少年テイマー、街のリーダーと対面する
「ご馳走さまでした。」
「ご馳走さまっす。やっぱりここの料理はおいしいっすね!」
「どうもどうも。うちの料理は世界一だよ。」
僕達はご飯を食べ終わり、今は余韻を過ごしている。サリアは店主さんとのんびり話しているけど、僕はさっきの光景がずっと気になっていた。
「シャーユがここに……。何かあったのかな?」
「気になってるのか、ティムよ。」
「ギル?……うん。どうしてここに勇者が来るのかなって。他のメンバーは居なかったから、一人で来たみたいだし。」
「そうか。」
シャーユは勇者パーティーのリーダー。なのにどうして一人で……?それが気になっているのを伝えると、ギルもそれに同意してくれた。
「確かに気にはなるな。だが、今は調べようがないから、お前は今を楽しんでおけ!……いや、そうだな。一度あそこに行ってみるか。」
「えっ?それってどこ?」
「なに、気分転換だ!お前に紹介したい奴も居る。サリア、お前はどうする?」
「もちろんあーしも行くっすよ。レルもどうっすか?」
「わん!わん!」
話がとんとん拍子に進んでゆく。今から行く場所ってどこなんだろう?
「よし、決まりっすね!店主さん、お代はここに置いていくっす。また後で来るからよろしくっすよ!」
「あいよ。また後でね。」
「あっ、お金なら僕が出すよ!」
「気にしないで下さいっす。これはあーしからティムへのお祝いなんですから!」
サリアがお金を店主さんに手渡し、再び僕の手をとる。そしてレルも一緒に、ギルの言う場所に向かう事になった。
◇◇◇
「大っきい建物!ここがギルの言ってた所?」
「ああ!早く入るぞ!」
「わん!」
ギルに連れられて入ったのは立派な建物。受付には青い髪のお兄さんと、忙しく働いている職員さん達が目に入った。
「カイン、居るか?我が来てやったぞ!」
「ギル!?今日は何の用事だ?」
受付のお兄さん……カインさんはギルと拳を突き合わせる。この二人は知り合いみたい。僕に紹介したい人って、多分この人なんだ!
「今日はお前に来客だ!ティムを連れて来たぞ!」
「ほう……この子がお前達がいつも言ってるテイマー君かな?」
「ああ!ティムはサリアに匹敵するテイマーだ!実力は我が保証しよう!」
「そうか。始めましてティム君!俺はカイン、この街を仕切ってるんだ。よろしく!」
「は、はい!僕はティムです。よろしくお願いします!」
良かった、優しそうな人だ!この人が街のリーダー、失礼が無いように気をつけないと。
「ハハハ!そんなに固くならないで大丈夫だよ!それでギル、今回は何の用なんだ?」
「ウム。お前の元に来ているクエスト、ティムも受けられるようにして欲しいんだ。」
「クエストを?ここは誰でも受けられるように準備してるから、いつ受けに来ても大丈夫だが……。」
「本当ですか!?」
「ああ!一応ちゃんとした冒険者かを確認するけどね。」
やった……!ここでクエストが受けられるんだ!これでリースさんに迷惑をかけずに済む!
「ありがとうございます!ギルもありがとう!」
「気にするな!我とお前の仲だからな。」
するとカインさんはまじまじと僕の顔を見つめていた。……そうだ、ご飯を食べたばっかりで顔を拭いてない!何か付いてたら恥ずかしいな……。
「しかし興味深い。ギルが推すほどの実力者なら熟練の冒険者だと思っていたが、まさかこの子とはね。」
「強さに年は関係無かろう。ティムは強い、それだけだ。」
「なら……ティム君!どうかな、俺とちょっと勝負してみないか?」
「えっ!?カインさんとですか!?」
「うん!俺も腕には自信があるんだ。ギルが認める冒険者の強さ、それを是非確認させて欲しい。そうしたらクエストを受けられるように手配するよ!」
カインさんとの戦い……やってみよう!そうすればテイマーの理解者がもっと増えるかもしれない!それなら……。
「分かりました!でも、一つ条件を付けてもいいでしょうか?」
「条件?何だい?言ってみてくれ。」
「その戦いの様子、配信してもいいですか!?」
「えっ!?は……配信だって!?」
「あー。ティムは最近配信者を始めたっすよ。カインは昔、凄腕冒険者として名が通っていたから、配信すれば宣伝になるんじゃ無いっすか?」
「サリア。昔って、俺はまだ三十代だぞ?ふむ……。」
カインさんは僕の条件を聞き戸惑っていた。いきなり過ぎたかな……?やっぱり失礼だったかもしれない。
「ご、ごめんなさい!急にこんな事を言ってしまって。」
「いや……面白い!俺の力を公の場に出せば、侵略への抑止力にもなるだろうし是非やってみたい!……しかし配信とは君も大胆だな。いや、先にやろうと言ったのはこちらだ、お互い様かな?」
カインさんはニヤリと笑っていた。配信すれば外に力を示せる!それに僕もテイマーの強さを皆に伝えたい!
「では、準備が出来たら言ってくれ!俺はいつでも大丈夫だからね!……じゃあ俺は今日の仕事を終わらせて来るよ。またな諸君!」
「よ、よろしくお願いします!」
「我も少し手伝ってやるか!お前達は先に帰っていろ!」
「あーい。それじゃお疲れ様っす。」
カインさんは建物の奥に入っていった。よし、僕も早速準備だ!頑張ってクエストを受けられるように、そしてテイマーの凄さを伝えるんだ!
「サリア、僕頑張るよ!カインさんに勝ってみせるから!」
「その意気っす!応援するっすよ!」
「うん!」
「さーて!あーしは配信準備っす!忙しくなるっすよ!」
試合の日が楽しみだなあ!早く準備を済ませないと!
◇◇◇
「それでギル、わざわざ手伝いに来てくれる訳無いよな。何かあるのか?」
「ああ、勇者の事だ。最近ここに来て狼藉を働いているだろう?だが、ここに来るメリットが思い浮かばないのだ。」
「確かに……ここは吹きだまりの街だ。高貴な身分の方が来る所では無いな。」
「何か理由があるのだろう。しばらく部下を借りるぞ、外の見回りは我がやってやる。お前は試合に集中することだ。」
「助かるよ。全く……何を考えているのやら。」
建物の奥の部屋で話しているギルとカイン。二人は勇者の動向に警戒を向けていた……。
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