バトルロイヤル、現れた勇者の凶刃
「今目立っているのは、ソードとニールさん、それとアオハ君達だよ。戦いに集中してるから、このまま体力を温存しようね!」
「わふ?……ガゥゥゥ、グガァァ!」
「ど、どうしたのレル!?……この感じ!」
「わん!わん!」
「分かったよ!すぐに立とう!」
僕達は気配を感じてブレードを構えた。数人くらいかな、これなら……待って急に増えた!?
「レル、お願い!」
「わん!わん!」
僕達は一気に後ろに下がる。闘技場の壁側まで更に下がって、迎撃準備をするんだ!
「サハギンさんも!誰か来ます!」
「ギョッ!?ギョッ、ギョッ!」
サハギンさんも立って、一緒に壁を背に。手には槍を持ってるみたい。先端が三本に割れた槍だ。
「見つけたぞティムー!」
「この声……まさか!」
知っている声が聞こえると同時に、目の前に一人。
「……シャーユ!」
「ガゥゥゥ!」
「やっと会えたぜティムゥ!随分楽しそうだなぁ!」
「……僕達は作戦の為に待機中なんだよ。シャーユは?」
「なあティム。もう一度やり直さないか?」
「……えっ?」
い、いきなりシャーユは何を言ってるの?
「俺はお前がここまで凄い奴だなんて知らなかったんだ。お前は実績もコネも、金も持ってるよな。それを俺にくれ、頼む!」
「な、何?どういう事!?」
「お前が戻って来てくれたら、また皆で楽しくやろう!勇者パーティーとして!俺の名誉と地位の為に!」
「……?」
「前から思ってたんだ!お前は最初から凄い奴なんだって!だから俺と来いよ!またこき使ってやるよ!」
「シャ、シャーユ……」
し、支離滅裂だ……言ってる事がめちゃくちゃだよ!
「ティム!命令だ、俺のパーティーに戻れ!そうしなければ始末してやるぞ!」
「ふ……ふざけないでよ!僕達は絶対に戻らないから!」
「何だと!?」
「追放したのはそっちでしょ!そっちで何が起こったって、もう知らないよ!」
「そうか……ならここで消えてもらうぞ!そうすればお前の手柄は全部俺の物だ!……かかれ!」
「「「「おおおおおー!!!」」」」
シャーユの掛け声と同時に、複数の参加者さん達が僕達を取り囲む。この人達は王国の冒険者さん!?
「こいつを始末すれば金が手に入るんだ、全員で殺るぞ!」
「結構可愛いじゃないか。せいぜいかわいがってやるよ!」
……何この人達!?こんな人達に絶対に負けられない!
「レル、力を貸して!」
「わん!」
僕はレルの背中に触って力を借りる。それからブレードを構えて敵を見るんだ!大丈夫、僕達なら出来る!
「レルは向こうをお願い!僕はこっちをやるよ!」
「わん!」
僕は右に、レルは左に走る!まずは敵を分散させて戦いやすくするんだ!
「何っ!?速すぎる!」
「お、おい!奴らどこへ行った!」
「い、居たぞ!さっさと始末しろ!」
この調子だ、もっともっと加速するんだ!
「き、消えた!?」
「おい、ちゃんと見てろ!」
「ど、どこだ?」
よし、一人の視線が完全に外れた!僕はまずその人の後ろに接近だよ!
「な、何!?後ろから!」
「ここだー!」
「うわ、うわぁぁぁ!?」
ブレードを背中に叩き込むと、相手は地面に倒れ込む。それと同時に、こっちに五人来た!?
「死ね!クソガキ!」
「今だ、えいっ!」
ブレードで攻撃をガード、思いっ切り押し込む!よろけた相手の顔にキック、更に空いたお腹に突進だ!
「ギャァァァ!?」
「まだまだ!」
ブレードを地面に置いて短剣を投げる!もちろん短剣には爆薬が付いてるよ!
「雑魚が!そんな攻撃に当たるかよ!」
投げた短剣は地面に突き刺さる。攻撃を避けながら短剣を刺していって……たくさん用意出来た!
「隙あり!もう一本だよ!」
刺さった短剣にもう一本!投げた短剣が当たると火花を散らして……
ドガァァァァン!!
「爆発か!?クソッどうなってるんだ!」
「ま、前が見えない!ギャァァァ!!」
爆風の中、僕はブレードを持ち直して攻撃だ!全員やっつけてやるぞ!
「こ、ここまで強いとは……!」
「配信は嘘じゃ無かったのか……騙された!おい勇者どういうつもりだ!」
「何だと?使えない奴らだ、それでも王国の冒険者か!」
シャーユが連れて来た冒険者達と喧嘩をしている間に、僕はレルと合流だ!残りの人達に向けてブレードを構える!
「行くよレル、合わせて!」
「わん!わん!」
僕はブレードを地面に突き刺して魔力を送り込む。動きを止めるならこれが一番いい!
「行くよレル!ジャンプ!」
「わん!」
「せーのっ!グラウンドブレイク!」
力を込めてブレードをもう一押し!すると地面が揺れ出して亀裂が入る。ここで敵の動きを封じるんだ!
「こ、今度は揺れてるぞ!?」
「あ、足がはまって動けない!おい、誰か助けてくれ!」
「クソがぁぁぁぁ!!!ティムーー!!」
「ガゥゥゥ!」
揺れに合わせてレルがジャンプ、ふらついた参加者さんにブレードで攻撃!次々と倒れていく。僕もブレードを振るんだ、こんな人達に負けるもんか!
「だいたい止まった、後はシャーユだけだよ!レル、同時にお願い!」
「わん!」
「お、おいおい待てよ!?俺達は仲間だろ!?」
もう立っているのはシャーユだけ、僕達はタイミングを合わせて同時にブレードを振る!シャーユは慌てているのかその場から動かない、チャンスだ!
「シャーユ!これで終わりだよ!」
「グガァァ!」
「く、クソックソックソッ!お前なんかに……!」
「ぐあああ!?」
「や、やめてくれー!!」
「え……えっ!?」
ぼ、僕達の前には……王国の冒険者さん!?
「ま、まずい!」
「わふ!?」
僕達はブレードをずらしてギリギリで狙いを逸らした……危ない!冒険者さんの首に当たる所だった!
「シャ……シャーユ!?」
「バーカ!お前の弱点はその甘さだ!」
僕のすぐ側に、しゃがんだシャーユ。その手には黒い剣が握られていた。
「ぼ、防御を」
「死ねェェェェ!」
「わ、わん!」
それに気づいた時にはもう遅かった。一瞬で剣が僕の腹部に突き立てられて……押し込まれた。
「……ガッ!げほっ、げほっ!」
「わふ!?わん!わん!」
「邪魔なんだよクソ犬がぁ!」
「キャウゥゥ!」
「れ、レル!」
「先にお前からだ!」
「や、やめろぉぉぉ!」
「ぐっ!クソっ!」
僕はブレードでシャーユを弾くと、短剣を取り出して投げつける。その短剣は地面に刺さって、激しく光り出した。
「め、目が開けられないだと!?閃光玉か!?」
「レル、今のうちにお願い!」
「わん!」
僕を乗せてレルが走る。まずは距離を取ろう、回復魔法を使える時間を……!
「ギョッ。」
「……え?」
さ、サハギンさん?どうして僕達の前に?
「……ギョッ。」
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