決着、ブラッドゴーレム!
「ゴォォォォォォ!?」
「相当怒ってるわね。ゴーレムでもこれは効いたんじゃないかしら?」
吹き飛ばされたブラッドゴーレムが再びこちらへと歩いてくる。こちらに向けた顔には怒りが込められているのがすぐに分かった。
「ゴォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
あれは……土や岩、瓦礫も、急に集まって来たわね。
「ゴォォォォォォォォォォォォ!!」
「ほう。この短時間で修復出来るのか。やはり強いな。」
巻き上げた物を砕けた肩に付け足し、すぐに腕を再生している。やっぱり普通のゴーレムとは違う、上位種故の特性かしらね。
「いいわね。その方が長く愉しめるわ!」
「いや、ここは我にやらせてもらおう。折角の魔装なのだからな!」
次はギルの番ね。大鎌に変化させた両腕をだらんと伸ばすと、ギルは途端に姿を消した。
「フハハハハハ!良いぞ良いぞ!この感じ……堪らないではないか!」
「ゴォォォォォォ!!??」
ブラッドゴーレムに肉薄し、腕の鎌をサッと振る。それだけで、まずは片足が消し飛んだ。
「ゴォォォォォォ!」
反撃で飛んできた拳を鎌でそっと撫でると、その拳も真っ二つに切り開かれる。
「まだだ!もっと愉しませろ!」
「ゴォォォ!?」
もう一度ガラクタを集め体を修復させると、ゴーレムは腕から巨大な岩石を次々と撃ち出した。あの大きさ、質量……まともに喰らえばひとたまりもないわね。
「そんな物、我には効かぬぞ!」
飛んできた岩石は、ギルの足から放たれた斬撃によってバラバラになる。それだけじゃ無いわね、後ろの岩石も貫通し、今度はゴーレムの胴体を斬りつけた。
「ゴォォォォォォ!?ゴォォォォォォ!?」
胴体がスパッと切断され、宙を舞う。……いや、違う!
「ゴォォォォォォォォォ!」
「何!?」
ギルは確かに斬ったわよね!?なのに斬った上半身が浮遊して、ギルを掴んだ!?
「ほう、浮いているのか。予想外だな。」
「ゴォォォォォォ!」
メリメリと嫌な音を立てながら、ギルを握り潰そうとするブラッドゴーレム。これは厳しいわね。
普段の私達なら、だけどね。
「フンッ!」
「ゴ、ゴォォォ!?」
握られた手を強引に引きちぎり、ギルは地面に着地する。勝敗は決まったわ、私達の勝ちよ!
「さあ、そろそろ終わりにするわよ。」
「もう終わりか。まあまあ愉しめたな!」
二人で一歩進むと、ブラッドゴーレムは同じように下がる。下半身は切断されてただの瓦礫になっているから、浮遊したまま後ろへ逃げているわね。
「ギル、どっちが最後を締める?」
「もちろん我だ!さっき握り潰された礼をしなければなるまい!」
「無傷だったじゃない。ここは譲りなさいよ。」
一歩、また一歩、確実に進み差を詰める。ブラッドゴーレムは顔に焦りを浮かべながら逃げているけど……ここまでね。
「これで終わりよ!」
「ご、ゴォォォォォォォォォォォォ!!!!!」
「いっ!?な、何!?」
私が鎌を振り上げると同時に、ゴーレムは急に叫び出した。轟音に耳を塞ぐ私の目の前、つまり奴の周りには……今までとは比べ物にならない量の、巨大な岩石が空中を浮遊していた。
「ゴォォォォォォォォォォォォ!!!」
「これは……!サリア、トドメは譲ってやる!我は弾除けをやるぞ!」
ブラッドゴーレムが岩石を飛ばすと同時に、ギルは後ろへ高速移動、片っ端から岩石を砕き、街への被害を抑えていた。
「ハアッ!フレイムサイス!」
自分が間に合わない所へは炎を纏った斬撃を飛ばし、岩石を撃ち落とす。流石ギルね。でもゴーレムは、尚も岩石を浮かせ、こちらに発射しようと準備している。
「その程度で……我らを出し抜けると思うなよ!行け、サリア!」
「言われ無くても分かってるわ!」
私はすぐにゴーレムの側へ移動する。……間合いに入ったわね。鎌を振り上げ、一気に魔力を込める。
「これで終わりよ!」
鎌は数倍ものの大きさになり、それを正面に構えて準備完了。さあ……これが私の必殺技よ!
「[魔技]ソウルサイス!」
鎌が黒く輝き、そこから四つの刃が現れる。その刃は敵に向かい、それぞれが対象を切り刻む。
「逃げられないわよ!」
刃は胴を突き抜け、両腕をバラバラに砕き、首元を抉る。完全に制御を失い、体のパーツと浮かせた岩石、その全てを地面に落としたゴーレムは、浮いている頭だけの状態になった。
「ゴォォォ!?ゴォォォ!!?」
逃げようとしているけどもう遅い。私は後ろを向いたブラッドゴーレムの頭、そこに自身の大鎌を叩き込んだ。
「ご、ゴォォォ…………。」
やがて頭を形づくっていた岩石も剥がれ、その場にはガラクタだけが残る。……終わったのね。
「ギル、こっちは仕留めたわよ!」
「フン!こちらも問題無い。街への攻撃は全て防いでやったわ!」
「でも、ブラッドゴーレムなんて中々見ないわよね。情報を整理すれば高く売れるかしら?復興費用も必要でしょうし。」
「だが、それには証拠が必要だ。この岩石では弱いだろうが。」
「あるわよ、あそこに。」
私が指差したのは、ガラクタの上にある魔石。あれは間違い無く、ブラッドゴーレムの持つ魔石だった。
「少し傷ついてるけど、これなら価値としても証拠としても充分ね。」
「ならば早く回収だ、街の奴らの無事も確認しなければならないぞ?」
「もちろん。でも、その前に二人の所に行かないとね!」
私は袋に魔石と、砕けた体の一部を入れる。そしてティムの側へとダッシュで向かう。
「あっ、サリア!ブラッドゴーレム、やっつけたんだね!お疲れ様!」
「わん!わん!」
「怪我とかしてない?もし痛かったらレルに言ってね!運んでくれるから!」
「わふ!?」
倒れたティムと、側に居たレルは同時に私に声をかけてくれた。やっぱり喜んでもらえると、心配してもらえると、嬉しいなぁ……。
……気づいたら、あーしの体は元に戻っていたっす。黒に染まった体はピンクの髪に、いつもの鎌に、全部元通り。こりゃ、完全に魔力切れっすね。でも、不安にさせたら駄目っす。あーしは笑いながら答えるっすよ!
「心配無いっすよ。あーしはピンピンしてますから!さっ、ティム!あーしが街まで運んであげるっすよ!」
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