少女テイマー、騎士団長と対決する
あーしがジャンヌの方を見た時、彼女は剣を振るい、あーしの首元を攻撃していた。
「くっ!?」
的確に急所を狙った攻撃。間一髪鎌を取り、持ち手で受ける事には成功した。でも、その勢いであーしは飛ばされ、壁に叩きつけられたっす。
「くっ!?いきなり何するんすか!?」
「仕留め損なったか。だが……!」
奴はあーしには目もくれず、荷車の方に向き直る。そして再び剣を振り……荷車をバラバラにしてしまった。
「な、何て事を……。」
「これで証人は居なくなったな。これで勇者様の名誉は守られる。後は……。」
ジャンヌはあーしの所にやってきたっす。そして、両腕を掴みながら、あーしを地面に押し倒した。
「いっ……ハァ、ハァ……!」
「後は貴様達だけだな。どうだ?取り引きしないか?」
「と……取り引き……?」
「ああ。貴様達が持つブラッドゴーレムの魔石、それを私に譲ってくれないか?もちろんタダでだ。そうすれば勇者様が倒した証拠として使う事が出来る。」
な、何を言ってるっすかこの女は……。そんなの、はい分かりましたなんて言うはずが無いっす……。
「が、ああ……!」
「おっと、つい強く握ってしまった。返事をもらう前に殺すのはまずいからな。」
「この、クズが……!」
「何とでも言え。私が守るのは勇者様であり、王国の名誉だ。その為なら誰が死のうと知ったことではない。」
ああ、そういう奴っすか……。王国の騎士団長って、こんな危ない奴が務めているんすか……。
「余裕が無くなってきたようだな。そろそろ答えてもらおう。でなければ本当に死んでしまうぞ?」
「黙りなさい……あの魔石は、私達が手に入れた物よ……。アンタみたいな奴に、渡してたまるか……!」
「そうか……ならば殺してしまうか。それから頂いても何の問題も無い。」
奴は私を地面に伏せさせたまま、剣を抜く。そして首元にそれを振り下ろした。
「終わりだ!恨むなら自分の強情さを恨む事だな!」
「……どかーん。」
「何!?」
瞬間、私の手が光り魔力の弾丸を形作る。それを奴の顔面に発射した。
「くっ!?何だと!?」
「私を、私達を……舐めないでよね!」
剣でガードした事で、ジャンヌに一瞬隙が出来た!そこを逃さず、私は回し蹴りで腕を攻撃する。
「ギャッ!?」
「次よ!」
続いて鎌を拾い、それを足に向けて容赦無く突き立てる。こいつは明らかに危険だ!早く動きを止めないと!
「くっ、ああああああああ!?」
「さっきの……お返しよ!」
足元がぐらつき、地面に正座する形で座り込むジャンヌ。奴の首元に、魔力を込めた全力の蹴りを叩き込んだ!
「へぶぅ!?」
ボールのように弾け飛んだジャンヌは壁に押しつけられ、轟音と共に崩れ落ちた。こ、これで倒した……?
「流石だな、サリア。」
「……ギル、何で助けてくれなかったのよ?」
「お前ならあれ位平気だと踏んでいたのだ。実際にこうやって話しているのが証拠だろう?」
「また証拠……当分その言葉聞きたくないわね……。」
隣にやって来たギルに文句を言いながら、私は地面に寝転がり、空を見る。想像以上にダメージを受けたわ……。それにしても、あんなヤバい奴が騎士団長って、王国は人材不足なのかしらね……?
「ふん、油断したか。ブラッドゴーレムを倒しただけの事はあるようだな。」
「なっ!?」
私の目線には、倒れたはずのジャンヌが居た。
……嘘でしょ、私は確かに倒したはず。手応えもあったのに!
「不思議そうだな。確かにあの一撃は効いたよ。たかがテイマーとは思えぬ強さだ。」
「じゃあ、何で……?」
「これが私のスキルだからだ。」
ジャンヌはそう言って、自分の左腕に手を当てる。……左腕はねじ曲がっている、確かに私の一撃は効いているんだ。
「私は聖騎士、王に、勇者様に選ばれた存在だ。彼らに仕えるこの身は、多少のダメージならすぐに回復出来るのさ。」
奴は自分の左腕を強引に元に戻す。ベキッと嫌な音が響いたけど、それとは反対に腕自体は正常な状態に戻っていた。
「さあ……続けようか。」
「……アンタの方が魔物よりもよっぽどバケモノよ?」
ジャンヌは剣を持ち、再びこちらに歩いて来る。私も迎え撃つ為に鎌を持って、奴を視線から外さないよう追いかけていた。
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