少年テイマー、次の目的地を決める
[うわああああ!?レルは一度リースさんの所へ帰って、この事を伝えてー!お願いー!]
今映っているのは隠し通路に落ちた所。自分の立ち回りの振り返りにもなるなあ。びー君がボタンを押すのは想定外だったけど……。
「このダンジョン、凄いっすね。魔物のレベルが尋常じゃ無いっす。」
「うむ。普通なら深層、或いは最深部に居るような奴らばかりだ。だが凄いのはここからだ!よく見ておけよ!本当に凄いのだからな!」
「うるさいっす!聞こえないから黙るっす!」
場面は進み、ヘルキマイラとの遭遇。そして……
[ピギャァァァ!?]
「な、何だこりゃ!?こんな魔物見たこと無いぜ!」
「かめ!?かーめー!」
謎の魔物との戦い。もしこの場にびー君が居なかったら、絶対に勝てなかったよね。本当に助かったよ!
そしてダンジョンを脱出して映像が終わる。ギルはうんうんと首を動かしていたけど、サリアとラルフさんは途中から無言になっていた。
「し、信じられない。何だあの化け物、俺達が勝てる相手じゃない……。」
「あーしなら勝てそうっすけど、相当手こずるっすよねー。……ちょっと待つっす。一緒に脱出したヘルキマイラ、何処に行ったっすか?」
「……確かに!あんな災厄レベルの魔物が外に出たら大騒ぎだぞ!先生、ヘルキマイラは何処にいったんだ!?」
やっぱりそう思うよね。僕は二人に事実を教えてあげた。
「二人ともさっき会ってたよ?畑仕事をしている人が居たでしょ?あの人がヘルキマイラなんだ!」
「「………………はあ!?」」
「だろうな。我はすぐ気づいたぞ!」
「かめ!」
驚く二人を落ち着かせて、パソコンをしまう。凄い汗が出ちゃった。僕はタオルで顔を拭きながら、サリアに話しかけた。
「どうだった?僕の初配信!」
「いやー、何か驚く事がたくさんありすぎて、こっちが緊張したっすよ。でも、未知の魔物に勝つなんて、さすがっすね!」
「ありがとう!僕も頑張ったけど、これはびー君とマイラさんのおかげだよ!」
「そうっすね!では改めて、初配信お疲れ様っす!」
僕達が話していると、ラルフさんは荷物をまとめて立ち上がっていた。もう帰るのかな?もう少し居て欲しいな。そう思いながら、僕はラルフさんの元へ。
「ラルフさん、タルト!もう行くんですか?」
「ああ、今回はこれを渡しに来たんだよ!」
「かめ。」
そう言ったラルフさんは、僕の手にゴールド……各地で使える通貨の入った袋をそっと乗せた。
「俺、タルトのおかげでダンジョンの攻略に成功したんだ!ティム先生に教えてもらったから、お礼として稼げた分から少しだけ持って来たんだ。リースちゃんと一緒においしい物を食べてくれよ!」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「俺達は今からダンジョンに挑戦するんだ!もっと頑張るから、先生も頑張ってくれよな!」
「かめー!」
「はい!」
ラルフさんはドアを開けると走って行ってしまった。何だか楽しそう!テイマーとして順調そうで、僕も嬉しくなっちゃったよ!
そして僕が飲み物を片付けていると、サリアから声が掛かった。
「ティム、ちょっとこっちに来て欲しいっす。」
「はーい。どうしたの?」
「今日って暇っすか?もし暇なら話を聞いてもらっていいっすか?」
「分かった!今行くよ!」
僕は椅子に座ってサリアの方を見る。その顔はにこにこと笑っていた。
「嬉しいっすねー!やっぱりティムはあーしより凄いテイマーっすよ!何せあのヘルキマイラを仲間にしてしまうんですからね!」
「あっ、マイラさんは僕の仲間って訳じゃ無いよ?今はフリーなんだ。」
「……ありゃ。早とちりっすかね。てっきりティムのパートナーになったのかと思ったっす。」
サリアは自分の頭をぽんぽんと叩き、机の上の果物を食べていた。
「それでは本題っす!もし今日休みなら、一緒に街に行かないっすか!?お祝いに何か買ってあげるっすよ?」
「本当!?じゃあ行きた……あっ、やっぱりいいかな……。」
「その様子、どうやら門前払いを受けたようだな。」
「ギル……。」
ギルは壁により掛かりながら話に入って来た。
「勇者パーティーの名声と庇護が無くなれば、テイマーとしての悪評もあって、まるで対応してもらえないだろう。サリアも始めはそうだったからな。」
「そうなんだ……。ねえ、二人はテイマーとそのパートナーとして、やっぱり悪く言われたりする?」
「そうっすね……確かに酷い人も多いけど、あーし達の事をちゃんと見てくれる人も居るっすよ。あーしが案内したいのはそんな街!行きつけの良いお店を知ってるっすから、今回はそこに行ってみないっすか?」
「行きつけのお店……うん!行ってみたい!」
僕はサリアの提案に乗る事にした。これからの生活で街に行くのは必須になるはず。サリアと一緒に行動して、見識を深めよう!
「じゃ、早速行くっす!手を取って!」
「うん!」
「さあ、貴様も行くぞ犬っころ!寝てばかりでは主を取られるぞ?」
「わふ!?わんー!わん!」
僕はサリアと手を繋いで、彼女の案内する街へと向かって歩いて行った。
今回も読んで頂き、ありがとうございます。続きが気になる、面白かったと思って頂ければ幸いです。もしよろしければ、ブックマーク、評価を入れて頂ければ嬉しく思います。




