見習いテイマー、巨大ハンマーを突破する!
「出遅れた!急ぐぞタルト!」
「かめー!」
三回戦目がスタートだ、でも俺達完全に遅れちゃったよ。まずはあそこか。
「ここを登ればいいんだな。タルト背中に掴まれ!」
「かー!」
まずはピンク色の壁だ。ここに掛かっている梯子を登るんだ。
「いち、に。いち、にっと!絶対に追いつくぞ!」
…………俺達必死に登ってるけど、直接魔法で浮いたり、ジャンプしてる奴も居るんだろうなあ。でもこれが一番安全だよ。
「そろそろかな。ここを登ったら試験開始だ!」
「かめ!」
ここで最後だ。一番上の手すりに手を掛けて、頭をそっと出す。……皆何やってるんだ?震えてる?
「何よあれ!?」
「こ、これを超えろって言うのか!?」
「……何だろうな。俺達も上に登ってみるか。」
登り切ってから皆と同じ様に前を見る。……俺達より先に行ったのに誰も進んでないのか?
「うわぁぁぁぁ!?」
「…………へ?」
い、いまなんかいた?……ヤバいぼーっとしてた!今絶対何か飛んできただろ!?
「ああああぁぁぁぁ…………」
声がだんだん小さくなって……下か!居た!参加者が地面に!
「この高さから落ちたのか!?一体何にやられたんだ?」
あの人は……大丈夫そうだ、普通に立ち上がってる!良かった!
「ラルフ気をつけろ!こりゃ骨が折れるぞ!」
「ろ、ロットン!」
「あれにやられたんだ、どう突破するかな。」
「あれ?」
と、とりあえず皆が見ている場所をもう一度見てみるか。
「何だあのハンマー!?巨大すぎるだろ!」
まず見えたのは直線に伸びる道。広さ的にはまあ余裕がある。問題は……
「何でハンマーがぶら下がってるんだ?」
「俺が知るか。だがスピードも厄介だな。」
道の上に屋根があって、ぶら下がった丸いハンマーが道に沿うように揺れている。ここを通ったら弾かれるって事か。
「誰かが止めてる間に行ければ……」
「それも手だが消耗が大きすぎるぞ?」
「あ。なら普通にくぐれば!」
「それが出来れば一番良いがな。ま、始まったばかりだ、ここは待機しておこう。」
ロットンのんびりし過ぎだろ……早くゴールまで行かなきゃ行けないのに!
びー。
「何か言ったかロットン?」
「俺は何も話してねぇぞ。」
びー!
「……誰か叫んでるのか?いや、この声はびー君だ!」
俺達の横を通り過ぎたのはびー君!?このまま道に突っ込むつもりだ!
「び?びー。」
「びー君!?あ、危ないぞ戻って来い!」
ハンマーの直前で止まって、動きを見てるのか?にしても対処法があるか?
「び!びー!びー!」
「ほ、本当?」
「……ラルフ、びー君何て言ってるんだ。」
「えっと、攻略法が分かったって言ってるみたいだ。」
「びー!」
びー君?端っこに移動したのか?
「び、び、び、び。」
「タイミングを測ってるのか?でもハンマーの動きは早いぞ?」
「びー!」
びー君は地面スレスレに降りて………動いた場所は壁と床の端にある直角だ!
「びー。」
低空飛行で直角を通るびー君。そうか!あそこ隙間があるんだ!
「びー!びー!」
「ず、ずるいぞ!自分だけ先に行く気か!?」
「魔物の方が有利って事!?なら……」
急に視線が集まったな、って何で皆俺達を見るの…………?
「ラルフ!アンタならこれくらい簡単だろ?何とかしてくれないか!」
「い、いやいや待ってくれ!俺よりもタルトの方が強いんだよ、俺はまだまだで……」
あっ。
「それだ!タルト、良い作戦を思いついたぞ!」
「かめ?」
「ロットンも来てくれ!」
「お、どうやらアイデアが浮かんだようだな!分かった、聞いてやるよ!」
「頼む!まずは俺達が……その後お前が出てくれれば…………」
「おお、良いんじゃないか?その方法なら俺も魔力の消費を減らせるし。」
「決まりだ!早速やろう!」
いいぞいいぞ、良い作戦だ!他の皆はまだ気づいてないみたいだし、俺達見習いテイマーだって出来るんだって見せてやるぞ!
「奴ら何をするつもりなんだ……?」
「注目しておきましょう!あのラルフがやるのよ!」
見られてる……でも悪い気はしないな。
「場所はここでやろう!タルト、力を貸してくれ!」
「かめー!」
「俺はここか。こっちはいつでも良いぜ!」
俺達の場所はハンマーから少し離れた場所だ。何かあると怖いし距離は取らないとな!ロットンは……ハンマーのすぐ近くだ。
「さあタルト、俺の力を存分に使ってくれ!あのハンマーに向けて攻撃だ!」
「かめー!」
俺はタルトに魔力を貸して、力を溜めてもらう。その後は口を大きく開けて、ハンマーに向けるタルトが主役。狙うタイミングはハンマーが上がりきった時だ!
「こっち来て、戻って、こっち来て、戻って……!」
振られたハンマーが後ろに戻って、一番上まで上がった!
「今だタルト!全力でやってくれー!」
「かめー!」
タルトの口から砂のブレスが放たれた!それがハンマーにぶつかり勢いを抑える!
「撃ちまくれタルト!俺達なら出来るぞー!」
「かー!かー!」
それから数回ハンマーに向けてブレスをぶつける俺達。……やっぱりな!ハンマーの勢いが落ちてるぞ!
「ロットンここだ!頼む!」
「ったく、デキる役場職員は辛いねぇ!ほら、これで良いんだろ!?」
ロットンは地面に手をつけて魔力を込める!ここがチャンスだ、上手く決めてくれよ!
「グランドバインド!」
来た、土で出来た腕がハンマーを握って止めた!勢いはあるけど、これでロットンの消耗は結構減ったはずだ!
「少し勢いが残ってるぞ!こりゃキツイか!」
そう言うロットンには焦りの様子は一切無い。まだ余裕を残してるなんてやっぱり凄い奴だ……。
「捉えた!ここで止めるぞ!」
良し!完全にハンマーを止めた!ちょっと地面に近いけど、今なら通り抜けられる!
「ロットン!俺達先に行ってるよ!」
「おうさっさと行け!ここは俺に任せろ!」
さあ先に進もう!タルトと一緒にしゃがんでっと……
「……っておい!?どうなってるんだ!?」
いつの間にか前には参加者がたくさん!待て待て待て、俺達が止めたんだぞ!?
「俺が先だ!」
「私が先よー!」
次々と抜ける参加者達。まさか……抜け方に気づいて押し付けやがったのか!?時間が無いぞ!
「ラルフさん!タルトさんにロットンさんも!」
「考えたのう。じゃが先を越されておるぞ!」
あ、現れたのはサキとリッチ!二人とも心配そうにこっちを見てる……
「ラルフさん大丈夫ですか!?こんな大きなハンマーを……」
「いいから早く行ってくれ!長くは持たないよ!」
「でも……」
「行くぞサキ!ワシ達で邪魔をしてはいかん!」
「は、はい!」
ふ、二人とも行ったな。次は俺達だ。
「くぐれタルトー!」
「かめー!」
急いで向こうに抜ける俺達。後はロットンだけだ!
「ロットンー!大丈夫かー!」
「ああ!パッと見た感じ、残ったのは俺だけみたいだ。じゃ……抜けるか!」
魔法を解除したロットンはすぐにこっちに走る。動き出したハンマーをギリギリで避けて滑り込んだんだ!
「やった、やったなロットン!でも……お前一人なら地面に潜って通れたんじゃないか?」
「こんなカラフルな床、何があるか分かったもんじゃない。魔法ならともかく俺は潜りたくねぇな。」
「そ、それもそうか……っておい!」
皆先に行ってる!早く追いつかないと!
「ロットン、一緒に行くぞ!」
「かめ!」
「ったく、俺まで出遅れるとはな!後で何か奢ってもらうか!」
「わ、悪かったよ!とにかく走れー!」
「おう!」
次は何だ!?まあ、何が来ても俺達で突破してやるさ!
「そうだろ、タルト!」
「かめー!」
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