再びの勇者、ブラッドゴーレム襲来!
突然響いた轟音。それを聞いた僕達は一斉に音の方向を見る。
「な、何だ一体!?」
「びっくりしたわ!敵襲かしら!?」
周りの人達も大慌て、僕とレルはカインさんの方を見た。
「外の部隊はどうなっている?連絡係はいないか!」
「り、リーダー!今お伝えしますー!」
カインさんの大声に反応して、遠くから声が聞こえる。そこから男性が近づき、カインさんに報告をしていた。
「ま、魔物です!街に接近しています!」
「魔物か……どんな奴だい?」
「はっ、それが……。」
「早く教えてくれ!急いで対応しなければ!」
「ぶ……ブラッドゴーレムです……。」
その声を聞き、カインさんの顔は真っ青になっていた。
「ブラッドゴーレム!?ここに住処なんて無いだろう?何かの間違いじゃないかな!?」
「いえ、間違いありません!今はギルさんが抑えています!」
「そうか……分かった、今行こう!出れる冒険者は俺と一緒に来てくれ、それ以外の人達は役場に集まって!」
「了解しました!皆さん、避難して下さい!」
男性はすぐに街の人を集めて、カインさんの勤める街役場に動き始めた。
「僕達も行きます!レルも行ける?」
「わん!わん!」
よし、まだやれる!隣のサリアを見ると、彼女もやる気満々だ!
「ブラッドゴーレム……手強いっすね。あーしも行くっすよ!ちょうど体を動かそうと思ってたっす!」
「急ごう!ギルが戦ってるんだ!」
「ええ!早く行ってやるっすよ!カイン、指示を!」
「よし、皆行くぞ!」
「「「「「おーーーーーー!」」」」」
僕達は大急ぎで街の入り口に走って行った。ギル、もうちょっと待っててね!すぐに行くから!
◇◇◇
「ギルさん。そろそろ休憩したらどうですか?」
「必要無い。我が無理を言ってお前達に頼んだのだ。まさか休むわけにはいかんだろう。」
我はギルティス。皆はギルと呼んでいる。我は今、ストーレの街での警備活動中だ。今の所異常は無い。ただ外を見ているだけだ。勇者の動きが気になるが、ティムとカインの勝負も気になっている。後で配信を見なければならないな!
「む、あれは……!」
「ぎ、ギルさん!見ましたか?奥から誰かが向かってきています!」
「ああ!奴は……間違い無い。我が出てやる!お前達は一度街の中へ行け!指示が出るまで待機を頼むぞ!」
「はい!」
人員を街に退避させ、我は見張り台から飛び降りる。カインの部下であり、街の住人でもある。死なせる訳にはいかんのでな。
「何だ貴様は!?この俺、シャーユの邪魔をするつもりか!?」
……やはり来たか。勇者シャーユ!
「もう一度聞くぞ!お前は俺の邪魔をするつもりか?」
「邪魔なのは貴様だ。早く消え失せろ!」
すると勇者は馬から降り、腰から剣を抜く。どうやら我と戦うつもりらしいな。
「俺には時間が無いんだ!早く門を開けろぉ!」
「誰が開けるものか!」
「ならば……死ね!」
勇者は瞬間移動で我に近づく。なるほど速い、流石は勇者と言った所か。
「遅いわ!」
「ゲフッ!?」
首元に迫る刃を手で受け止め、肘を頭に叩き込んでやった。頭を押さえた勇者を蹴り飛ばし、奴の馬の側まで返してやる。
「何を企んでいるから知らんが、早く帰れ!」
「うるさい!ブレイブアタック!」
勇者は魔力を纏って突進をしてくる。先程よりも速いな。これが勇者の力か。
「……ゴバッ!?」
他愛もない。確かに速いがそれだけだ。すかさず我が腕をぶつけ、剣を落とす。我にとってはそのくらい朝飯前よ。
「な、何を……?」
「先に仕掛けたのは貴様だ。死んでも文句は言うまいな?」
「な、……ハギャャャャ!?」
我は手袋を外し、鎌の手を使って勇者を斬る。一瞬で体をズタズタにされた勇者は地面に転がった。
「な、あいつは人間じゃない!?」
「ま、まさか……あれはギルティス!?Aランクの冒険者でも手に負えない、最上位の魔物が!?何故こんな街に!?」
「さあ、何故だろうな?とにかくこれで……。」
「ゴォォォォォォ!ゴォォォォォォ!!」
……ほう。厄介な奴が来たものだ!ブラッドゴーレムではないか。勇者達はアレに追われてここまで来たのか。しかし何故だ?ブラッドゴーレムなぞこの地域には居ない。……まさか。
「おい、そこの勇者モドキ!貴様アイアンゴーレムから転移で逃げたな?」
「う、うるさい!とにかくこれでこの街は終わりだ!さっさとくたばりやがれ!」
「何だと?ふざけた事を。」
「今だ!撤収するぞ!」
「「「ハッ!」」」
「邪魔だ。消えろ!」
「「「グエッ!?」」」
勇者とその手下は馬に跨り街から離れるが、我はすぐに動き、勇者以外を斬りつけ捕縛する。そして地面に叩きつけ、完全に意識を奪った。……奴らは馬鹿なのか?逃がすつもりは無いのだが。次は勇者、貴様だ!
「ゴォォォォォォ!」
「へへっ……ざまあみろ!」
「……ん?そういう事か!?我ともあろう者がしくじったか!?」
勇者は一目散に逃走するが、ブラッドゴーレムはこちらに近づいている。……[奴ら]がここまでおびき寄せのだ。それなら雑魚勇者一人よりも、倒れた馬鹿共数人の方が実入りが良い。つまり……
「フン!街と、ついでに馬鹿共にも手を出させんぞ!」
「ゴォォォォォォ!」
勇者も仕留めたいが、こいつ等も然るべき所へ突き出さねばならん!……全く、つまらぬハンデを背負った物だ!
「ゴォォォォォォォォォ!」
「ハハハ!ブラッドゴーレムよ、我を愉しませろ!貴様など我一人で充分だ!」
我はわざと大声で叫びながら、手を完全な鎌へと変化させゴーレムを斬りつけた。……流石に馬鹿共を庇いながらでは限度がある。試合を楽しんでいるティム達には悪いが、ここは増援に期待させて貰うぞ!
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