作戦途中、現れたのは……。
「ジャンヌ樣。ここでの見張りも大変でしょう。我々が後はやりますから。」
「余計な気遣いは不要だ。私が続きもやる。お前達の目は役に立たないからな。」
「し、しかし、騎士団長である貴方自らとは……。」
ここは王国の門の頂上。そこでは騎士達が目を光らせ、怪しい者を探していた。
「念のためだ。万一あの配信がトリックで無いのなら、奴らは立派な脅威だ。王国の為にも抹殺しなければならない。」
「そうですか……ん、あれは?」
「どうした?」
ジャンヌが部下と下を覗くと、そこには荷車を通す門番の姿が見えた。
「荷車を引いていた者……怪しいな。話を聞いて来る。」
「はっ、えっ?」
部下が隣を見ると、ジャンヌは居ない。もう一度下を見ると、そこには空中に居る彼女の姿があったのだった。
「や、やはり恐ろしいな、聖騎士ジャンヌ……。王国の騎士団長にして、非情なる騎士と噂される訳だ……。」
「おい、そこのお前。」
「はっ……ジャ、ジャンヌ樣!」
門番はジャンヌに気づいて敬礼をする。しかし彼女は突如、門番に剣を突きつけた。
「な、何を!?」
「答えろ。何故あの荷車を通した。」
「そ、それは言えません!機密事項ですので……。」
「私に言えぬのか?それほどの機密事項なのか?」
「し、しかし……。」
門番は口を閉ざすが、彼女は尚も剣を突きつける。
「早く言え。でないと首が飛ぶぞ。」
「お、お許し下さい!あの荷車には、勇者様への貢ぎ物が乗っていたのです。」
「貢ぎ物だと?」
「は、はい。何でも勇者様にも秘密にしているとの事で、おそらくは……。」
「……っ!分かった。ご苦労だったな。」
「い、いえ。こちらこそ申し訳ありませんでした。」
ジャンヌは剣を仕舞うと、すぐに街の中へ歩き出して行く。そこに丁度、魔導パソコンから一つの連絡が入った。
「フン、やはり奴らだったか。よかろう、勇者樣の代わりに……私自らが出向いてやるとするか。しかし証人を連れて来たのなら厄介だ……早く始末しないとな。」
ジャンヌは連絡した者に適当に指示を飛ばし、街役場に向けて進むのだった。
◇◇◇
「さあ、これでどう?まだトリックっていう気かしら?」
「こ、これは……まさか、そんな!」
サリアがカウンターに魔石を乗せると、受付の女性も周りの冒険者さんも、皆一斉に驚いていた。
「お、おい!あれって、間違い無く魔石だよな?」
「ああ。だが何の魔物の魔石かまでは分からない。一度鑑定してみたらどうだ?」
「なっ!?貴方達何を言い出すんですか!?」
受付の女性は予想外の事態に困惑してるみたい。周りの人達も自分と同じだと思ってたんだ……。
「貴方達、あそこに居るのはテイマーですよ!?そんな人達が持って来た物なんて偽物に決まってるわ!」
「ならそれを確かめようぜ!俺達には本物に見えるし、真偽を確かめたほうが早い!」
「し、しかし…………。あっ、……そうですね。ならここで調べましょうか?」
「それは良いわね。アンタの目の前で本物だって証明出来るんだから。」
(これはいい流れになってきたな。大勢の前で本物か分かれば、正真正銘これが証拠になる。)
(ギル、それならこの流れに乗ろう!)
「なら鑑定士を呼ばないといけませんね。あそこの机でしばらくお待ち下さい。」
「ええ、遠慮なく座らせてもらうわ!」
受付から示された机に僕達は向かい、そこに腰掛ける。ここで待っていれば、そのうちシャーユ達も来るはず。僕も頑張らないと!
「ふーっ。ティム、ごめんなさいっす。あーしのせいで変装の意味が無くなっちゃったっすね。」
「ううん。僕こそごめんね。反応しちゃったからすぐにバレちゃったよ……。」
「パートナーを馬鹿にされたら腹も立つものっす。しょうがないっすよ。」
僕達は椅子にじっと座っていたけど、ギルはずっと立ちっぱなし。……何かあるのかな?
「ギル?座らないの?」
「いや、我はこのままでいい。お前達はくつろいでいろ。我は今立ちたい気分なのだ。」
「そう?疲れたらいつでも言ってね!椅子を持ってくるから!」
「ああ。任せるぞ!」
「…………遅い。」
「もしかして鑑定士さん、何か用事があるのかな?」
「ならば早く言うだろう。クエスト達成に関わっているのだ。我が受付なら、早く嘘を証明したいと喜んで手配するぞ。」
「そっか。……ねえギル、シャーユには連絡って行ってるのかな?」
「間違い無い。我らが倒したのを配信で知っていれば、まずここに押しかけて来るだろう。」
ギルはそわそわしている様子。やっぱり心配事があるんだ!
「ギル?」
「……ティム、サリア。いつでも外に出られる状態にしておけ。作戦失敗かもしれん。」
「ギル、何言ってるんですか!?ここで実績を証明するのがあーし達の目的でしょうが!」
「さっきも言っただろう?我が受付なら喜んで鑑定士を連れて来る。それに奴らとしては、わざわざ我らを留める必要は無い。最悪勇者が押しかけて来て、我らが暴露するからな。」
「だからそれがあーし達の狙いなんですよ!?」
サリアの言葉にに僕は頷く。だってそれが目的なんだから。何でギルは疑問に思うんだろう?
「[何でわざわざ時間をかけるのか]そうは思わないか?」
「それは……何で?どういう事っす?」
「お前はどこに手紙を出した?」
「そりゃ騎士団っすよ。街に来て欲しいって頼んだっすから。……あっ。」
「そうだ。つまり騎士団は勇者の不祥事を知っている。そして役場に話を通していれば、我らが乗り込んで来た事も分かるはずだ。つまり……!」
ギルが何か言おうとした瞬間、ドカンと轟音が鳴り、役場の扉が吹き飛んだ。そして皆の注目が集まる中、一人の女性が姿を現したんだ。
「……ここで足止めして、時間をかけている間に直接我らを始末すればいい。そうすれば不祥事が表に出る事は無いからな。」
「ええ……何すかそれ。」
緑色の髪をした女性は僕達を見るなり、剣を突きつけながら大声で話しだした。
「貴様達が王国を騒がせる不届き者だな。私は騎士団長ジャンヌ!貴様達はここで拘束させてもらう!」
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