少年テイマー、勇者と再会する
「急ぐぞお前達!今ティムが街役場に来てるらしいじゃないか!」
「本当!?それなら早く私達のパーティーに誘わないと!」
「ああ。そして前と同じように、皆でクエストを達成するんだ!」
シャーユ、マーチ、ケビン。勇者パーティーの面々は騎士団長ジャンヌからの連絡を受け、大至急街役場に向かっていた。
「しっかし楽しみだな!またあいつと一緒に冒険出来るんだから!」
「そうよ!ティムにも感謝して貰わないとね!」
「しかし、あいつがあそこまで強い奴だとは思わなかったな。知っていれば追い出す事も無かったのだが。」
「ま、いいじゃないか!とにかく行こうぜ、俺達の栄光の為に!」
三人は意気揚々と進み、元パーティーメンバーを取り戻すべく行動していた。
◇◇◇
「サリア遅いなー。どこまで行っちゃったんだろう?」
僕は一人で街役場に居た。レルは外でお留守番、サリアとギルは魔石の換金に外に出てるんだ。
「やっぱり一人だと緊張する。でも、大丈夫大丈夫!僕なら平気だ!」
僕は自分を励ますように言葉を口にしたけど……緊張は止まらない。
「そうだ!気分転換に一度外に出てみよう!そうすれば少しは落ち着けるはず!」
僕は一度役場を出て、外の空気を吸うことにした。早速席を立ち、役場の入り口に向かう。
「よーし、早速やるぞー!」
僕は大きく手を広げて深呼吸をする。何だか気持ちいいなー。もっと繰り返して緊張をほぐそう!
「見つけたぞ、ティム!やっぱりここに居たのか!?」
「えっ……その声は!?」
深呼吸の途中、僕は知っている声を聞き、そこに顔を向ける。すると見えたのは……かつての仲間、勇者パーティーのメンバーだった。
「ティム、探したぞ!ようやく会う事が出来た!」
「シャーユ……。」
馴れ馴れしく話しかけてくるシャーユ。うん……確かに同じパーティーで行動してたから、これは分かる。でも……。
「聞いてくれティム!俺達はずっとお前を探してたんだ!」
「えっ!?ど、どうして?」
「それはね……あんな酷い追い出し方をしてしまったけど、貴方が居なくなって分かったのよ。貴方の重要さが。」
「マーチ……。」
シャーユの横から出てきたのは、マーチとケビン。二人とも元パーティーメンバーだ。
「どうだティム、俺達の所に戻って来ないか?またやり直そう。俺達ならきっと出来るさ。」
「ケビン……。でも皆、僕を追い出す時に言ってたよ……?魔物と一緒にいる奴なんて必要無いって……。」
「あれは俺達がお前の事を見てなかったんだ。お前が居なくなって良く分かったよ。お前は頑張ってたんだなって。」
「シャーユ……。」
正直予想外だった。僕が問い詰める前に、色々酷い事を言われると思ってたんだ。でも……僕の思い過ごしだったのかな?
「それでは、改めて聞こう。どうだ?ティム、戻って来ないか?」
「それは……。」
頭の中がもやもやしてる。とりあえず一度ここを離れて、落ち着こう。そうしたら僕の方から質問しないと!
「ご、ごめん。ちょっと……水飲んできていい?」
「ああ。急な話で悪かったな。混乱してるだろ、ゆっくり休んでこいよ。」
「うん。」
僕は一度この場を離れる事にした。何だか情けないなぁ。ストーレの街の事を問いただすつもりだったのに、空気にのまれちゃったよ……。
それから数分。僕は水を飲んで、喉の乾きと頭のもやもやを落ち着かせた。よし、早速ストーレの街での出来事を聞こう。そうしたら……。
僕はゆっくりと外に向かって歩く。すると外から何か、話し声が聞こえてきた。
「この声はシャーユ達?何を話してるんだろう。」
僕は壁に耳をつけ、話を聞く事にしたんだ。
「いやー!見たか?アイツの顔を!何だか嬉しそうだったよな!」
「ほんっと単純よね!ちょっとおだてた位であんな顔をするんだから!」
「しかし、あれなら俺達のパーティーに戻って来るんじゃないか?」
「そうだな。そうしたらまたこき使ってやろう!きっと喜ぶぞ!」
「いいサンドバッグになるわ!今から楽しみ!」
「あまり物騒な事を言うなよ。奴にはここに居てもらうために、上手く持ち上げないとならないんだからな。」
「な……何それ……。」
僕は壁の内側からシャーユ達の話を聞いていた。すると……聞こえてきたのは僕に関する話題だった。
「そういえば、シャーユ達はレルの事について一言も触れて無かった。やっぱり、本当は僕達の事をただの駒として見てるって事なんだ……。」
さっきまでのもやもやは一気に吹き飛び、僕は再びシャーユ達の所へ。すると三人は取り繕ったような笑顔を浮かべて、僕に話しかけて来た。
「ティム、お帰り!それでどうだ?もう一度一緒に」
「シャーユ。その前に聞きたい事があるんだ。」
「な、何だ?」
僕はシャーユの顔を見て強い口調で言った。他の二人も僕の変化に気づいて、急に静かになる。
「シャーユ……僕の友達から聞いたんだけど、ブラッドゴーレムの襲撃してきたストーレの街。あそこにシャーユは居たよね?」
「な、何を突然!?」
「あそこまでブラッドゴーレムを連れて来て、街を壊そうとしてたって聞いたよ!?どうしてそんな事をしたの!?」
「……それはお前が、俺達の仲間に戻る際に必要な質問か?」
シャーユの口調が冷たくなる。間違い無い、やっぱりブラッドゴーレムはシャーユが……。
「なら教えてやろう。確かに俺はあそこに行ったさ!あそこは王国に居られないならず者達の根城だ!だからブラッドゴーレムを利用して壊滅させてやろうと思ったんだ。その後でゴーレムを倒し、クエスト報酬も頂きって事さ!」
「そんな……あそこにはたくさんの人が居るんだ!今回はよかったけど、一歩間違えたら皆死んじゃったかもしれないんだ!どうして……。」
「いいか?俺は勇者だ!あそこは邪魔だったから潰そうとしただけさ!俺のやる事はみな正しいんだ!」
シャーユは悪びれもせず僕に語る。そうか……シャーユはそういう人だったんだ……。これでシャーユの気持ちがはっきりしたよ。
「それでどうだ!?ティム、もちろん戻って来るだろう?」
「……うん。僕は……。」
僕が口を開いた瞬間、空からものすごい魔力の衝撃が僕達に襲い掛かった。
「なっ!?何だこりゃ!?」
「上よシャーユ!あそこに何かいるわ!」
マーチが頭上を指差すと、そこにはふわふわと浮かぶ何かが二つ見えていた。それは少しづつに下に降りてきて、空中の一点で止まったんだ。
「な、何あれ……?」
僕達は今の会話も忘れ、上空にある二つの何かをじっと見ていた。あれは……何だろう?とにかく注意深く観察しないと!シャーユの事は一旦後回しだ!
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