帰って来てやったぞ!居るなら出て来てくれ!」
「そうっす!早く来てくれないと、あーし達がご飯代に使っちゃうっすよ!」
二人が声を上げると、街の役場から大急ぎで青髪の青年……カインが姿を現した。
「二人とも、帰って来たのか!」
「出たなカイン。早速これを使って……。」
「ちょっと待ってくれ!それどころじゃないんだ!君達二人、配信で大騒ぎになっているぞ!」
「は?何の配信っすか?あーし達は王国に行ってたんです。その間に配信する余裕なんか無いっすよ。」
息を切らせながら話すカイン。何の事か分からない二人は、一度彼に説明を求めた。
「カイン!何の配信だ?我らが上げたブラッドゴーレムの配信の事か?」
「違う!サリアもギルも、魔王と戦ったんだろう!?配信業界は大騒ぎになっているぞ!」
「「えっ?」」
二人が配信を覗き込むと、そこには戦っている自分達の映像が映っていた。
「「はあ!?」」
◇◇◇
ここは魔導パソコンで繋がる掲示板。配信者の動画を見て、感想や質問を書き込める場所である。ここ数日、掲示板では多くの書き込みが発生していた。
「おい!見たかあの配信!?魔王ってあんなに可愛かったのか!?」
「それ俺も見た!可愛すぎるだろ!?」
「だが、詳細が掴めなかった魔王の姿があんな女の子だったとはな……。」
「配信見たわよ!これ凄く貴重な情報じゃない!?色んな人が見てるかもしれないわよ!」
「しかし、戦ってる奴も興味深い。あれは何なんだろ?人型の魔物を従えている奴なんて初めて見たぜ!」
「見ろよあの魔物!?魔王と互角に打ち合っているぞ!?」
「ば、バケモンだろ……あんな魔物を従わせてる奴が居るのか!?」
「でも、もう一人居たわよね?あの子もブレードウルフを連れていたわよ!」
「魔王の部下相手に大立ち回りだったな。とんでもない奴が出てきたぞ!」
「しかし奴らは一体何者なんだ……?」
「おい、情報あったぞ!」
「何!?教えなさいよ!」
「そ、それが……。」
「どうした?」
「いや……ここで言って良いのかな……?あの二人、よーく見てみろよ。見た事ないか?」
「えっ?……そういえばどこかで……。」
「あの女はサリアだ。掃き溜めの街、ストーレに居る冒険者だよ。世間一般ではクズスキルと言われているテイマーだ。もう一人は……勇者パーティー所属のテイマー、ティムに違いない!」
「「「「「「「はあ!?」」」」」」」
「おい!すぐに二人の配信をチェックしろ!何か凄い波が起きるかもしれないぞ!」
「ええ!テイマーって、噂ではクズスキルって言うけど、どんなスキルなのか、正確には知らないのよね。」
「早速見てみるぞ!何かあったら教えてくれ!」
掲示板は大盛り上がり、それぞれがテイマースキルの持ち主、[サリア]と[ティム]について、配信動画を見る事にしたのだった。
「な、何よこの強さ!?魔物と協力して敵と戦うのがテイマーって聞いてたけど、ここまでとは……。」
「おい、こっちには未知の魔物との戦闘があるぞ!後ろに居るのは……ヘルキマイラじゃないか!?」
「な、何でこんな配信が今まで話題にならなかったんだ!?」
「誰も調べなかったのよ……。同じスキルの戦い方は私達も調べるけど、クズと思われているテイマーの戦い方なんて、誰も興味なかったでしょ……。」
「この二人、要注目だぞ。今後に期待だ!」
コメントした人達は二人の動きに仰天しつつ、その後も色々映像を探すため、パソコンに齧りついていた。
今回も読んで頂き、ありがとうございます。続きが気になる、面白かったと思って頂ければ幸いです。もしよろしければ、ブックマーク、評価を入れて頂ければ嬉しく思います。




