突入!王国の街役場!
グランド王国に入ってから、ギルは僕達を乗せた荷車を引いてひたすら進む。目的地は街役場、ここではクエストの管理をしているから、緊急クエストの受付も行われている……と思う。
「ギル、僕達はいつ頃出ればいいかな?」
「もう少し待て。役場に着いたら降ろしてやるから、それまでは我慢してくれ。」
「分かった。ギル、気をつけてね。」
僕が荷車の端っこに寄りかかると、サリアが反対の端から話しかけて来た。
「ティム、いよいよっすね。」
「うん。」
「大丈夫っす。ティムにはレルが居るし、あーし達もついてるっす!だから、あまり緊張しすぎない事っすよ。」
「うん、分かってるよ!ありがとう、サリア!」
「さて……そろそろ着くぞ!お前達、降りる準備をしておけ!」
「了解!レル、降りるよ。準備はいい?」
「わん!わん!」
「んー。ただ乗ってるだけだと退屈っすね。ようやくあーし達の本題に取り掛かれるっすよ!」
「一応武器も持っておけ。奴らの事だ、何をしでかすか分からんからな。」
僕達は護身用に武器を携帯する。僕は短剣、サリアとギルは小さい鎌。レルはブレードが大きすぎるから、今は出さないでもらっている。
「では……行くぞ!一気に進め!」
「うん!」
「わん!」
「任せるっす!」
僕達が荷車から降りると、そこには大きな建物……そう、グランド王国の役場がそびえ立っていた。王国のある街の役場だけあって、その立派さは周りと比べても際立っていた。
「歩きながらでいい、簡単に手順を確認するぞ。まずは我ら皆で役場に入ってクエストの報告をする。もちろん勇者達にはすぐに連絡が行くだろう。まずはここで勇者をおびき寄せる。」
「そしてあーし達が証拠の魔石と配信動画を提出。そしてローブを外せば配信者があーし達って証明出来るから、これで確実にあーし達の実績になるっす。」
「僕はそこに現れたシャーユを問い詰めるんだ!あんな酷い事、何でやったのかはっきりさせないと!」
「後は証人を連れて来て洗いざらい話してもらえれば万事解決っす。勇者を捕まえ報酬も総取り!これであーし達は撤収っす!」
「わん!わん!」
「犬っころ、貴様はここで待っていろ。何かあった時には呼ぶ、それまで待機だ。」
「わふ!?わん……。」
「ごめんねレル。お留守番をお願い!」
「うー……わん!」
そして僕達は遂に扉の前に着いた。ここからが正念場だ……!
「では……作戦開始だ!」
「「おーー!!」」
僕達は扉を開け、素早く受付に向かう。そこには多くの冒険者さん達が並んで、クエストの手続きやパーティー募集をしているみたいだった。
「いらっしゃいませ!どんなご用件でしょうか?」
「ええ。あーし達、クエストの報告をしに来たんすよ。」
そこには受付のお姉さんが立っていた。勇者パーティーも担当している人だ。
「おお!おめでとうございます!どちらのクエストですか?」
「それは……。」
サリアは一呼吸置いて、彼女に話しかけた。
「先日の緊急クエスト、ブラッドゴーレムの討伐についてっす。」
「えっ!?……しばらくお待ち下さい!」
受付嬢さんは目を見開いて僕達を見る。そしてすぐにこの場を離れて行く。周りの空気も一気に変わった。一斉に注目を集めているんだ……。
(予想通りっす。勇者達はここに来るっすよね?)
(おそらくな。)
◇◇◇
「も、もしもし?来ました、貴方の予想通り奴らが来ました!私はどうすれば……?」
「分かった。すぐにそちらに向かう。適当に足止めしておけ。いいな?」
「は、はいっ!早めにお願いします!」
◇◇◇
「えー……貴方達、ふざけちゃいけませんよ?」
受付嬢さんが戻って来た。でもさっきとは違う、凄く横柄な態度だ……。
「いいですかー?ブラッドゴーレムはAランクの魔物です。貴方達三人如きで倒せる相手では無いんですよー?」
「そんな事言っても、倒したもんは倒したんすよ。」
「そうなんですか〜。……ねぇ?ティムさん?」
「えっ!?」
嘘!?変装は完璧だったはずなのに、こんなに早くバレるなんて……何で分かったの!?
「分かりますよぉ。私達も配信業界はチェックしてるんですから。あのクソ犬と一緒に居るのなんて、世界中探しても貴方くらいですよねー?」
「れ、レルを悪く言わないでよ!どうしてそんな事」
「ティム!黙ってなさい!」
サリアの怒号が飛び出し、僕は慌てて口を閉じる。でも、サリアも同じように手を口に当て、しまったという表情で口を閉じていた。
「やっぱりティムさんでしたか。しかし……勇者パーティーの貴方も落ちぶれましたね。あんなトリックを使った配信なんて、すぐに分かりますよ?」
「違う!僕達は嘘なんかついてない!ちゃんとブラッドゴーレムをやっつけたんだ!」
「なら出して下さいよお、証拠を。出せるならですけど?」
(ギル……そろそろ出すっす。作戦とは違うけど、これ以上聞いてたら鎌持ち出したくなるっす……!)
(いいぞ、ここで一回キツイのをお見舞いしてやるといい!)
「……チッ。」
「あー?何ですか貴方?貴方がティムさんと協力して配信してるのも分かってるんですよ?」
「黙りなさい。アンタ今言ったわよね?証拠出せって。いいわ、出してあげるわよ。」
「な、何を言って……トリックに証拠も何もある訳が……。」
サリアが受付に出したのは、小さい袋。その中にはブラッドゴーレムの体の一部が入っていた。
「何ですかこの石ころは?これが証拠?……アハハハハ!やっぱりトリックじゃないですか!」
「そうよね。ならこれはどう?」
サリアはすかさず袋の中へ手を入れ、奥にある丸い石を取り出した。
「またガラクタですか?そんな、もの……?」
「これがガラクタに見えるのかしら?」
サリアが出したのは……間違い無く本物の、ブラッドゴーレムの魔石だった。
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