見習いテイマー、ピンチを切り抜ける!
巨人は再び立ち上がり、俺達を見下ろしていた。関節部分は壊れてるのに、普通に立ち上がったって事かよ!?
「タルト、俺に力を貸してくれ!あの巨人、俺達で倒すぞ!」
「かー!かー!」
「その調子だよラルフ!」
タルトの背中に手を乗せて力を借りる。今度は俺の番だ!
「作戦はどうする?ミーは何をすればいいかな?」
「奴は機械で出来てるんだよな?なら、電撃を当てれば動きは鈍らないか?」
「なるほど!外は頑丈でも中なら……やってみよう!ミーは変身するからここはおねがい!」
ミーは後ろにジャンプして息を整え始めた。変身するまでは俺達が相手だ!
「行くぞ、ブレイブソード!」
魔力を剣に集めて巨人に走り込むんだ、遠くに居たらまた撃たれる!
ウィィィィン。
「腕が!でも避けられるぞ!」
急いで奴の腕を避け、まずは足元に到着。さあどうする、ミーもロットンも、普通にはダメージを与えられなかったんだ!
「まずは一回攻撃だ!喰らえっ!」
ガチン!
「……やっぱり駄目か!」
うん、俺に奴を倒す事は無理だ!考え方を変えよう!
「これを使えば!タルト、引っ張ってくれ!」
「かめー!」
俺が投げたのはロープだ、これをタルトに咥えてもらって、
「走れー!」
足に魔力を込めて走るんだ、いつもより速いぞ!
ウィィィィン。
「当たらないぞ!」
奴の足元をぐるぐると回ってロープを巻き付ける。奴は体を回転させて俺を追うけど、この動きなら何とかなる!
やった、奴の足をロープで丸く縛ったぞ!だけど動く相手だし緩い場所もある、そこは……!
「そろそろ良いかな?タルト、回転してくれ!」
「かめー!」
タルトに頼んで高速回転をしてもらう。タルトの体が少しずつ浮き上がると同時に、巨人の足は少しずつきつく縛られていく。
「後は俺が耐えられるかだ。それっ!」
魔力を足に込めてロープを引っ張る、俺がタルトに負けたら縛れないんだ、何とか耐えるんだ!
もう少し、もう少し……
「来たっ!今だタルト、突っ込めー!」
「かめー!」
ロープで巨人の足を縛り、一気に体がぐらついた、ここで俺とタルトで同時攻撃だ!
「かめーーーー!」
タルトが回転しながら胴体に直撃、後ろへ倒れ込む。
「ここで俺が!」
後は俺が足を狙う。関節を完全に壊せば戦いやすくなる!
「ブレイブソード!」
ロットン達が狙った関節に剣を突き立てると、バチバチと火花が上がる。き、効いてるよな?
ドガァァァァン!
「うわぁぁぁ!」
ば、爆発した!?巨人は……仰向けになったまま立ち上がれない。
「やったぞ!これでミーに繋げられる!」
「かー!かー!」
「ミー、そっちはどうだー!」
「ちょうどいいよ!ミーも手伝ってあげよう!」
急いで巨人から離れてミーに声を掛けると、返事と同時に、俺の横にミーが現れる。もふもふに覆われたミーは俺の頭をポンと叩いた。
「……ミー?」
「頑張ったからほめてあげよう!後はまかせなさい!」
「お、おう。」
「じゃあ行ってくるね!」
あっ消えた。ってもう奴の頭上に!
「ニャァァァァァァ!ライトニングネイル!」
爪を頭に突き立てると、そこから轟音が響く、あちこちに電流が流れ、ミーと巨人の身体がピカッと輝いた。
「動き回ると電気を流せないけど、今なら狙い放題だよ!まだまだー!」
電流を流し続けるミー。それから数十秒位か、巨人は黒焦げになって動かなくなっていた。
「ラルフー、おつかれさまー!」
「ミーもお疲れ様、タルトもありがとうなー!」
「かめー!」
ぺたん。バチッ。
「ありゃ、ラルフ疲れちゃったかな?」
「ああ、もうへとへとだよ。」
タルトと一緒に戦ったから、魔力もほとんど無くなっちゃったよ。でも俺達も、ちゃんと足止めが出来たんだな!
「もう時間だよね?みんなの事をルーに言わないと!」
「そうだな。合格した参加者まで狙うなんてどういう事なんだ?故障とかか?」
「わかんない!でも今は休もう!」
「かー!」
バチッ。
バチッ。
「……なあさっきから何か聞こえないか?」
「バチバチ聞こえるね。何だろう?」
俺達は巨人の方を振り返る。何ともなさそう……
「いや、巨人からだ!」
「えっ!?」
巨人の頭、まだ動いてるのか!?ミーが止めたのに!?
バチッ、バチッ。
「ガタガタ震えてるぞ、まずい!」
「ど、どうしよう?ミー魔力使い切っちゃったよ!?」
「ポーション無いか?お前なら持ってるだろ?」
「じゅ、準備で全部飲んじゃったよ!」
う、嘘だろ……!?
バチッ、バチッ、バチッ。
「音の間隔が短くなってきた。これ爆発するのか?」
「ど、どうしよう!?今は跳ぶのもだめだよ!?」
冗談じゃないぞここまで来てやられるなんて!
「かめー!かめー!」
「タルト!そうか、分かった!」
「ラルフ!?」
俺達はミーの前に立つ。さっき庇ってもらったんだ、今度は俺達が!
バチッ、バチッ、バチッ、バチッ。
「た、タルト、頼む!」
「かめー!」
テイマーはパートナーと協力すれば、凄まじい力を発揮できる。俺達もティム先生達みたいに……あの巨人の爆発くらい、止めてやるぞ!
「タルト、俺と息を合わせてくれ!一緒に防御するんだ!」
「かめー!」
俺は背中に手を乗せて、そっと目を閉じる。魔力を二人同時に合わせれば!
バチッバチッバチッバチッバチッバチッバチッ
「やろうタルト!俺達なら出来るさ!」
「かー!かー!」
それからすぐ。俺達の目の前が爆風に包まれて真っ白になった。その衝撃で俺の手はタルトの背中から離れて……でも、俺何かに触ってるよな。これは一体……?
「爆発するのは頭だけにしてもらうわー。胴体は切り離すわよー。」
スパッ。
「かめー!」
「ラルフ、ラルフ!しっかりして!」
「あらー。頭だけの爆発でこんなに強いのねー。全身が爆発したら大変だったわー。」
「うう。タルト、ミー、それに……レニー!?」
「あらー。おはようラルフー。」
「お、俺は?」
「大丈夫よー。皆ちゃーんと守れたわよー?」
「そ、そうだ!俺タルトから手が離れて……大丈夫だったかタルト?」
「かー!かー!」
「そうか、良かったー!」
出来たんだ……俺達にも出来たんだ!
「ん?じゃあ俺の手は何を握ってるんだ?」
俺は手にしてる物に目を向ける。甲羅の模様の描かれた、頑丈そうな板。ん……
「な、な、何だこりゃぁぁぁぁぁぁ!?」
「か、かめー!?」
「み、皆さーん!こ、これにて試験は終了でーす!」
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