二人のテイマー、それぞれの帰路へ
僕達は一緒に家に向かって歩いている。その間、今回の事について、色々話をしながら歩いていた。
「どうだサリア?我の強さを改めて感じたのではないか?」
「ええ。流石はギルっす。魔王相手にちゃんと勝負出来てたんですから。」
「だが……奴は全く本気を出してはいなかった。次が無い事を願おう。正直我も、全身が震えたからな。」
「ギル、それって武者震い?強い相手だと喜ぶから、多分それだよ!」
「いーえ、本当に震えてたっす。手加減してた相手がその迫力を持っているのが驚きっすよ。」
サリアとギルは軽く言っているけど、二人が相手にならないなんて……やっぱり魔王は凄い強さだったんだ。
「わん!わん!」
「そうっす!ティムの方はどうだったんですか?あーし達が行った時は何とも無かったみたいっすけど。」
「うん。それがね、あのルーって人も本気を出してなかったんだ。僕達は勝てるって思ってたけど、最後のあの人の動きで自信が無くなっちゃった。」
「そんなに手強い相手だったか。ティム、我ならいい勝負が出来そうか?」
「ごめん、正直厳しいと思う。多分あの人、ギル以上に戦いが好きだよ。あの場でライアが止めてくれなかったら、僕はバラバラになってたかもしれないんだ……。」
「奴らの強さには、あーし達はまだまだ届かないっすね。」
僕とサリアは不安そうに顔を見るけど、その横ではギルとレルが堂々と歩いていた。
「何、焦る事は無い。我らにはまだ伸びしろがあるという事だ。少しづつ前に進めばいい。そうだろう犬っころ?」
「わん!わん!」
「我らがついているのだ!それがテイマーと言う者だろう?」
「そうっすよね!ギル、ありがとうっす!」
「うん!レル、いつも助けてくれてありがとうね!」
ギルもレルも頼もしいなぁ。二人に負けないように頑張らないと!
「あっ、ギル!捕まえた冒険者達、連れて来てないよね?どうしよう……。」
「ここに来る前にも言ったが、我には考えがある。入り口で門番を口止めしても、必ず上まで連絡が行くだろう。だから[貢ぎ物]という言葉で濁していたのだ。」
「あー……門番にはあーし達を見せて通ったけど、勇者にも内緒ってされた貢ぎ物……騎士団長は冒険者だって思うっすよね。」
「そこで荷車を壊せば証拠隠滅出来たと思うだろう。後は適当なタイミングで送る。そうすれば不意を突けるだろう。」
「なるほど、それなら問題無しかな?」
そして僕達は歩き続け、やがて広い草原に辿り着く。……僕達はここで一旦別れる事になっているんだ。
「よし!それじゃ、あーし達はこのままストーレの街へ帰るっす。カインと一緒に街の復興を目指すっすよ!」
「サリアよ、今思ったのだが、ライアをここに連れてくれば修復してもらえたのではないか?」
「いーえ、あの手の魔法は時間が経ち過ぎてると効果が無いっす。ここまで引っ張っても無理でしょうね。」
「都合良くはいかぬ物だな。」
そしてサリアとギルは、こちらを見てそっと手を出した。
「じゃあ、ティム。ここでお別れっす!」
「サリア、本当にありがとう!ストーレの街と今回の事で、何だか世界が広がった気がするよ!」
「喜んでもらえてこっちも嬉しいっす!ティムは一度村に帰るんですよね?」
「うん。そうしたらしばらくは休憩かな。配信をしながら、のんびりと過ごそうと思うんだ。」
「わん!」
僕達の間に、レルが入ってくる。そしてギルはサリアの隣で、彼女の肩を叩いていた。
「ティム!前も言ったが、何かあったらいつでも頼ってくれていいぞ。お前になら力を貸してやろう!そこの犬っころより役に立つぞ?」
「わん!?わん!がうっ!」
「冗談だ。貴様もきっちりと主を支えてやれ!」
「わふ!わん!」
「サリア、何かあったらまた相談するね。」
「ええ!待ってるっすよ!」
「我も居るぞ!」
「わん!わん!」
そして僕達はハイタッチをして、それぞれの帰路に着いた。僕はレルの背中に乗って村に向かう。
「早く皆に会いたいなー。レルもそうだよね!」
「わふー!わん!」
今は皆が居るんだ!僕とレルは皆の顔を思い浮かべながら、草原を駆け抜けていった。
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