少年テイマー、リーダーとの試合に臨む
「配信準備はこれでオッケーっと。カインはきっと驚くっすよ!それとカイン程の冒険者と戦えば、ティムの強さも際立つっす!楽しみっすねー。」
「すう……すう……。」
今日は天気のいい朝っすね。あーしは魔導カメラの調子を確認して、机に乗せた。ティムは夜遅くまで戦いの準備を進めていたから、今はぐっすり寝てるっすね。
「……えいっ。」
「むう……。」
あーしはティムのほっぺを指でつまむ。ぷにぷにっすね。たまにはこんなイタズラもしてみたくなるっす。……この子は真面目だから、ね。
「起きないっすね。もうちょっとぷにぷにを……。」
今度は両手でほっぺをつまむ。こうして見るとやっぱり女の子っすね。
「ぷにっと。」
「むう……おはろう。何してるのサリア?」
「あっ。ティム、起きたっすか?」
「うん。起こしてくれたんだね、ありがとうー。」
少し寝ぼけてるっすね。……さて、イタズラは終わり!今日も一日張り切って行くっすよー!
◇◇◇
昨日はぐっすり寝られたよー!緊張で寝られないかもって思ったけど、特に問題は無くてよかった!
「おはようサリア!」
「おはようっす。ティム、やっぱり今日勝負を挑むっすか?」
「うん。サリアのおかげでしっかり準備出来たからね。僕なら勝てる、きっと大丈夫だよ!」
「随分張り切ってるっすね!これは楽しみっす!」
カインさんに会った翌日。僕は今、サリアの家で準備を整えていた。戦うからには必ず勝つ!そのつもりできっちりと用意をしたんだ!
「レルー!おはよう!」
「わん!わん!」
「あっ。もう、くすぐったいよー!」
レルはペロペロと顔を舐めている。体調も良さそうだし、これなら完璧だ!
「あれ?ギルはどこか行っちゃった?」
「今日は出かけたいって言ってたっすよ?もったいないっすよね、折角の試合なのに。」
「それなら僕が頑張って、勝った事を報告するよ!きっと喜んでくれるよね?」
「ええ!それでは出発っす!」
僕はレルとサリアと一緒に、カインさんの建物へ。僕の力を見てもらうんだ!頑張るぞー!
◇◇◇
始めに訪れた立派な建物。そこには職員さんが待っていて、僕の対応をしてくれた。
「おはようございます。カインさんはいらっしゃいますが……試合をなさいますか?」
「はい!よろしくお願いします!」
「了解です!呼んできますから、しばらくお待ち下さい。」
職員さんは奥の部屋に走っていった。……僕はそれを見て、もう一度荷物を確認する。
「心配性っすねー。準備は万全っすよ?」
「う、うん。ちょっと深呼吸するね。」
スーハー、スーハー。……どうしよう、いざ勝負ってなると緊張が止まらない。そして深呼吸をしていると、奥の部屋からカインさんがやって来た。
「おはようティム君!昨日はよく眠れたかな?」
「はい。準備も出来てます!」
「一応聞くけど、何か無理をしてないかな?君は昨日来たばかりだし、俺は本当にいつでも良いんだけど……。」
「問題ありません!むしろ自信があるので今日を選ばせてもらいました!」
「そうか……良いね、この感じ!じゃあ早速始めようか、ついて来て!」
「分かりました!」
僕はカインさんの後について行く。サリアとレルも僕の隣に立ち、一緒に来てくれた。
「カインは強いっす。油断だけはしないようにっすよ?」
「うん、分かってるよ!」
◇◇◇
辿り着いたのは訓練場。見渡すと多くの人が武器や魔法を使う練習をしていた。カインさんも周りを見渡し、大声で皆に話しかけた。
「皆おはよう!今から俺とティム君の試合を行うから、興味のある人は見学に来てくれ!」
「おお!行く行く!」
「私も見たいわ!期待の冒険者さんよ!」
「早く皆で見ようぜ!」
それから段々と人が集まり、気づけば周りは観客で囲まれていた。それを確認したカインさんは、腰から剣を抜き、僕に相対した。僕は魔導カメラにプロペラを付けて、空に飛ばす。これで映像もバッチリだ!
「さあティム君、そろそろ始めよう!何か質問したい事は無いかな?」
「はい。ルールを教えてください!」
「……そうだね、昨日言ってなかったよ……。試合は俺が一人、ティム君はパートナーとのツーマンセル。どちらかが降参するか、外からストップが入ったら終了。それで良いかな?」
「大丈夫です!……さあ、行こうレル!」
「わん!」
僕はレルと一緒に一歩前へ。さあ、勝負だ!
「では……君の力を見せてもらおう!試合開始だ!」
カインさんが試合開始の合図をした瞬間、僕の目の前から彼の姿が消えていた。僕は腰から短剣を取り出して辺りを警戒する。
「気配を感じない……どこから来るんだ!?」
「ここさ!まずは先制攻撃だ!」
「っ!」
僕は短剣でカインさんの斬撃を受け止める。でも、受けた短剣は激しく火花を起こし爆発、すぐに壊れてしまった。
「凄い、何てパワーだ!」
「今感心してもらっては困るよ。まだ始まったばかりだからね!」
再びカインさんが剣を振る。でも、レルがブレードを持って飛び込んできて、その攻撃は防がれた。
「わん!わううー!」
「うん!行きますカインさん!」
僕は短剣をカインさんに投げる。彼はそれを剣で弾くけど、僕は構わず何回も短剣を投げつけた。
「どうしたんだい?短剣ばかりじゃ俺には勝てないよ!」
「分かってます!レル、力を貸して!」
「わん!」
僕はレルの背中をさすろうとする。だけどそこに、カインさんの放つ斬撃が襲い掛かってきた!
「うわっ!?しまった!」
「わん!?わん、わん!」
斬撃は地面を抉り、跡を付けている……あれを受けたら大怪我だ。気をつけないと!
「君はテイマーだから、仲間がいると強くなる。……なら、その子の力を借りられないようにすれば良いのさ!」
やっぱり強い……!でも、僕にだって考えがあるんだ。絶対に勝ってみせる!僕はまた腰から短剣を出して、彼の様子を伺う事にした。
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