少年テイマー、再び王国へ
「レル、お疲れ様!ここからは荷車に乗ろうね!」
「わふー!わん!」
「サリア、お前も運んでやろう!我の荷車に乗れ!」
「大丈夫っす。あーしは歩くのが好きなんですよ。」
僕達四人は現在、グランド王国に向けて進んでいる真っ最中!王国の前には巨大な門があるから、まずはそこを目指しているんだ。
「はい!乗ろうレル!」
「わん!」
僕はレルの背中をさすり、力を借りてからレルを背負っていた。ギルの負担を減らすよう、二人で乗せたり背負ったり、交代しながら進んでたんだ。……でも、やっぱり疲れちゃうと大変だから、途中からギルの荷車に乗る事にしたよ。
ちなみにギルは途中立ち寄った街で、今引いてる荷車を買ったんだ。馬車の荷台みたいな、本格的な物だよ!突入の際に使うんだけど、それとは別に使う予定もあるみたい。何に使うかは分からないけど、重要だって言ってたなー。
それと僕は手紙を書いてきたよ!リースさん達に心配かけないようにしないとね!
「ところでギル。捕まえた人達は連れて来てないの?」
「ウム。一緒に来るのも考えたが……流石に人数が多すぎるからな。」
「ええ。あーし達が宿に泊まる時に、人数分お金がかかるっすからね。かと言って悪い奴でも外に置いとく訳にもいかない。ここはあーしに考えがあるから、心配ご無用っす!」
「そうなの?なら安心だね!」
僕達はのんびり道を進んでいると、目の前に門が見えてきた。やっぱり、いつ見ても大きい……覚悟はしていたけど、ここに来ると胸がドキドキしてきたよ……。
「どうしよう。門が見えたら緊張してきちゃった。」
「落ち着くっすよ。あーし達のする事は、ただ報酬を受け取って、勇者を牢にぶち込む事だけっすよ!」
「確かにそうだ。……だからここで一度止まるぞ。街に入る前にする事があるだろう?」
「「あっ……。」」
「わふ?」
僕達は一度木陰に隠れ、そこに座る。するとギルはケースを出して、この場に広げた。
「今回は何が起こるか分からんからな。ローブを始めとした服は我が縫ってきた。お前達はテイマーなのだから、一応用意はしておくべきだ。」
「おお……それで出発の際寝坊してたんすね。なんか申し訳無いっす。」
ギルは慣れた手付きで手袋をはめ、スーツを整える。僕達もローブを被って準備完了だ!
「ギル?レルはどうしよう?」
「そのままで良かろう。但し一応これを着けておけ。」
「これって……。」
ギルが出したのは……魔法の首輪。僕達テイマーには、本来必要の無い物だ。
「ギル……。」
「従えている振りをすれば何かされる事もあるまい。他の場所なら要らんが、グランド王国ならこれが一番の安全策だ。」
「でも……。」
「案ずるな!我は器用だからな、魔力の回路は壊してある。これはただの鉄のアクセサリーだ。」
「そうなんだ……レル、これを着けて大丈夫?怖くない?」
「わふー?わん!わん!」
僕はレルの方をそっと見る。するとレルは僕の顔をペロペロと舐めだした。
「レルー。くすぐったいよー!」
「わん!わん!ぐー!」
「あっ!」
レルは僕の手から首輪を取り、空中に。落ちてきた所を首にぶつけ、そのまま自分でセットしてしまった。
「わふー!」
「レル……。」
「心配無いっすよ。レルはその辺の事もちゃーんと分かる子っす。それはティムが一番分かってる筈っす、ね?」
「サリア……うん!レル!」
「わん?」
僕はレルをぎゅーっと抱きしめた。もふもふしてて暖かいなー。
「うん、気持ちの切り替え完了!レル、一緒に頑張ろうね!」
「わん!」
「では行くぞ!もたもたしていたら到着が遅れてしまう!早く荷車に乗れ!」
「あーい。それじゃ行くっすよー!」
◇◇◇
戻ってきた。戻ってきたんだ。僕のかつての居場所、グランド王国。ここで僕は勇者パーティーの一員として、シャーユ達とクエストに挑戦していたんだ。
「止まれ!怪しい奴らめ!」
「何だ、我らの事か?」
早速門番に止められる僕達。ギルは荷車を運転しながら門番と話し始めた。
「ここは神聖なグランド王国だ!貴様……何か隠しているだろ!?」
「言いがかりはやめてもらおう。我らに怪しい事など何も無いわ!」
「黙れ!その荷台を調べさせてもらうぞ!」
門番がこっちに来た!僕達は深々とローブを被って、荷車の端っこに避難したんだ。
(さあさあティム、こっちに寄るっす!)
(ひゃっ!?危ないよサリア!?)
そして僕達は、荷車の入り口を無理やり開ける門番と目があった。サリアは僕を抱き寄せ、じっと門番を睨みつけている。
「何だこのガキ共は!?貴様……さては王国への密入国者だな!?」
「見たな……これは残念だ……。」
ギルが門番に近づいて、何か耳打ちしてる。もしかして、これも作戦のうちだったのかな?
「この者達は勇者様への貢ぎ物として連れて来た、だから全身を覆っているのだ。そこからでも顔くらいは見えるだろう?中々の上物だ。」
「そ……そうだったのか!?た、確かに女が二人……側の犬は?」
「あれは小さい奴のペットだ。しかし……勇者様にも秘密にした物を勝手に見たのだ。この意味が分かるだろう……?」
「なっ……!?」
門番が震えている?ギルは何を話してるんだろう。
(サリア?)
(しーっ。まだ黙ってるっす。ぎゅーっとしてないとまずいっすよ!)
「……まあ良い。秘密にしていたとは言え、通達くらいは出すべきだったな。今回は不問にしておこう。」
「も、申し訳ありませんでした!」
「だが、これは機密事項だ。絶対に誰にも言うんじゃ無いぞ?」
「は、はっ!」
そして門番は慌てて門を開き、僕達は中へ入る。流石ギルだ!上手く王国に入る事が出来たよ!
「……サリア?サリア!?」
「まだ駄目っす。むぎゅーっとしてないと気づかれるっす。」
「もう王国に入ったよ!?」
「えっ!?……何ですかそれ!?早く言って欲しいっすよ!」
サリアは顔を赤くして僕から離れた。僕もサリアの事は好きだけど、やっぱり急に密着されると恥ずかしいよね……。
「で、では……ギル、このまま早速街役場に向かうっすよ。」
「分かっているさ。静かにしていろ、まだ時間がかかる。」
「分かった。レル、静かにお願い。」
「わん。」
僕達は荷車を進めながら王国を進む。目指すは街役場だ!僕はレルの頭を撫でながら、荷車の中でじっと休んでいた。
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