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配信テイマー、我が道を行く!〜戻って来いと言われても知りません!僕は大切な仲間と一緒に冒険してるんだから!  作者: ゆん。
第四章

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勇者の誤算、驚きの連続

「マーチ、ケビン!帰って来たぞ、勇者様の凱旋だ!」


「おかえりシャーユ!その様子だと上手くいったのね!」


「心配はしてないが、無事で何よりだ。」


 ここはグランド王国、いつも勇者パーティーが利用する料理店。マーチとケビンの下へ、勇者シャーユが帰って来たのだった。




「どうだったかしら、ストーレの街は?」


「やはり礼儀がなっていないな。勇者の俺がわざわざ足を運んだのに、奴らは金を出す事もしないのだからな。」


「それは大変だったな。王国では快く私財を渡してくれる奴らも大勢居るのにな。」


「だが、無事にブラッドゴーレムを街に送りつけたから、後は日が経つのを待てばいい。壊滅してから後始末に行けば良いだろう!」



 シャーユは誇らしげに二人に語っていた。王国に居られない者が集まる、掃き溜めの街ストーレ。勇者にとってそれは、世界を統べる王国にあってはならない汚点なのだ。


「さあ、今日は前祝いに飲むとしようか!俺の奢りだ!」


「「おー!」」



 三人は出撃への英気を養うべく、夜を飲み明かすのだった。












 しかしそれから数日。幾ら待ってもストーレの街に関する話題は出てこない。冒険者が集まる役場にも、何も連絡は無い様子である。


「おかしい。いや、おかしくは無いのか……?」


「どうしたシャーユ?何か不安なのか?」


「いや……俺がストーレの街に行って随分立つが、壊滅の報告が来ないんだ。」


「誰か伝える人員は居るはずよね?シャーユ、一緒に冒険者連れて行ったでしょ?そいつらはどうなったのよ?」


「っ!い、いや……奴らは逃げたんだ!俺の手柄を横取りしようとしたから斬りつけたら、逃げていったんだ!」


「そうなの?大変だったわね。じゃ、喉乾いたから何か買ってくるわ。」


「お、おう……。」


 シャーユは冷や汗をかきながらマーチに説明する。彼女は納得し、買い物の為に役場を離れた。





「……………………。」


「……………………。」






 …………それから数日後。ストーレの街についての話題は出ていない。


「おい!そこのお前!」


「な、何ですか?」


「ここ数日で、ストーレの街が壊滅したとか、そんな噂を聞いてないか?」


「す、ストーレの街……ですか?いえ、聞いてないですね。」



 シャーユは職員を捕まえ質問したが、やはり情報は無い。前よりも酷い汗をかきながら、シャーユは役場の掲示板を片っ端から調べていく。



「無い、無い、無い!何でだ!?一大ニュースになるはずだろ!?」


「おはようシャーユ…ってどうしたの!?寝不足!?」


「お前、目が充血してるぞ。体調が悪いのか?」


 合流したマーチとケビンの心配を無視して、彼は尚もわめいていた。




「出てない!出てないんだよ!ストーレの街壊滅のニュースが!」


「な、何ですって!?」


「本当か!?ならば俺達が一度確かめに行った方が良い!」


 三人は料理店で食事をしながら今後について話していた。






「……………………。」


「……………………。」


 そんな勇者パーティーは、周りから聞こえないように陰口を叩かれているのに気づいていなかった。











「もう一度だけ確認したら出発だ。行くぞ二人とも!」


「ええ!」


「おう!」


「失礼します、勇者パーティー様!」


 翌日。三人はもう一度役場に入り、改めて掲示板を確認する。すると後ろから、受付嬢に声をかけられた。


「何だ!今俺達は忙しいんだ。後にしてくれ!」


「そうはいきません!騎士団の方がお呼びです!大至急来て下さい!」


「はあ!?何で騎士団から!?」


「とにかく来て下さい!さあ早く!」






 受付嬢はすぐに役場の奥へ勇者パーティーを通す。そして応接室に入り、三人を座らせた。


「もうすぐここに騎士様が来ます!しばらくお待ち下さい!」


「な、おい待てよ!?」


 シャーユは受付嬢を捕まえようとするが、彼女は逃げるようにこの場を去ってしまった。


「な、何が起こっているんだ……?」













 ◇◇◇


 それから数分後、応接室に一人の騎士が現れた。甲冑が全身を包み、その身体は威圧感を漂わせている。



「勇者樣、私でございます。お聞きしたい事があり、参上致しました。」


「あ、ああ。お前は……。」


「まずはこれについてです。こちらをどうぞ。」


 騎士は手紙をシャーユに差し出し、彼はそれを見る。そこには彼の予想を越えた何かが書いてあった。






 [そちらにありました緊急クエスト、ブラッドゴーレムの討伐の件について、お伝えします。ストーレの街をブラッドゴーレムが襲撃してきたので、こちらで討伐致しました。

 この事件に勇者樣が関わっている事が判明したので、それも加えてお伝えします。


 現在ストーレの街は半壊状態ですので、こちらの復興を優先しております。

 討伐した証拠である魔石と、勇者樣の所業を証明する証拠はこちらにあるので、確認の為騎士団を派遣頂けないでしょうか?


 色 よ い 返 事 を心よりお待ちしております。

 ストーレの街所属冒険者 サリアより]






「さ、サリアだと……!?あのクソガキが……!?」


「それで、これはどういう訳ですかな?」


「い、いや……これはデタラメだ!あり得ない、俺達で勝てないブラッドゴーレムを、たかが冒険者なんかが……。」


「それはわかっています。しかし……こんな配信動画が出ておりますので……。」


「な、何だと!?」


 騎士は慣れた手つきで魔導パソコンを操作する。するとそこには……勇者にとって悪夢のような光景が映されていたのだった。







 ◇◇◇


「ここだよ!そんな攻撃当たらないよ!」


「わん!わふー?」


「ゴォォォ……ゴォォォォォォォォォォォォ!






「その程度で……我らを出し抜けると思うなよ!行け、サリア!」


「言われ無くても分かってるわ!」


「[魔技]ソウルサイス!」




 ◇◇◇






「こ……これってティムじゃないのか!?何でここに居るんだ!?」


「それより、何なのよあの動き!?もしかして……あいつが追放の時に言ってた事って、本当だったの!?」


 マーチとケビンは驚愕しているが、その隣ではシャーユが体中から汗を流していた。


「最近この配信が王国中で話題になっています。更にこの文言……王国としては非常にまずい。勇者の名のもとに特権が許されているのですから。既に今の時点で、一部の冒険者や住民が不満を口にしているようです。」


「そ、そうなのか……?俺は勇者なのに……。」





 固まる三人を見て、騎士は立ち上がる。


「今回はこちらで対処しましょう。勇者の権威が堕ちてしまうのは、こちらにとっても不都合ですから。」


「た、頼む……そっちに任せるぞ……。」


「ええ。そのように致します。」




 頭に被ったヘルメットを取ると、そこにはしなやかな緑髪が伸びた、女性の姿があった。





「このジャンヌにお任せ下さい、勇者様。」











 騎士……ジャンヌが帰った後、応接室には勇者パーティー三人が取り残されていた。


「「「…………。」」」


 三人ともに無言になっている。今、起きている事に頭が追いつけていないからである。


「……どうする?」


「な、何が?」


 ここまでの流れで……マーチが唐突に口を開いた。


「見たでしょ、さっきの配信。あそこに居たのは間違い無くティムよ。」


「ああ……間違い無い。」


「ティムがあんなに強いなんて思わなかったわ……。分かっていたら手放さなかったのに。」


「た、確かにな。」


 マーチに合わせてケビンも相づちを打つ。それを見たシャーユは尚も冷や汗をかいている。




「ねえシャーユ、ティムの事なんだけど……こっちに連れ戻さない?」


「な、何を言うんだお前は!?」


「だって、あんなに強いなら私達が使った方が絶対良いわよ!それに、ティムが勇者パーティーに戻れば、奴の手柄は全部勇者パーティーの物よ!」


「なっ!?い、言われてみれば……。」


 シャーユはマーチの意見に同意した。同意してしまった。それだけ配信に映っていたティムを、自分達が独占したいと思っていたのだ。



「そうだ……そうだ!奴は俺達勇者パーティーの一員だ!行くぞお前達、あのクソガキからティムを取り戻すんだ!そうすれば栄光が戻ってくるんだ!」


「ええ!」


「やろう!俺達なら大丈夫だ!」



 シャーユはさっき起きた事からすっかり立ち直り、目の前の二人と共に宣言するのだった……。

今回も読んで頂き、ありがとうございます。続きが気になる、面白かったと思って頂ければ幸いです。もしよろしければ、ブックマーク、評価を入れて頂ければ嬉しく思います。

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