激突、ティムVSカイン
「ギルさん!こちらは異常無しです!」
「ご苦労!すまないな、お前達も試合を見たかっただろうに。無理矢理駆り出してしまったな。」
「いえ、後で配信を見ますので平気です!それよりも今は勇者の動向を探りましょう!」
「お前達には後で埋め合わせをするから、よろしく頼む!奴らが何か企んでいなければ良いが……。」
ティムとカインの試合が行われている中、ギルはカインの部下を連れて外の警戒に当たっていた。
「このまま何も無ければそれで良い……。ティム、お前は皆に力を見せてやるのだ!」
◇◇◇
「さあ……どうする!?これで終わりでは無いだろう?」
「もちろんです!勝負はまだ始まったばかりですから!」
僕はレルとの距離を測る。ダッシュすれば追いつく事は出来るけど、きっと妨害が入るはず。僕は少し考え、カインさんに短剣を構えた。
「君はテイマーだろう?仲間の力を借りないのかな?」
「その為に準備をしてるんです!行きます!」
僕はカインさんに向けて突撃する。対するカインさんはその場から動かない。
「そこだっ!」
「よっと。」
僕の剣の一振りは簡単に避けられる。すると彼は僕の腕を掴んで、地面に叩きつけた。
「痛っ!」
「まだだよ!ハアッ!」
「ギャッ!?」
「わん!」
反動で浮き上がった僕に、カインさんは蹴りを入れる。その勢いで僕は吹き飛ばされ、地面に激突した。
「痛っ……でも、まだまだやれます!」
「わん!」
◇◇◇
「あの子、何か作戦があるんじゃないか?テイマーなのに、魔物の力を使って無いだろう?」
「でも、カインさんには敵わないわよ!ここのリーダーであり、凄腕冒険者なんだから!」
周りで見ている人達は、各々感想を述べ合っているっすね。もちろんカインは強い、それはあーしも知ってるっす。
「でも、ティムは負けないっすよ!頑張れー!ティムー!」
あーしも精一杯応援しないとっすね!声を張り上げて行くっすよ!
◇◇◇
僕達の様子を見て、カインさんは頭を捻っていた。
「動きは悪くないが、ギルが注目するほど強いとは思えないな。……何か考えがあるのか、或いはギルの見込み違いか。」
すると彼は魔力を放出し、風の渦を剣に纏わせる。この感じ……強い攻撃が来る!
「君の実力、ここで測らせてもらう!受け止めるか、倒れるか、君はどちらかな?」
「来るよ!レル、力を貸して!」
「わん!」
「させないよ!ウインドカッター!」
「うわっ!?あ、危ない!」
風の斬撃!今の状態でも、レルに触れる隙は無い!やっぱり時間を稼がないと!
「行くぞ!ウインドソード!」
風の渦が剣の先に集まり、刀身が伸びる。そしてカインさんはこちらに高速で移動してきた!
「わん!」
レルが自分のブレードで一閃!それをカインさんは難なく受け止める。
「中々の重さだ!でも、風の刃には関係無い!」
「わん!?」
嘘、レルの体が浮いている!?
「吹き飛べ!」
「キャウウン!?」
レルは勢いよく弾き飛ばされてしまった。だいぶ距離が離れている。これだと近づけない!
「次は君だ!どうする!?」
「僕は……これで勝負です!」
「……また短剣か!?君は一体……。」
僕はカインさんに向けて短剣を投げる。それは風によって止められ、本人には届かない。でも……!
ドガァァァァン!
「何!?」
僕の投げた短剣は、カインさんの目の前で爆発した。すかさず僕は、さっき弾かれ、地面に落ちた短剣に向かって剣を投げる。
カキン……ドガァァァン!
カキン……ドガァァァン!
次々と爆発を起こす短剣。すると辺りにはもくもくと煙幕が漂ってきた。
「しまった……どこから仕掛けてくる!?」
「今だレル!後ろから攻撃して!」
「わん!」
「何っ!?後ろか!?」
カインさんは後ろを振り向き、風の剣を振るう。でもそこにはレルは居なかった。
「今度は左から突撃!」
「わふっ!」
「何だって!?」
カインさんは左を向く。そこにもレルは居ない。
「そこだ!一閃!」
「わん!わん!」
「クソっ、そこか!」
不意をついたレルはカインさんの剣に体当たりする!さっきと違ってレルが押し込んでる、今のうちだ!
「喰らえーー!」
「な、何だって!?」
僕はもう一度短剣を投げると、それはカインさんの顔に向かって行く。カインさんはレルの対処で動けない中、風で短剣を弾く。でも、それは予想してた事だ!
ピカッ!
短剣に括りつけた玉が勢いよく爆発する。すると一瞬、まばゆい光が辺りを包みこんだ。
「くっ、閃光か!?目が……!」
「今だレル!こっちに走ってー!」
「わん!わん!」
膝をついて目をおさえているカインさん。その隙をついて、僕はレルと合流。すかさず背中をさすり、力を借りる!
「レル!ブレードを借りるよ!」
「わん!」
よし、レルの力を借りられた!これで一気に攻め込む!
「ハァァァァ!」
僕は高速でカインさんに接近する。カインさんはちょうど目を開けた所、僕の姿を捉えると驚愕していた。
「な、速い!これがテイマーの力か!?」
「一気に叩きます!勝負です!」
僕は真っ向からカインさんに斬りつける。カインさんも剣を使って防御するけど、今なら僕の方が勝ってるはずだ!
「うりゃぁぁぁ!」
「くっ!?甘いな!」
ブレードを振り下ろした時、カインさんは遠くに移動していた。高速で移動したんだ……見えなかった。
「まだです!行こう、レル!」
「わふー!」
「ぐっ……さっきまでとは大違いだ!強いな君は!」
僕とレルは同時に攻撃するけど、カインさんは回避に集中していて、全く当たらない。
「レル!ここまで来たら一気に決めるよ!」
「わん!」
僕とレルは同時にブレードを構える。カインさんは高速で地面を走ってるんだ。それなら……
「レル!突っ込んで!」
「わふー!」
「まだまだ!当たらないよ!」
レルは再びカインさんに突撃する。もちろんカインさんは回避するけど……。
「今だ!グラウンドブレイク!」
僕は魔力をたくさん込めて、地面にブレードを突き刺した。すると地面がひび割れ、大きく揺れだす!
「なっ!?……しまった!」
「ここがラストチャンスだ!」
「ガウウッ!」
地面から足が浮き、無防備になるカインさん。そこにレルがもう一度斬りつける。
「っ!?危ないな!シールド!」
「キャウウン!?」
カインさんは風で盾を作り、レルを弾く。ここで完全に体勢が崩れた!
「トドメだぁぁぁ!」
「三度も同じ手は通用しないよ!」
カインさんは咄嗟に顔をガードする。でも僕が狙っていたのは……左足だ!
「ぐっ……ああああああ!?」
ガードの無い足にブレードを叩き込み、地面に叩きつける!
「まだだ!追撃しないと!」
僕は力いっぱい足を動かして、カインさんの体を蹴りつける。でも、咄嗟に腕でガードされ、僕の足は捕まってしまった。
「……ここまでかな。君達の強さ、見せてもらったよ!」
「えっ……ひゃあああ!?」
「わふう!?わーー!?」
僕は風で吹き飛ばされ、地面にぶつかった。そして前を見ると、カインさんの姿は再び消えていた。
「いや!いい動きだったよ!ティム君は強いね!」
「えっ……えっ?」
突然後ろから肩を叩かれた。そこに立つのはカインさん。それじゃあ、僕の前に居たのは?
「不思議そうな顔をしてるね。君の張った煙幕の中で分身を用意したんだ。どう?驚いたかな?」
「ぶ、分身!?全然気づかなかったです。」
「ハハハ!そうだろう!俺のとっておきだからね!」
「そ、それで……戦ってみた、結果はどうでしたか?」
カインさんはコホンと咳払いをして、結果を教えてくれた。
「うん!もちろん合格さ!いつでもクエストを受けに来ていいよ!」
「ほ……本当ですか!?やったー!やったよレルー!」
「わふー!わん!わん!」
僕とレルはギュッと抱きつき、地面を転がった。カインさんも何だか嬉しそう!
「しかし、本当に強いな。テイマーの力、恐るべしと言った所だね。」
「はい!僕もレルも、時間を掛けて少しずつ練習したんです!」
「だろうね!……それにしても、煙幕にはびっくりしたよ。どんな仕掛けかな?」
「はい。事前に薬品を塗ったんです。街で売ってる火薬を使わせてもらいました。後は煙玉を括りつけた短剣を投げて、爆風で煙を運びました。」
「万一に備えての準備か……うん、良く出来てたよ!」
カインさんは手を叩き、僕達を褒めてくれた。そして僕の手をとって、上空に掲げたんだ。
「ティム君、それとレル君!今日はありがとう!皆も二人に拍手ー!」
「君、凄いじゃないか!本当に強いんだな!」
「見た目も可愛いし、ファンになっちゃったわ……。」
「いい戦いだったぞー!」
見ていた人達からの言葉と拍手が僕達に来ると、僕は何だか……すごく嬉しい気分になった!テイマーの強さ、分かってもらえて嬉しいな!
「ティム!お疲れ様っす!やっぱり強いっすね!」
「サリア!うん、レルのおかげでちゃんと戦えたよ!サリアもありがとう!応援してくれたでしょ?」
「もちろんっすよ!あーしもティムの強さを再確認したし、もっと頑張るっすよ!」
「うん!……そうだ、魔導カメラを回収しないと!」
そして僕がカメラに手を掛けようとした時……外から轟音が響き渡ったんだ。
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