少年テイマー、村へ招待される
僕達が案内されたのは、村長さんの家。そこに行くまで少し歩いたけど、周りの建物には誰もいなかった。
「ここです!ここが私の家なんです!」
「おおー!」
出て来たのは立派な造りの建物。2階建ての大きな住居だ。その中に入り、僕は男性に促され、一緒に椅子に向かう。
「今お料理作りますから、しばらく待っていて下さいね!」
「は、はい!」
女の子はキッチンへ向かう。そして椅子に座った僕に、男性が話しかけてきた。
「君!すごかったぞ!大量のウルフをやっつけたんだからな!」
「ありがとうございます。喜んでもらえて嬉しいです!」
「しかし、やはり噂は信用できないな。自分の目で確かめないと。」
「噂?」
男性は少し頭を伏せ、話を続けた。
「ああ、テイマーはゴミスキル・ハズレスキルだって、今や世界の共通認識なんだ。勇者パーティーや王がそう触れ回ってるらしい。」
「そ、そんな!?」
「さっきは悪かったな。ハズレスキルなんて言ってしまって。でも俺とあの子は目が覚めた!君が助けてくれたから、奴らの言ってる事は嘘だって分かったんだ!」
「そ、そうですか……。」
そして話が終わると、女の子が料理を持ってやって来た。
「お待たせしました!こんな物しか無いですが、どんどん食べて下さい!」
「わん!わん!」
レルの前には野菜のサラダが、僕達にはパンとスープが置かれた。すごくいい匂いがするし、お腹もすいてきた。
「頂きます!」
僕はスープを一口すする。……おいしい!とろけた野菜と出汁がいい感じだ!こんなおいしい料理、もうずっと食べて無かったな……。
「そうだ!自己紹介しないとな!俺はラルフ、依頼を受けてあの子を護衛していた冒険者だ。帰りまでが依頼だから、それをやってる最中に襲われたんだ。」
「僕はティム。テイマーをやっています。この子はレル。魔物だけど大切な仲間なんです!」
「はふはふ。はふはふ。」
レルはサラダをもぐもぐ食べている。その様子を眺めていると、女の子がこちらに戻って来た。
「それではラルフさん。こちらが今回の報酬になります。」
「ありがとうな!こうやって依頼をもらえるからいつも助かるよ。俺の配信、なかなか上手く行かなくてな……。」
「配信?」
「ああ。俺は冒険者なんだ。定期的に配信もしてるんだけど、全然見てもらえなくてね。……そうだ!」
ラルフさんは手をぽんと叩き、僕の前に来た。じっと見られると、何だか緊張しちゃうよ……。
「ティムちゃん!その……テイマーって、俺でもなれるのかな?」
「えっ?テイマー、ですか?」
「ああ!俺は今回の事で、テイマーは他のスキルと同じように戦えることが分かったんだ!それに、魔物って悪い奴ばかりだと思ってたけど、レルちゃんみたいな子もいるんだなって。」
「……。」
「だからさ。ちょっとでいい、コツみたいなのは無いかな?俺もテイマーの凄さを皆に教えてやりたいんだ!そうすれば、テイマーへの偏見も無くなるはずだ!」
僕はラルフさんの申し出を聞いて、少し嬉しい気持ちになった。テイマーは魔物と力を合わせて戦うスキル、それを知りたいって言ってくれる人は初めてだった。
「本当ですか!?」
「ああ!……まあ、ちょっと下心もあるんだけどね。俺の配信、伸びてないって言ったよね。だから、今度はテイマーとして頑張って、皆に見て欲しいんだ。」
そっか……そういう考えもあるよね。でも、テイマーの事を知ってもらえる良い機会かも知れない!それなら……
「分かりました!でも、テイマーとして強くなるのには時間がかかります。それに独学ですが、それでも大丈夫ですか?」
「もちろんだ!俺、テイマーの事をもっと知りたい!俺もテイマーになってみたいんだ!」
「分かりました!それでは、明日一緒にやりましょう!よろしくお願いします!」
「よろしくな!ティムちゃん!」
そういえば、さっきから[ちゃん]ってつけられてるけど……。
「あの、すいません。僕は男なんです。」
「お……男!?」
びっくりした様子のラルフさんは、後ろにひっくり返ってしまった。
「あ、あのー。」
「は、はい!」
「その……テイマーのお勉強会、私も受けていいでしょうか?ちょっと興味がありまして……。」
女の子が少し申し訳無さそうに質問をしてきた。でも、僕はすごく嬉しい気持ちになった。それなら、一緒にやりたい!テイマーのすごさを知って欲しい!
「もちろんです!よろしくお願いします!」
「は、はい!私の名前はリースと言います。こちらこそ、よろしくお願いします!」
こうして、ラルフさんとリースさんの二人と一緒に、テイマーについて知ってもらえる事になった。よし、明日は頑張るぞー!
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