第四回戦目、開始……終了!
「ラルフさんすごい!本戦を突破しましたよ!」
「へい!リース姉貴の応援のおかげですぜ!しかし兄貴、あれは何ですかね。俺には盾に見えるんですが。」
「モブスケもそう思うか。俺も同感だ、だが平べったいな。」
三回戦目が終わってすぐ。リース、モブロウ、モブスケの三人はラルフ達の合格を喜んでいた。その横では……
「サンドタートルの甲羅に似た模様……タルトの力を更に引き出したんだ、このピンチの中で!流石ティム君の弟子だね!」
「シュリさん?」
「リースさん、ラルフ達は休んでいるみたいですし、ここは次の本戦を楽しみましょう!」
「は、はい!次はマイラさんが出るんです。彼女も私の村に住んでいるんですよ?」
「えっ!?……そ、そうだ。うん!ティム君の配信で一緒に居るのを見ましたから!……リースさん、村の場所ってどの辺りですか?」
「えっ?場所ですか?うーん……」
しばらくの沈黙の後、リースは口を開けた。
「内緒です!」
「えー!?」
そして二人はお互いの顔を見合わせる。
「あっ、シュリさん、さっきよりも楽しそうですね?」
「はい!皆さんと話すとドンドン楽しくなってきます!それで村の」
「二人とも、もうすぐ始まりますぜ!」
「見ようぜ見ようぜ!マイラ姉貴の晴れ舞台だ!」
「「はい!」」
四人はマイラ達の活躍を期待しながら、次の戦いを待つのだった。
◇◇◇
「ふぅ。バラバラのパーツを集めるのは大変ですよ、もう!さて、そろそろ司会を始めなければ。個人的に一番楽しみです!」
一方、ルーはシンマに機械の残骸を届け、今は闘技場に居る。待機している参加者の顔を、うっとりとした表情で見つめていた。
「伝説の冒険者カインさん。ヘルキマイラのマイラさん。元勇者パーティーメンバー、マーチさんとケビンさん。ティム先生のお知り合い、カズハさん!実力者ばかりで……私も参加できれば良かったのに。」
そしてため息をついた後、空を飛んで参加者達の所へと向かっていった。
◇◇◇
「さーて!いよいよ俺の番だ!皆に凄い所を見せてやるぞ!」
「私も楽しみです。強者との戦いは胸が躍りますよ。」
「マイラ、俺に勝てるかな?」
「カインこそ、油断大敵ですよ?」
「どうしたマーチ?不安そうだな。」
「そう見える?まあ……ティムが負けるなんてね。」
「だが俺達の目標は変わらない。優勝して賞金を得る事だ。」
「分かってるわよケビン。賞金で迷惑かけた人達に補償をして、それからティムに、ね。」
「……どうやら時間のようだ。負けるなよ!」
「え!?ま、任せなさい!」
「他の参加者は皆手強いのだろうな。勝てる気がしない。ならこの作戦で行こう。メリットは皆にある筈、後は内容次第か……」
◇◇◇
「それでは皆様!第四回戦を開始しますよー!」
闘技場に降りてきたルー。彼女が説明を始めると、周りの参加者達が一斉に目を向けた。
「これが本戦の最後になります。皆様へのお題は……バトルロイヤルです!二回戦目と同じ様に戦闘を行い、生き残った方々全員が合格になります!」
「またかよー!さっきやっただろー!」
「だがチャンスだ!俺達の強さを見せつけるぞ!」
「制限時間は先程と同じ一時間です。確認が終わったら早速始めますよー!」
ルーは一旦周りを確認する。ほとんどの参加者はやる気充分、戦いの準備は完璧に整っていた。
「皆様問題無さそうですね。それでは……スタートです!」
「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおーーー!!」」」」」」」」」」
ルーが号令を出すと同時に一斉に参加者が動き出し、戦いがスタートするのだった。
「これで良し。後は皆様の戦いを見学しましょう!ある意味一番楽しみだったんですから!」
「待ってくれ皆!私の話を聞いて欲しい!」
「えっ。」
◇◇◇
「待ってくれ皆!私の話を聞いて欲しい!」
「あれは……カズハ?どうしたんだろう一体。」
「一度戦うのをやめてくれ!少しだけで良いんだ。」
「……だそうですよ?カイン、どうしますか?」
「…………そういう事か!マイラも理解しただろ?」
「…………成る程。少し残念ですが、次に進めばもっと良い戦いになるでしょうね。」
四回戦が始まった直後。闘技場の中心から大声をあげたカズハ。それに合わせて何故かカインとマイラは手を挙げた。
「あれは、カインが武器を降ろして手を挙げたぞ!」
「隣の女もだ!どういうつもりなんだ?」
周りがざわつく中、カズハは一言。
「皆聞いてくれ!この第四回戦目……皆で合格しないか?」
「「「「「「「「「「「……えっ?」」」」」」」」」」」
「そう、皆が一切手を出さなければ良いんだ。これはバトルロイヤル、時間まで生き残れば勝利になる。皆で協力すれば次に行けるんだ!」
「おい!そんなの信用出来るか!そう言って不意打ちするつもりじゃないのか!?」
「そうだそうだ!」
「騙そうとしても無駄よ!」
再び周りがざわつく中、カズハは深呼吸をして再び口を開く。
「皆がそう感じるのは当然だ。ほとんどの者が初対面、信用するのは難しいだろうね。でも、さっきまでの戦いを見ただろう?もし戦えば大量脱落は避けられない。それに……」
「「「「「「「それに?」」」」」」」
「私は自分の手の内を明かすのがちょっと……ね。仮にここで誰かが勝ち上がったとしても、見ている者に情報が入る。そうなると次が不利になるんだ。」
「「「「「確かに……!」」」」」
「……上手い事を考えたわね!ケビン、私達も手を挙げるわよ!」
「分かった。ここは乗るとしよう。」
「お、おい!元勇者パーティーの奴らも武器を捨てたぞ!」
「も、もしかして本当に、戦わないつもりなのか?」
元勇者パーティーの二人の動きを見て、参加者達は少しずつ、カズハの言葉に耳を傾け始めた。
「さっきまでの本戦を見た皆なら分かるはずだ!ここを無傷で抜ければ、有利になるのは私達。何もしなくても次に行けるんだ、どれだけ得かは分かるだろう!まあ……」
ここで長い間を取って、更にカズハが一言。
「どうしてもと言うなら、相手になるが……?」
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
落ち着いた、しかし自信に溢れた彼女の言葉を聞いて、参加者達はしばらく考え込む。そして…………
「ほ、本当だな?なら俺は動かないからな。だが手を出したら反撃するぞ!」
「そうか……皆が動かないなら、これは得だぞ、ここの合格は決まったような物だ!」
「なら私も!……ねぇ、折角だから話さない?」
「いいぜ!暇になるんだ、ちょっと時間を使おう!」
緊張していた者達が次々と腰を下ろし、地面に座り込む。武器を降ろし、完全に戦意を無くした彼らは時間一杯まで語り合うのだった。
「ふぅ。上手く行ったかな。」
カズハが汗を拭っていると、そこにカイン達が合流する。
「カズハ!やるじゃないか、この場を丸く収めるなんて!」
「後はこのまま時間が来るのを待つだけですね。お見事です。」
「カイン、マイラ!いや、これは貴方達のおかげだ。感謝しないといけないな。」
「しかし、手の内を明かしたくない、か。良い理由だな!」
「確かに。よく頑張りましたね。」
「は、恥ずかしいな……」
◇◇◇
「自分の手の内を明かしたくない、それは誰だって思う事。ここだけで利点を提示出来たわ。それに[相手をする]って言葉。聞いた参加者は怖いと思った筈。」
「カインとマイラが彼女に乗った。つまりこの二人と戦わなくとも次に行ける。同時に二人が戦いを避ける程の強者だと、印象づけた訳だ。」
「あのカズハって冒険者、肝が据わってるわね。一瞬で思いついたなら大したものよ。」
「油断出来ないな。だが、負けるつもりも無い、だろう?マーチ。」
「ええ!最後に勝つのは私達よ!……まあ今は座りましょう、ケビン。」
◇◇◇
「と、言う訳で皆様……第四回戦は終了になります……。」
そして終了時間になり、暗い顔をしたルーが参加者達の上空に現れる。
「今回は全員合格、ですね……今後の予定を話すので、皆様しばらく待つようにお願いします……それではまた……。」
軽く説明を済ませた後、ルーはフラフラと空を飛んで行った。
「何で司会者が落ち込んでるんだろう?」
「全員残った事が想定外だったのでしょう。そっとしておきましょう。」
カインとマイラが一言呟き、第四回戦はあっさりと終了したのだった。
「間抜け共が。奴は所詮Cランク、ハッタリだと分からないのか?まあ、こちらとしても[手の内を明かしたくない]からな。そろそろ準備に移ろう。……様の為にも。」
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