少年テイマー、魔王のメイドと勝負する
「お主達はどうするかの?」
ニヤリと笑うライアに、僕達は足を動かせなかった。おそらく逃げても追いつかれる。でも、ここで戦えば街が巻き込まれる。
「どうしよう……このままじゃ街が大変な事になる!」
「こうなったら多少の被害は覚悟して、ここでやるしか無いっすよね。」
サリアは苦笑いしながら、僕の方を見た。
「サリア!?」
「あーしは逃げ切れる自信は無いっす。一か八か、ここでやっつける方法を探すんですよ!」
「ち、ちょっと待つのじゃ、儂そんな事しないのじゃ!」
僕達が二人で話していると、ライアがその話に割り込んできた。
「あー、そんな顔をしないで欲しいのう。別にここの者達に手を出すつもりはないぞ?儂らの目的はお主達なのじゃからな!」
「そ、そうなの!?」
「はい!私達、貴方達の活躍を配信で拝見しまして。珍しい戦い方をしてましたから、一度手合わせをお願いしたいとライア様が思ったのですよ。」
「……ふーん。」
「いや……しかし……。」
「どうしたのですお嬢様?」
「うむ。ちょっと耳を貸してくれ。」
ライアとルーは、何か二人で話している。僕達はその間、魔力を体に集めて動く準備をしていた。
(サリア、一応魔力を溜めておくよ?)
(ええ。何か不安っすからね。)
「どうじゃ?これなら奴らも全力を出せるじゃろ!儂らでアシストしてあげるのじゃ!」
「なるほど!それでいきましょう!」
「そうじゃろ?これは名案じゃよ!」
話が終わったみたい。そして二人はこちらを向くと……さっきまでとは違う顔で僕達を見下していた。
「あー。さ、さっきのは無しじゃ。気が変わった。あんな勇者がいる王国じゃ、儂らにも他所の国にもいずれ被害が出るじゃろう。今ここで潰しておくかの?」
「なっ!?」
「そ、そうですね!私達にとっては、ここが無くなっても何の問題もありません。どんどんやっちゃいましょう!」
や、やっぱり魔王だ……!すごい威圧感……足がガクガクと震えてる……。
「じゃが、お主達にもチャンスをやろう。もし……そう、万が一にも儂らに傷をつけられたら、その時は大人しく帰るとしよう。どうじゃ?」
「……いいっすよ。どうせ逃げられないんだから、ここで戦ってその首を貰うっす!魔王をぶっ倒して、あーしを捨てた奴らをギャフンと言わせてやるっすよ!」
「……そうだよね。僕もやる!全力でお前達を止めてやるぞ!」
足の震えはあるけど、僕達はライア達の方へ一歩踏み出す。大丈夫……僕達なら出来る!
「いい顔じゃ!ならば……早速始めるとしようか!」
ライアは両手を前に突き出し、魔力を込め始める。僕達はその場で構え、彼女の攻撃に備えている。
「ティム、落ち着いて行くっす。それと忠告を。おそらく、ティムはさっき幻覚を見たっすよね?あーしも見たっす、細部は違うかもしれないっすけどね。」
「えっ!?」
「おそらくあの付き人の魔力のせいっす。頭が勝手に判断して、あーし達が恐れる場面を作らされたんだと思うっすよ。だから、何があっても落ち着いて、平常心を保つっす。でないと奴に殺される前に、自分の恐怖に殺されるっす……。」
「わ、分かったよ!」
「お喋りは終わったかの?では……ゆくぞ!」
ライアは話し終わった途端、その場から消えた。ど、どこから来るんだ!?
「まずは上からじゃ!どうする!」
「こうするっすよ!」
声の方向を向くと、ライアは空中から手を伸ばし、こちらに突進してきた。そこでサリアは全身に溜めた魔力を放出しつつ、僕を直線、ルーの居る方向へ投げる!
「お主と真っ向勝負か!いいぞいいぞ、かかってこい!」
「言われなくても!」
ライアはサリアを標的にして、猛スピードで突進する。一方僕は手元へ短剣を取り出し、待機しているルーに投げつける。
「その短剣でどうすると言うのですか?」
「こうするんです!」
僕は一旦ルーを無視して地面に着地、ブレードを取りに走った!あの短剣は足止め用なんだよ!
「あ、あれ、こっちに来ないの?ただ投げただけ!?」
攻撃を予測し身構えた彼女は、短剣を弾きつつ呆気に取られていた。その隙に僕は自分のブレードを掴み、構える!
「行くぞ!僕が相手だ!」
「なるほど!準備していたのですね!」
ルーは笑いながら、背中から長剣を取り出す。
「では始めましょうか!」
彼女が出したのは、……骨の剣?小さい骨が何個も繋がっている、奇妙な物だ。
「そこっ!」
「うわっ!?」
骨の剣が伸びて、僕の頬を掠める。その勢いで僕は尻もちをついてしまった。
「もう一回!」
「危ない!?」
次は頭を狙った突きが飛んできた。僕はそれをブレードでガードした後、すかさず短剣を投げつける。
「また短剣ですか!?わ、分かってますよ、それもただの威嚇なんですよね!?」
短剣には目もくれずこちらに剣を突き立てるルー。……違うよ。今度はそっちが本命なんだ!
ドガァァァァァン!
「ふぇっ!?」
「今だ!」
至近距離で爆発し、放たれた閃光で目を閉じるルー。そこに僕はダッシュして一気に近づく!そして全力でブレードを振り、彼女の首に攻撃する。
ガキン。
「えっ!?」
「痛い!何するんですか、もう!」
僕の攻撃は首に当たった。でも……ブレードが彼女に通ることは無く、本当に当たっただけだったんだ。
「今のは駄目ですよ!あんな重いブレードをぶつけるなんてあんまりじゃないですか!?」
「な、何で……。」
「何で!?いや、普通ブレードが当たれば痛いですからね!?」
首をさすりながら、彼女はこちらに怒っている。
「でも……お嬢様の言う通り、中々の強さですね。これなら私もちょこっと、本気を出せそうです!」
そう言って彼女は体から骨の剣をもう一本取り、両手に装備した。
「では、参ります!」
ルーはその言葉と共に、こちらに飛び掛かってきた!
「さあ、どんどん行きますよ!楽しませて下さいね!」
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