戦い終わって……少年テイマー、怒りをぶちまける
突如現れた魔王ライア。彼女は僕の頭に手を当てて魔力を込めている。凄い、触られてると痛みが抜けていく……。これが魔王……。
「うむ、これで良し!どうかの?痛くないかの?」
「う、うん。あっ、レル!レルの所へ行かなきゃ!」
「あのブレードウルフの事じゃな。どこに居るのじゃ?」
「ルーに蹴っ飛ばされて、あっちに行っちゃったんだ!」
「ああ…………。」
僕が建物の穴を指さすと、ライアは頭を抱えていた。その後、ルーに向かって大声で怒りだした。
「こ、この馬鹿者!どれだけ儂を困らせるのじゃ!?」
「ひぇっ!ご、ごめんなさいー!」
「ええい!派手にやりおって!……ちょっと待つのじゃ、すぐに迎えに行ってくるからな!」
ライアはすぐに空に浮き、レルの飛ばされた方向へ飛んでいったんだ。
◇◇◇
「わ、わふー……。」
「そこにおったか!いや、痛かったじゃろう?本当にすまん……。」
「わ、わん!わん!」
「おおっ!?お主噛みつくのは駄目なのじゃ!後できつーく言い聞かせるから、勘弁してくれ!」
「がうっ!わん!わん!」
「痛たた!もう戦いは終わったのじゃー!許してくれー!」
◇◇◇
ちょっとすると、ライアはレルを抱えて僕達の所へ戻って来た。
「あっ、レル!」
「わん!わん!」
「怒るのは分かるが酷い目に遭ったわ……。傷は治したから、とりあえず安心じゃろう。後は……。」
「な、何よ!?」
「お主達も治しておかねばな。」
ライアはマーチとケビンの元へ向かい、手をかざす。傷が消えていくのを確認しながら、二人に語りかけていた。
「お主達、腕は悪くなかったのう。マーチとやら、儂らを相手に即座に魔法を放つとは大した胆力じゃな。」
「えっ?」
「ケビンとやら、お主の拳も鍛えればもっと強くなると思うぞ?その性格さえ直せればな。」
「な、何を言って」
ライアは二人にそっと話しかけた。
「勇者の奴はさっさと逃げ出したぞ?騎士団長と二人で。まるで駆け落ちじゃな。」
「「なっ!?」」
「奴は知らんが、お主達ならまだ間に合うじゃろ。その性格を直して、初めからやり直す事じゃ。」
「そ、それじゃ勇者パーティーの栄光は……?」
「そんな物無くてもやっていけるじゃろう。それにさっき話してたのは……そういう事じゃないかの?」
「そ、それは……。」
ライアは二人を見ると、二人は下を向いていた。何を話してるんだろう。
「どうするかは二人で決めると良い。じゃが、どうするにしても、最初にやる事は目の前にある。今なら分かるじゃろうな。」
「……ええ。」
「……俺もだな。」
「ならやっておくべきじゃ!たとえ駄目でも決着はつけておかねば後悔するぞ!」
ライアが二人に話し終わりこちらに戻って来る。するとマーチとケビンも同じようにこちらに立って、向かって来た。
「あ、あのね、ティム。」
「待ってくれマーチ。俺にも言わせてくれ。」
「……二人とも?」
「そ、その……。」
マーチとケビン、二人は僕に向かって頭を下げていた。
「ご、ごめんなさい!」
「すまなかった!」
「えっ?」
僕は突然の出来事に困惑していた。でも、困惑した後に……あんなに酷い事を言って追放したのに、何を今さらって思っちゃったんだ。
「私達、ティムの戦いを見て感じたの。貴方の言ってた事は、嘘じゃ無かったって。本当に貴方が私達を支えてくれてたんだって。」
「俺も同じだ。なのに俺達はお前に酷い事を……。」
「……知らないよ。」
「えっ。」
何だろう。急に、急に凄く腹が立ってきたんだ。
「知らないよそんな事!パーティーに居た時も、困って相談しても何も言葉を返してくれない!レルの事だって完全に無視してた!さっきの会話だって聞こえてたんだ!二人もシャーユと一緒に馬鹿にしてたじゃないか!僕は都合のいいサンドバッグじゃないよ!」
僕は大声で二人に怒鳴っていた。やっぱり僕は、二人の事を……。
「わ、分かってるわ。私達が自分勝手なのは。だけど、どうしてもここで謝らないといけないって思ったのよ……。」
「本当にすまなかった……。」
「そ、そんな事言ったって……。」
僕が言葉に詰まっていると、マーチはまた口を開いた。
「私達……勇者パーティーを抜けようと思うの。」
「えっ……?」
「お前を見て、それとそこの魔王と戦って気づいたんだ。……今の俺達では、魔王どころか普通の敵にも通用しなくなるだろう。勇者パーティーだからと、その栄光にしがみつくだけだったんだ。」
「だから、私達は二人でやり直そうと思うのよ。もちろん、今まで勇者の特権を使って色々してきたから、その償いはきちんとする。そうしたら」
「そんなの、そんなの知らない!僕が戦ってる中、そんな事考えてたの!?それなら一緒に戦ってよ!僕は必死だったのに、そんなの酷いよ!」
僕は頭の中がごちゃごちゃになっていた。思いついた言葉が勝手に飛び出して、二人を責めていたんだ。
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