少年テイマー、村に帰る/魔王、楽しみが一つ増える
「着いたー!さあ、皆に挨拶しなきゃ!」
「わん!わん!」
「うん、久しぶりだね!皆元気にしてたかなー。」
サリアと分かれてから数日。途中の街へ泊まりながら進み、僕達は遂に村に帰って来た。色々あって疲れたから、しばらくはのんびりと過ごそう!そんな事を考えていると、中から一人の女の子が。……リースさんだ!
「リースさーん!ただいま戻りましたー!」
「えっ、ティムさん!?本当ですか!?」
「わん!わん!」
「レルちゃんも居る!今皆を呼んできますねー!」
リースさんは大慌てで村の中に戻る。僕達も早く入ろう!
「ティムさんお待たせしました!皆、来ましたよー!」
「びー!びー!」
「ただいまびー君!元気にしてたかな?」
「びー!」
次に来たのはハチの魔物、ポイズンビーのびー君!僕の頭の上を飛び回って大喜び、僕も嬉しいなあ!
「おお!帰って来ましたか!おかえりなさい、ティム。」
「マイラさん、ただいま戻りました!」
そして現れた、茶髪の綺麗な人!災厄の魔物、ヘルキマイラのマイラさんだ!
「その様子、用事は済んだのですね。どうです?詳しく聞かせてくれませんか?」
「はい!でもその前にご飯を食べたいです……。リースさん、お願いできますか?」
「もちろんです!ちょうど皆もご飯にする所だったから、用意しますね!」
リースさんはそう言って家の中へ。僕もまずは自分の家に行って、荷物を置いてこよう!
「レルー!お家に着いたから、僕は先に整理をしてくるよ。リースさんから呼ばれたら教えてね!」
「わん!」
僕は持って行った荷物を降ろし、中から短剣や道具を取り出す。今はいらないから、ちゃんとしまっておかないとね。
「あ、兄貴!あそこの家の前にブレードウルフが居ますぜ!」
「何だと!?すぐマイラ姉貴に報告しろ!俺はこっそり見張ってるから!」
「へい!」
「わふー?」
……外が騒がしくなってきた。誰か居るのかな?僕は窓から外を覗くと、そこには男の人が立っていた。
「あ、あのー。どちら様でしょうか?」
「おう!俺はモブロウ!ここの住民だ!アンタは誰だい?」
「はい。僕はティムって言います。レルに何か用ですか?」
僕はレルをこっちに呼んで、もふもふする。……この人はリースさんが呼んだ人なのかな?ちょっと考えていると、細い男の人がマイラさんを連れてこちらに向かって来た。
「姉貴!こっちです!あそこにブレードウルフが!」
「慌て過ぎです。しかし丁度いい、ここで説明しましょう。レルはティムのパートナーなんです。こちらに危害を加える事はありませんよ。」
「パ、パートナー?それじゃあこの子は!」
「はい。ティムはテイマーなんです。」
「「テイマー……。」」
二人の男性はお互いを見た後、急にこちらに駆け出して来た!?
「それじゃあ、貴方がリース姉貴の言ってたティム兄貴ですか!兄貴、俺達も挨拶しましょう!」
「ああ!俺はモブロウ、こっちの細いのはモブスケ。訳あってここで世話になってるんだ。よろしくな、ティム兄貴!」
「よろしく頼みますぜ、ティム兄貴!」
「よ、よろしくお願いします。」
「皆さーん!ご飯出来ましたよー!」
あっ、リースさんだ!ご飯が出来たんだ、早く食べに行こう!
「でもマイラさん、モブロウさん達はどうしてここに来たんですか?」
「ふむ、話すと長く……はなりませんね。食事の時に話します。」
「マイラ姉貴!?俺達には山よりも深い事情が……。」
「さあ、とにかく行きましょう。私もおなかが空きましたよ。」
「おおい!話を聞いてくれよ!」
僕達は笑いながら一緒にリースさんの家へ!どんなご飯が出るのかわくわくしてきた!
「行くよレル!ご飯が僕達を待ってるんだ!」
「わん!」
◇◇◇
「ただいまなのじゃー!」
「お嬢様!あまりはしゃぐとホコリが出てきますよ!」
とある場所にある、一つの粗末な家。ここに住人が帰って来た。魔王ライアとそのメイド、ルーの二人である。
「いやー、楽しかったのう!こんなに楽しんだのは久しぶりじゃよ!」
「ええ!私もついつい盛り上がっちゃいました!」
「お前は少し反省するのじゃ。儂がどれだけ苦労したと思ってるのじゃ!」
「も、申しわけありません……。」
二人は外出用のドレスとメイド服を古いタンスにしまい込み、粗末な洋服に着替え直した。
「しかしあの勇者、まさか戦闘中に駆け落ちのような真似をするとは思わなかったぞ……。あの騎士団長も、大層な事を言っていた割には一度も戦わなかったし。」
「あれでは王国が心配ですね。」
「ま、今はそれより……。これじゃ。」
ライアがタンスの棚から取り出したのは……魔導カメラだった。
「か、カメラ?それを持って……どういう事です?」
「なに、これはただ持っているだけじゃ……ハハッ!」
ライアの言葉でルーは首をかしげる。するとライアは突然笑い出した。
「なんです突然笑い出して……。」
「いや、これからが楽しみと思ってな。」
「これから?」
「うむ、テイマーのあの二人の事じゃ。」
ライアは腕を組み、ルーに説明していた。
「もしかしたら、この戦いの映像を配信した者が居るかもしれん。そうしたら皆驚くのではないか?馬鹿にしてたテイマーが、曲がりなりにも魔王達と戦えていたのじゃ。衝撃を受ける者が居てもおかしくはないじゃろう。」
「た、確かに。」
「もちろん映像だけでは無理じゃろうが……もしかしたらテイマーの見方が変わってくるかもしれん。そうしたら…………今まで馬鹿にしてた連中、どんな顔をするかのう!楽しみじゃ!」
「お嬢様……趣味が悪いですよ……。」
ハハハと笑うライアを見て、ルーはため息をついていた。
「さて、しばらくは大人しくしていようか。どんな風になるか、楽しみじゃな!」
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