少年テイマー、新たな街へ
僕はサリアと手を繋ぎながら歩いている。目的地はサリアの行きつけのお店。おいしいご飯が魅力らしいんだ。ラルフさんからもらったお金をちょっと使って、皆と食べようと思ってるんだ!
「それでサリア、その街は後どのくらいで着くの?」
「あー。もうすぐ着くっす。この辺でいいっすかね?」
僕達は草原の真ん中に着いた。ここは村を出てからしばらく歩いた所。するとサリアは手から水晶を取り出した。
「移動にはこれを使うっす。これを使えば一瞬でワープ出来るっすよ!」
「えっ!?そんな物も持ってるの!?サリアってやっぱりすごいなー!」
「そりゃ、あーしが凄いのは分かってるっす!さ、行くっすよ!」
「うん、むきゅ!?」
サリアは僕にギュッと抱きつき、水晶に魔力を込めた。すると周りが輝き出して……目を開けると、そこは知らない街の側の草原だった。
「さて……ここがあーしの紹介したい街っすよ。ギル、一応これを被るっす。変な奴に絡まれたら大変っすからね。」
「フン、ここなら問題無かろう。だが……人間にも不思議な奴がいるものだ。見た目が違うぐらいで迫害するのだからな。」
ギルはローブを被り、鎌状の手に手袋を付ける。確かにこれなら人間にしか見えない。完璧な変装だ!
「それでは入るっすよ。……ティムも一応気をつけてっす。」
「う、うん。」
僕達は街の門をくぐり、お店へ急ぐ。レルは僕の後ろをついて来て居るけど、行き交う人達は特に気にしていないようだった。
「かわいいー!もふもふワンちゃんだー!」
「わん?」
僕が後ろを見ると、男の子がレルに触っている。体を引っ張ったり、背中に乗ったり。……あの子はレルが怖くないのかな?すると女性が近づいてきた。
「あらあら。うちの子がごめんなさいね。」
「あっ、いえ、大丈夫です……。」
「初めての人かしら?ここはストーレの街よ。楽しんでいってね!ほら、帰るわよ!」
「はーい。ワンちゃんまたねー。」
「わん!わん!」
女性は男の子を連れて道を歩いていく。……あれ?あの人……尻尾がある?
「気づいたっすか、ティム。」
「サリア?」
「ここはストーレの街。訳ありだったり、迫害された人達が集まる街っすよ。だから色んな人が居るし、深く事情を聞かれる事もない。王国の街に比べれば気楽でいいっすよ?」
「凄い……ここならスキルとか、種族なんて関係無いって事だね?」
「そういう事っす。さ、あーしのおすすめはこっちっすよ!」
サリアに手を引かれながら歩いていると、そこには小さな料理店があった。
「ごめんくださいっす!今日のおすすめをお願いするっすよ!」
「はい。んじゃ席に座って待っていてね。」
「了解!ティム、こっちに来て下さいっす!」
サリアは店主さんと親しいみたい。軽い会話の後、僕は案内された席に着席する。周りを見渡したけど、人はあまり居ないや。それなら早く食べられるかな?僕達はわくわくしながら料理を待っていた。
「貴様ァ!俺に逆らう気か!?」
「お、お許し下さい!」
料理を待っていると、外から大声が聞こえてきた。もしかしてトラブル!?
「また始まった……ったくしょうが無いっすね。」
「どうするサリア!?ここは助けに行かないと!」
「分かってるっす。店主さん、ここはあーしが行って来るっすから、料理をちゃんと作って下さいっすよ?」
「助かるよ。早く行ってやってくれ。」
「あーい。じゃ行ってきます。」
サリアはのんびりと話しているけど、反対に体は素早く動いていた。料理店の扉をくぐると、そこには一人の男性と……えっ、
あれは……シャーユ!?
「こんな吹きだまりに来てやったのに、礼の一つも言えないのか!?このゴミクズ共め!」
「し、しかし……私達はまだ料金を頂いてないのですが……。」
「黙れ!俺の言う事が聞けないのか!?」
「はいはい、そこまでっすよ。」
「誰だ!?邪魔をする……な……?」
怒鳴っているシャーユに向けられたのは、鋭い鎌。その鎌を握っていたのはサリアだった。
「どーもっす。悪いのはアンタに決まってるでしょうが。お金は出さなくていいんで帰って下さいっす。騒がれると迷惑なんで。」
「こ、このゴミクズ共が!折角来てやっているのだ!むしろ感謝して金を出すのが筋という物だろう!?」
「何でアンタが馬鹿にしてるゴミクズが、お偉い様のアンタの為にお金を出すんすかね。どうしたってそんな余裕は無いっす。アンタの常識を疑うっすよ。」
「こ、この……!」
するとサリアは鎌を首元に、ギリギリ触れそうな距離まで近づける。
「これ以上騒ぐなら容赦しないっすよ。大人しく帰るっす。」
「き、貴様!ただで済むと思うなよ!覚えていろ!」
シャーユが逃げて行った。サリアはそれを見届け鎌をしまう。どうしてあの人がここに来たんだろう?
「あ、ありがとうございます!」
「いいっすよ!困った時はお互い様っす!……お代はこれっすね。受け取って欲しいっす!」
頭を下げている男性にお金を握らせた後、サリアは軽く手を振ってこちらに戻って来た。
「さ、ご飯にするっすよ!店主さん、早く作るっす!」
「もう出来てるよ、はいどうぞ。」
「では、頂きます!」
「い、頂きます!」
僕達の前に出てきたのは大きなピザとシチュー。お肉にトマトにチーズ……見てるとお腹が空いてきた。
「しっかし……ここにも勇者が現れるようになったっすか。困るっすね。」
「あれって間違い無くシャーユだよ……何で……?」
「ええ。その通り。最近やって来て暴力を振るったりお金を奪ったりするんす。あーし達からしてみれば盗賊みたいなもんですよ。」
「そう、なんだね……。」
「これに懲りてくれれば良いんすけどね。じゃ、湿っぽい話は終わり終わり!早く食べるっすよ!」
「うん……頂きます。」
僕達は早速ご飯に手をつける。ピザもシチューもおいしかったけど、僕の頭の中にはさっきの光景……勇者シャーユの姿がずっと残っていた。
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