閑話 リースの村での一大事?
今回はティムがストーレの街に行った後の、村の話になります。よろしくお願いします。
「皆さーん!お料理が出来ましたよー!」
「分かりました。今行きますね。」
「びー!」
私はリース、村の村長なんです。私のお父さんが村長だったから、後継ぎとして村をまとめています。そんな私は今、皆のお昼ご飯を作っていました。
「お待たせしましたね、リース。私もびー君も準備万端です。」
「びー!びー!」
今、この村に住んでいるのは三人なんです。茶髪で背の高いかっこいい人がマイラさん、空を飛んでいるハチさんがびー君!
二人ともそれぞれ、ヘルキマイラ……とポイズンビー……って言う魔物だけど、とってもいい方達なんです!本当は後三人居るのですが、今は外に出ています。
「……なるほど。はちみつ入りのパンですね。手間がかかったでしょう?」
「はい!生地をこねるのに時間がかかっちゃいました!」
「次は私がやりましょう。びー君もどうです?」
「びー!びー!」
今日のご飯ははちみつパンとヨーグルト、野菜サラダです。皆で食べると美味しいです!
「リース、びー君。これを食べたら私はダンジョンの見回りに行きますから、留守番は頼みましたよ?」
「はい!任せてください!」
「びー!びー!」
マイラさんには村の側にある森とダンジョン、二つを警戒してもらっています。強い魔物がいる事が調査で分かったので、そこを見てもらってるんです。
「びー君。そこの瓶を取って下さい!」
「びー!」
びー君は私の言う事をすぐ理解して、手伝いをしてくれます。一緒に作っているのはホットケーキ!もちもちふわふわのケーキは美味しいんですよ!
「マイラさん、喜んでくれるといいなぁ。びー君も一緒に食べますよね!」
「びー!」
生地を作り、それを薄いプレートに乗せて火にかける。うーん、いい匂い!
「びー君、後で味見してみますか?」
「び?びーーーー!!」
びー君も羽をバタバタと動かして大喜びです!完成したら一足先につまんでみましょう。味見はしないといけませんから!
「びー!びー!びーーーーー!!!」
「もう少しですよー。ちょっと待ってて下さいねー。」
私はプレートを動かしながら、窓を覗きました。すると、その窓には、人の顔がぺたんと貼り付いていました。
「あえ、あわわわ……。」
「おっ!誰も居ないと思っていたが、可愛い子がいるじゃねえか!」
「兄貴!外にはたくさんの野菜が植えてありますぜ!」
「おう!全部頂いていくぞ!」
な、なに!?外に誰かいるんですか!?
「あわわわ……。」
やがて扉をどんどん叩く音が聞こえて、しばらくすると扉が壊れてしまいました……。そこには、大きな男の人と、痩せて細くなった人、二人が居たんです……。
「な、何か御用でしょうか……?」
「ああ!お嬢ちゃん、外の野菜をちょっと分けちゃくれないか?」
「お、お野菜ですか……?」
「それと金目の物だ。アクセサリー位あるだろ?」
「そ……そんなのありません!お野菜ならあげますから、帰って下さい!」
私は必死に声を出して、男の人達に伝えました……。でも、この人達は帰ってくれなかったのです。
「そ……そんな訳あるか!金目の物を早く出してくれ!」
「な、無い物はないんです!本当に無いんですよ!」
「な、なら仕方ない!おい、やれ!」
「へい!」
大きい人が指示を出すと、細い人が畑に入り……作物を採り始めたんです。でも、お野菜ならあげるつもりなので、これで終わってくれれば……。
「兄貴、この畑は何もありませんぜ!あるのは芽と草だけです!」
「そんな物はどうでもいいんだ!早く野菜を集めろ!」
「へい!おっ、ちょうど奥にいい畑があるな。ここを通るか!」
細い人が入ったのは……マイラさんの畑だ!マイラさんが種を植えて数日、ようやく芽が出たって喜んでたのに……。
「や、やめて下さい!そこは……。」
「痛っ、何しやがる!」
「びーー!?」
声の方を見ると、びー君が細い人を針で刺していました。でも、細い人は手持ちの剣で、びー君を斬りつけたんです!
「や、やめて下さい!」
「そこを退いてくれ!俺達は」
「何をしているのですか?貴方達は?」
ま、マイラさん!
「びー!びーー!」
「そうですか。私の畑を踏み荒らそうと……。いい度胸ですね。」
「あ、あわわわ……。」
マイラさん、凄く怒ってる……指をパキパキと鳴らしながら、二人に近づいて行ったんです……。
「では、理由を聞きましょうか?」
「「ふぁい……。」」
それから男の人達はマイラさんに攻撃され、全身傷だらけになっていました。今は私の家の中で、事情を聞いています。
「何故このような事を?リースは野菜なら良いと言っていたでしょう?」
「ああ……俺達、金が無かったんだ。俺達は王国で商売してたんだけど、勇者樣への貢献って理由で荷物没収、金も取られて一文無しになっちまったんだ。本当に困ってるんだ……。」
「それで、食うものが無くて歩いてたら、ここを見つけたんです……目の前に野菜がたくさんあって、つい……。」
「そ、そんな理由が……。」
「び、びー……。」
この人達、辛い思いをしてきたんだ……。それなら、今の私が出来る事は……!
「あ、あの!」
「「は、はい!」」
「もしよければ、貴方達もここへ住みませんか?」
「そ、そんな!た、頼む、許してく……え?」
私は一つ、提案を出したんです。
「リース?随分唐突ですね……。」
「すみません。でも、もし行くあてが無いのなら、ここで働いてみませんか?この村は人が居なくなってしまって、畑は私達でやってるんです。でも、少ない人数では大変なんです!お家は貸しますし、ご飯も用意します!」
「ほ、本当ですか!?どうします兄貴!?」
「お、俺に聞くなよ!でもよ……。」
大きい男の人は、こっちを見て……真剣な表情で話し始めました。
「俺達はお嬢ちゃんを襲おうとした。野菜も奪おうとした。お嬢ちゃんにしてみれば極悪人だ。それでも本当に……本当にいいのか?」
「私はいいです!でも……わ、悪い事しませんよね?」
「何かあれば私が消し炭にします。その条件もつけて下さい。」
「びー!びー!」
「びー君のマッサージ権もつけて下さい。それが私達の条件です。いいですか?」
二人は顔を見合わせた後、一緒に頷いてこちらを見ました。そして、椅子から飛び降り、頭を床につけたんです。
「「申し訳ありませんでした!これからここで働かせて頂きます!御恩は必ずお返し致します、よろしくお願いします!」」
「決まりですね。しかし……リース、貴方は甘いですね。」
「で、でも困ってるって言ってましたし……。」
「分かりました。いざという時は私が居ます。貴方はやりたいようにやれば良いのです。」
「は、はい!これからよろしくお願いします!」
私は少し甘すぎるのかな……。でも、この判断はきっと間違ってない!この人達は悪い人じゃ無いはずです!
「おはようございます!マイラさん、びー君!」
「おはようございます。リース。」
「びー!」
それから数週間後。朝起きてからいつもの挨拶をする私達。更に……。
「「おはようございます!リース姉貴!」」
「はい!モブロウさん、モブスケさん、今日もお願いします!」
「任せてくれ姉貴!俺達が畑をどんどん耕してやるからよ!」
「俺も頑張りますぜ、姉貴!じゃあ、先に行きますんで!」
先日村に来た二人、モブロウさんとモブスケさんとも一緒です。今日は皆で畑のお世話をします!そして先に皆が畑に向かう中、マイラさんがこちらに戻って来ました。
「リース、ティムから手紙が来てますよ。」
「お手紙ですか?どんな内容なのかな……?」
手紙はテイマーであり、私の命の恩人のティムさんが送ってきた物でした。
[リースさんへ。ティムです。僕は少し用事があって、王国に行く事になりました。帰るのが遅くなりますが心配しないで下さい。……多分これを出す頃には、僕は王国に行っていると思います。帰って来たらリースさんのご飯、たくさんお願いします!]
「ティムさん、王国に行くんですね……。怖い目にあったはずなのにどうして……。」
「ふむ。王国ですか。しかしティムには何か事情があるのでしょうね。気にする事はありません。私達は普段通りに過ごせばいいのですよ。」
「……そうですよね!それなら、早速始めましょう!今日は何の種を蒔きますか?」
「はい。私は……。」
私達は畑のお世話をしながら、ティムさんの帰りを待つ事にしました。帰って来たら、新しい二人の事も教えてあげないと!私はわくわくしながら、皆の所へ走って行きました。
今回も読んで頂き、ありがとうございます。続きが気になる、面白かったと思って頂ければ幸いです。もしよろしければ、ブックマーク、評価を入れて頂ければ嬉しく思います。




