少女テイマー、魔王と勝負する!
「うむ、パートナーが来たのなら、ここから本当の力を見れると言うわけじゃな!楽しみじゃのう!」
「それなら、少し待っててもらえるかしら?本気を出すのに時間がかかるのよ。」
「よいぞよいぞ!それを見たいのじゃ、幾らでも待ってやるわ!」
ライアはどこから持って来たのか、その場に椅子をトンと置いてそこに座る。ちょっと腹が立つけど、ここは利用させてもらうわ。
「ギル、手を!」
「ああ!見せてやろう、我らの力を!」
ギルと私は手を繋ぎ、お互いに魔力を重ね合わせる。やっぱり体中が痛い……でも、そんなの全く問題無いわ。
「さあ……行くわよ!」
「ウム!」
よし、魔力の準備完了だ。私達は一気に魔力を解き放つ!
「「魔装展開!」」
「うわっ!?何か始まった!?」
重なった魔力によって、私達の体に変化が起きる。私は全身が黒く染まり、大鎌をその手に持つ。ギルは体のパーツが鎌に変化してゆく。
「さあ、これがお望みの魔装。テイマーの本気よ!」
「おお……おお!!」
魔装の展開完了。ここから反撃よ!
「[魔技]ソウルサイス!」
私の周りに四つの刃が現れる。でもさっきとは違うわ。大きさも強さも、ずっと上よ!
「さっきの技じゃな?しかし、随分大きいのう!」
「そんな余裕でいられるのも、今のうちよ!」
私は刃を操作しながら、鎌を奴に向けて走る。
「あっ、ちょっ、よいしょ!」
襲い掛かる刃に対して、ライアは余裕そうに回避している。そこに私が鎌で斬りつけるが、彼女はそれを指で押さえた。
「いい魔力じゃ。じゃが、儂に届くかは別問題じゃのう?」
「ならばこれならどうだ!?」
「おうっ!?」
ライアの後ろからギルが斬撃を放つ。腕と足から一つずつ、二つの斬撃が彼女に迫ると、彼女は驚いていた。
「ま、待つのじゃ!?お主、パートナーごと斬るつもりか!?」
「違うな、狙いは貴様だけだ!今の状態では逃げられんだろう!」
「いや、逃げられぬ事は無いが。ちょっと心配しちゃったのう。」
ライアは空いた片手から衝撃波を出し、ギルの斬撃を打ち消す。そしてその手を私に向け、同じ様に衝撃波を放った。
「うわっ!?」
「どうじゃ!儂のパワーは凄いじゃろう?では……。」
彼女は吹き飛ばされている最中の私に追いつき、肘を打ち付けた。
「っ!?」
「ここからはちょっと本気じゃ!」
地面にバウンドした私を掴み、ギルの方へ放り投げる。
「嘘でしょ!?どんなパワーよ!?」
「魔王だからと言って魔法中心というわけでは無いぞ?むしろこっちの方が好きなのじゃ!」
投げられた私に追いつき、尚も打撃を加える。私は一度鎌を降ろし、奴の打撃を捌く事にした。
「ほう、格闘戦も出来るのか!その魔装とやら、便利な物じゃのう!」
「くっ、強化してるのに全く対抗出来ない!?」
魔装のパワーアップで攻撃の来る場所は分かる、体も追いついてる。でも負けている。攻撃の強さが異常過ぎるのよ!ただのパンチが、私にとっては魔力を使って防御する物なんて!?
「サリア、我が入るぞ!」
「お願いギル、力を貸して!」
私が飛ばされたタイミングで、今度はギルがライアと打ち合いを始める。
「強いな。だが、我なら何とか戦える!」
「す、凄いパワーじゃ!流石、魔物の中でも上位の種族、ギルティスじゃのう!」
「フン、我はその枠を超えているのだ!簡単にやられはせんぞ!」
押され気味だけど、ギルはまともに打ち合えている。今のうちに、私は全身に魔力を集め、鎌を握りしめた。
奴は強い。だから常に余裕を崩さないのよ。ならその油断を利用しない手は無いわ!
「ハァァァァ……!」
送り込んだ魔力を纏い、鎌がどんどん大きくなる。これを直接ぶつけられれば、魔王だって倒せるはず!
「これで用意は出来た。後はギルの合図次第ね!」
「そこだァァァ!」
「ぬおっ!?」
ギルの鎌がライアの腕を捉えた。それでもカチンと弾くだけ。どれだけ頑丈なのよ!?
「お返しじゃ!」
「ぐぁっ!」
逆にライアのパンチはギルの腹部にぶつかり、ギルは大きく仰け反る。何とか立っているけど、そろそろ限界よ!
「ふむ……思った以上にやるものじゃ!だが……お主達も疲れてきたじゃろ?そろそろ終わりにしようかの!」
「何だと?」
「そうじゃな。次に儂はものすごーく強い技を使う事にしよう!それを凌げたら……お主達の勝ちじゃ!」
ライアはそう言って、空高く浮かぶと魔力を集めだした。
「さあ、今回はこれで行こうかの!」
彼女の手には巨大な剣が現れた。あれが切り札なのね……。
「サリア!準備は出来たか!?」
「ええ!」
私も魔力を送り込んだ鎌を持ち、奴の方を見る。一撃を耐えれば勝ちなら、私達にも勝機はある!
「さあ!刮目せよ!これが儂の一撃じゃ!」
剣が赤く光り、炎を纏う。すると彼女は一気にこちらに突進してきた!
「行くのじゃ!レーヴァテイン!」
「サリア、我らも行くぞ!」
「ええ!」
「見せてみろ、お主達の本気を!」
目の前に迫ったライア、そこに空中へ飛んだギルが攻撃を仕掛ける。
「これが我の魔技だ![魔技]ウェポンブレイク!」
腕を巨大な鎌に変形させ、ライアではなく彼女の武器に叩きつける。すると剣に纏っていた炎が小さくなり、輝きも鈍くなった。
「なぬっ!?お主そのナリで補助タイプか!?完全に読み間違えたか!?」
「まだだ![魔技]シャドウサイス!」
続いて黒い鎌を飛ばして、奴の影を打ち付ける。すると一瞬、だけど完全に動きが止まり、ライアは隙だらけになった!
「う、動かぬ!儂を止めるじゃと!?ありえないぞ!?」
「今だサリア!」
剣を構えたまま動かないライアに、私は思いっ切り鎌を振り下ろす!
「ここで仕留める![魔技]デスサイス!」
「う、うおおおおお!?」
私の大鎌から黒い斬撃が放たれ、奴の持つ剣をバラバラに破壊する。そして私は本体を奴の首元へ!
「とどけぇぇぇぇ!」
「ふむ。見事見事!あっぱれじゃ!」
ライアは指をパチンと鳴らす。すると、奴の周りに衝撃波が巻き起こり、私達は空中に吹き飛ばされた。
「くっ!?」
「っ!ギル!?」
「今のは効いたな……そっちは大丈夫か!?」
「な、何とかね……。」
地面に墜落するギルと私。私は体を動かそうとするけど、動けない。
「冗談でしょ……アンタ、ずっと手を抜いてたのね……。」
「そんな事無いぞ?最後の一瞬だけはきちんと本気を出したのじゃ!まさか儂を狙わず武器を封じて来るとは予想外過ぎたからのう。……大人気なかったかな?」
「でも、勝負は勝負。これは私達の負けね……。」
「そうでもないぞ?ここを見てみよ!」
私はライアの指さした所を見る。彼女の左腕には、確かに切り傷が出来ていた。
「再生する事も出来たが、それではフェアじゃないからの?さっきの大鎌、よかったぞ!危うく首を持ってかれる所だったわ!」
「……はあ。それなら……。」
ライアはニコッと笑い、宣言した。
「うむ!この勝負、お主達の勝ちじゃ!おめでとう!お祝いに入刀するかの?」
「い、いいわよ……どうせ動けないし。」
「では、約束通り儂は引き上げるかの。テイマーの力も見せてもらったし。お主達と会えて楽しかったぞ!」
ライアはこの場を去ろうと歩き出すが、その直後。彼女は冷や汗をかいていた。
「……そう言えばティム先生は?お主どこへ投げたのじゃ?」
「えっ、アンタのメイドの所よ?ティムなら絶対に勝てるはずだわ!」
「……ルーの所へか?」
「ええ。でも……ティムは私よりも強い。きっと勝てる!」
「まずいのう……。」
「……まずい?どういう意味よ?」
ライアからは先程の余裕が消え、少し焦っているようだった。
「いや、その……ルーは儂と同じくらい強いのじゃ。それで……。」
「そ、それで?」
「久しぶりの強敵にあったら、やり過ぎてしまうかもしれんのじゃよ。」
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