二人のテイマー、二人のパートナー
「さぁ、こちらも勝負と行こうかのう!」
「かかって来るっす!タダではやられないっすよ!」
拳を突き出し、格闘戦に持ち込んで来たのは魔王ライア。あーしは一発目のパンチを避け、蹴りをぶつける。
「効かぬのう、そんな攻撃!」
「そりゃそうっすよ、レベルが違うんですから!」
「ん!?」
蹴りのガードで片腕を使わせた、次は腰から小さいナイフを取り出し、体の中心へ投げる!
「さあどう避けるっすか!」
「避ける?甘いのう!」
投げたナイフは狙い通りに腹部に当たる。でも、それはカチンと音がした後地面に落ちてしまった。
「どうじゃ、魔王たるもの急所の防御はきちんとしておるぞ!」
「なら……これでどうっすか!」
もちろんそれは予想してたっす!攻撃を気にせず突っ込んで来た所で、あーしは奴のドレスをナイフで地面に縫いつけたっす。
「にょっ!?」
「戦いの場に似合わないドレスっすね、動きづらいでしょう!?」
ぐらっと態勢が崩れたライアに足払いをし、すぐにあーしは鎌を取りに走る。
「取ったっす!これで戦えるっすよ!」
鎌を握り、あーしは高速でライアの背後へ。ここで仕留める!
「お覚悟っす!」
「しまっ……。」
そして首に鎌を振り下ろす。その勢いでライアの体は吹き飛び、地面にゴロンと転がった。
「やった……やったっす!あーしが魔王を倒したっすよ!」
「それはめでたいのう。お祝いせねばなるまいな!」
「……へっ?」
気づけばあーしの体は空中に浮いていたっす。
「それでお祝いは……ケーキなんてどうじゃ?それなら入刀の作業も必要じゃろう?」
奴はあーしの遥か上で、巨大な魔力の球をこちらに向けていた。……ちょっと待つっす。大きすぎないっすか!?
「どーんとプレゼントなのじゃー!」
巨大な魔力球が、こちらに放たれる!あの魔力、このままじゃあーしどころか街が消し飛ぶっすよ!?
「……チッ!」
駄目だ。ティムには落ち着こうって言ってたけど、こんな状況で落ち着ける程、私は強くない!
「魔装無しでは使いたく無いけど、そんな事言ってられない!」
私は鎌に魔力を込め、体の前に突き出す。そして目を閉じて、技の名前を詠唱する。
「[魔技]ソウルサイス!」
鎌が黒く輝き、四つの刃が現れる。でも、魔装抜きだとサイズが小さいわね。
「行きなさい!」
それでもやるしか無い!私は刃を動かし、魔力の球を削り取っていく。小さい分小回りは効くわね、片っ端から切り刻んでやるわ!
「ほう!繊細な魔力の動き、そして斬る威力!見事な物じゃ!」
「そりゃどうも!」
夢中で切り進め、魔力の球もだいぶ小さくなった。これなら……。
「ぶった斬れェェェ!」
私は魔力を鎌に込め直し、一気に振り下ろす。そこから現れた斬撃が、遂に球を消失させた!
「やっ……た……?」
「さっき言ったじゃろ?入刀が必要だと。」
空中に居るライア、その手には……ティムのブレードなんか到底及ばない、大剣の姿があった。
「そーれ!入刀じゃーーー!」
「っ!」
もう避けられない。魔力を使った上、空中じゃ上手く動けない!
「こんな所で死ぬ訳にはいかないのよ!奴らを見返してやるまでは……!」
私は鎌を握る。ここで振れば、多少は狙いも逸れるかもしれない。
「これで終わりじゃ!」
「舐めるなァァァ!」
「なぬっ!?」
私の前に居たのは……パートナーのギル。大鎌に変形させた腕で、大剣を弾いていた。
「お、お主は……!」
「我のパートナーに、手は出させん!」
ギルは空中に高速移動。ライアはすぐに別の剣を取り出し、お互いに斬りつけ合っている。
「これ程の腕前、お主は配信の!」
「我はギルだ、覚えておけ魔王!」
鍔迫り合いに持ち込み、お互いの得物が火花を散らす。そして一瞬の隙を突いて、ギルが斬撃を押し込んだ!
「くっ!」
「吹き飛べ!」
ライアは地面に叩きつけられ、そこから土煙が上がる。ギルは私を抱え、民家の屋根に着地した。
「サリア!無事だったか!?」
「ええ、まあなんとかね。」
「そうか……先に行かせてしまって、悪かったな。」
「大丈夫なの?相手は魔王よ?さっき怖いって言ってたじゃない。」
「そうだ。確かに怖いさ、だがな。」
ギルは私を地面に降ろして、肩にポンと手を乗せた。
「気づいたのだ。パートナーが居なくなる方が余程怖いとな。」
「ギル……ありがとう。……それなら、やっぱり負けられないわね!」
「さあ、勝負はここからだ!我らの力、奴らに見せつけてやろう!」
「ええ!やってやるわ!」
そうだ、私にはギルが居る!二人で奴をぶっ倒してやるんだ!
◇◇◇
「そこですっ!」
「しまった!?」
ルーが二刀流に切り替えてから、僕は防戦一方だった。スピードもパワーも、今の僕じゃ歯が立たない!
「えいやっ!」
「あっ!」
僕の手元に剣が当たり、ブレードを落としてしまう。拾おうとすると、その足元に深々と骨の剣が突き刺さる。
「うーん……動きは良いんですけど、何か物足りないなぁ。」
「物足りない!?僕は全力だよ!?」
「……そうか!ティム先生!パートナーの子はどうしたんです?レルちゃんでしたよね?」
「レル!?レルに何をする気なんだ!?」
僕が焦って叫ぶと、ルーは嫌らしい顔をしながらこっちを見下していた。
「いえ、テイマーはパートナーと力を合わせて戦うんですよね。でも……来ないじゃないですか?主人を置いて逃げ出しちゃうなんて、ね?」
「レルを馬鹿にするなぁぁぁ!」
僕は飛び掛かったけど簡単に避けられ、地面に倒れ込む。ルーはそれを見てニヤニヤと笑っていた。
「それなら助けを呼んでみればいいでしょう?あっ、相手は魔王様なんです、もう居ませんよね?」
「うう……。」
無理だ……僕一人じゃこの人は倒せない!レル、魔王なんて怖いよね、でも、僕も怖いよ……助けて……!
「レルー!お願い、来てーーー!」
「では、ここで終わりにしましょう!お疲れ様でした!」
倒れた僕の上から、骨の剣が迫る。
「グガァァァ!」
「キャッ!?」
ガキンという音がして、ルーが遠くにジャンプする。倒れた僕の前には……ブレードを咥えたレルが立っていた。
「わん!わん!」
「レル!?来てくれたの!?」
「わん!わふー!」
「ごめんね……怖かったよね……。」
僕の呼び掛けに、レルは横に首を振った。
「レル?」
「わふ!わん!わん!」
レルは僕のブレードを持って来てくれた。そして顔をぺろぺろと舐める。
「わふー!」
「……うん!僕、頑張るよ!だからレルも力を貸して!」
「わん!」
そうだ、僕達なら出来る!あんな人に負けるもんか!
◇◇◇
「私達の力を見せてやるわ!」
「僕達の連携で、お前を倒してやる!」
「「反撃開始だ!」」
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