バトルロイヤル、それぞれの戦いと……
「ニールさん!?あの人は何を考えてるの!?皆に狙われちゃうよ!」
「わん!わん!」
「ギョッ。」
僕達は今、闘技場の端で様子見中。ニールさんの声を聞いて他の参加者さんも一斉に武器を抜いた!
「何だお前!俺達だってここまで勝ち抜いてきたんだ、馬鹿にするなよ!」
「どうだかな?他の強い奴らの影でこっそり突破したんじゃねぇの?」
「この……!なら、まずはお前からだ!」
複数の参加者さんが一気に近づく、結構速い、それに背後も取った!
「だぁっ!」
「おお?確かにやるじゃねぇか!」
ニールさんは背後の相手へ向き直り、素早く武器を振る、あの奇妙な剣は一体……
「さあ入れるか!オレのスイッチをな!」
「!」
ニールさんが持ち手を強く握りしめると、刃が音を立てて動き出した!?あの剣、何か仕掛けがあるんだ!
「ぐっ……おおおお!」
「なるほど確かに強いな!やっぱり楽しめそうだ!」
ガリガリと相手の剣を揺らしてる!あれは敵じゃ無くて、武器を狙って攻撃する物なんだ!
ガチン!
「しまった!」
「オラァ、これで終わりだ!」
武器が弾き飛ばされた相手に、魔力を込めたキック!相手は壁まで吹き飛んだ!
「まず一人!次は誰だ?ドンドンかかってこいよ!」
「皆やるぞ!あんな奴に馬鹿にされてたまるか!」
「「「「おおおおーー!!」」」」
他の参加者さんはニールさんに攻撃を始める。それを嬉しそうに捌くニールさん……ただ者じゃない!
「ニールさん、強い……!」
「わふ!」
「う、うん。ここは時間まで生き残ればいいんだよね。ならここで時間を待とう。これも作戦だよ!」
「ギョッ。」
ぼ、僕達はこのまま待機だよ!もし戦いになっても体力があれば有利だもん!
「このまま、このまま。」
「わん!」
「ギョッ。」
…………?
「あっ。」
「ギョッ。」
「ど、どうも……」
「ギョギョッ。」
……この大会は誰でも出場可能なんだよね。よく見ると戦っている参加者さんの中には魔物も混ざっている。皆優勝を目指して頑張ってるんだ!でも、ここは落ち着いて……
「えっと、サハギン、さん?」
「ギョッ。」
背中にヒレを持ち、水かきを体に着けている魔物、サハギン。そのサハギンさんは僕達と同じ様に地面に伏せていた。
「し、静かにお願いします。」
「ギョッ。」
と、とにかく様子見……平常心平常心……。
「わん!わん!」
「レル?」
「わふー!」
「えっ?ソードが!?」
ソードも戦いに参加してるんだ!ちょっと覗ければ……居た!
◇◇◇
「そこですっ!」
「ぐおっ!?」
「甘いっ!」
「キャァァ!?」
「いい調子だ、特訓の成果が出てます!皆さんどこからでも掛かってきて下さい!」
ティムの弟である剣聖、ソード。向かって来る参加者達を次々と斬り伏せ、闘技場を駆け抜ける。すると倒れた相手の姿が一瞬で無くなり、砂埃がそっと舞い上がった。
「こ、これは一体?」
「皆様頑張ってますね!その調子です!」
「貴方はルーさん!?何故ここに?」
「それはもちろん、参加者の皆様の安全確保の為ですよ!気絶した方は私が責任を持って観客席に運んでます!ソードさんも全部峰打ちとは、お見事です!」
「ありがとうございます。それでは、俺は他の人達を探してきます!」
ルーは参加者を抱えて瞬間移動、ソードも次の相手を求めて走って行った。
◇◇◇
「流石ソードだ、他の人達を上手く攻撃してる!でも魔法はまだ使ってないや。」
「わん!」
「消耗が激しくなるからね。ここだ!って場面まで取っておくのかも。」
「ギョッ。」
「あ!あっちはアオハ君とシロメ!相手の視界を上手く避けて攻撃してる!」
「わん!わん!」
◇◇◇
「ほらほらー!僕の身のこなしって軽やかだよね!誰も僕には追いつけないぞ!」
「うけー!」
「痛っ!つついたのはアイツか!おい、降りてこい!」
「うけー?」
一方こちらはアオハとシロメ。ジャンプと飛行を繰り返しながら、アオハは矢、シロメはくちばしで参加者を攻撃していた。
「ドカンと一発!ブレイクアロー!」
アオハが手を構えると、そこから複数の矢が飛び出す。魔力で出来たその矢は地上を攻撃し、砂埃を巻き上げた。
「うけー!」
「行くよシロメ!」
二人は砂埃に隠れ、参加者の背後から攻撃を加える。アオハは相手の至近距離で矢を放ち、シロメは足をくちばしで攻撃。確実に参加者を倒し、また空中に飛び出すのだった。
◇◇◇
「うわぁぁぁ!?」
「ふぅ……まだまだ余裕で戦えるぞ、特訓の成果はしっかりと出てるんだ!」
剣で相手を吹き飛ばすソード。呼吸を整え次の相手を探していると、突然空が暗くなる。
「だ、誰ですか!?」
「いいねいいねぇ!なら次はオレとやり合おうぜ!」
「!」
空中から声が聞こえたソードは素早く飛び退き、視線を動かす。自分が立っていた場所には大型の剣が突き刺さり、その上に一人の男が立っていた。
「あ、貴方はさっきの!」
「そうさ、このオレが、最強宣言をしたニール様だ!お前他の奴らよりも更に強いじゃないか!早速オレと勝負しようぜ!」
「(この人……他の人達よりも格上だ!逃げられそうにない……)なら、やるしか無い!受けて立ちます!」
「せっかくの大舞台だ!お互いに楽しもうぜ!」
「ええ!では先手は貰います!」
ソードはすぐに高速移動でニールに接近。ニールもそれを予測したのか、全く同じタイミングで剣を振る。
「さあこれから」
「させないっ!」
「おお!?」
ソードは自分の剣から手を離し、ニールの腹部に手をかざす。その手には魔力が込められていた。
「メガフレイム!」
「ぐっ!」
ニールは自分の前に剣を刺し炎をガード。前を見るとソードは再び剣を握っていた。
「いいねぇその動き!やはり他の奴らとは違うようだな!」
「競り合いは危険だ、離脱を繰り返して急所を狙う!」
唐突に始まった二人の戦い。お互いに武器を握り、牽制しながら距離を測っていた。
◇◇◇
「わん!わん!」
「うん!確実に勝つ事を考えよう!」
「ギョッ。」
ソードとニールさんが戦い始めた!でも僕達はまだだ、無理に出ていくのは絶対に避けるんだ!
「このまま終わるといいけど……まずは突破を最優先に、ね!」
「わふ!」
「ギョッ。」
「そこか……見つけたぞティム!お前を始末して、手に入れた実績の全てを、勇者である俺の物にしてやるぞ!」
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