試験後半、走るミミックを狙え!
遅くなってしまって申し訳ありません。今回もよろしくお願いします。
「よーし!入れろ入れろー!」
「こっちもやるわよ!」
試験が始まってから早くも三十分。ミミックの攻略法が判明し、冒険者達は素早く行動に移っていた。
「足止めは俺達がやる!力に自信がある奴は着いてきてくれ!」
「ミミッ!」
複数人の冒険者がミミックを囲み、魔法や飛び道具で拘束する。その隙に別の冒険者が捕まえて、口を開いた。
「開けたぞー!早く入れるんだー!」
「「「「おおーー!」」」」
「ミミ。ミミー。」
「何か食べるスピードが落ちてるぞー!早くしたほうが良い!」
「ミミ。」
「また口を閉じちゃったよ!ほらおいしいぞー!」
「ミミ。」
別の場所ではミミックの食べたい物を持ち寄り、次々と食べさせていく。食べ物と引き換えに紙を貰うミミックは、少しづつ動きが鈍くなっていた。
「最初の一匹は遠くに逃げちゃったな、何とか追えるか?」
「追っても駄目だ、時間が無駄になる!だが他のもそろそろ……」
「残ったのは、あの一体よね……。」
クリアした冒険者達はミミック達を観察する。時間が経って口の開きが鈍くなるミミック達、残ったのは…………
「アイツは……手強いぞ。」
「ミミミッ!」
足の生えたミミックは冒険者達を蹴り飛ばしながら、元気に会場を走っていた。
◇◇◇
「買ってきましたカズハさん!アオハ君も出して!」
「うん!早く試験を終わらせちゃおう!」
「ティム、アオハ!ありがとう、でももう良いかな。」
僕達は急いでミミックの欲しい物を買ってきたんだ!でもカズハさんは冷静にミミックを見ていた。何かあったんだね。
「どうしたのカズハ?これを使えば紙を入れられるでしょ?」
「あれを見てくれ。ちょっと難しそうだと思わないかい?」
「あれ?どれ?」
「ミミー。」
アオハ君と一緒にミミックを見ると、ミミックはすやすやと寝息を立てていた。おなかいっぱいになって、眠くなっちゃったんだね。
…………じゃああのミミックには頼めないかな。えっと、他のミミックを探さないと!
「ミミッ!ミミッ!」
……僕達の狙ったミミックは、壁によじ登ってこっちを見下ろしている。
「ミー……。」
ラルフさんの方のミミックも固まって動かない。これは……
「さて、どうしようか。攻撃の威力と力は別物、私では身構えたミミックの口は開けられないかな。」
「ねぇティム。あの三人無理やりこじ開けるのって、残り時間で行けるかな?」
「結構きついと思う。皆必死に閉じると思うし、さっきみたいな不意打ちももう効かないよ!」
「ひっくり返った子を二人がかりで押さえても、すぐ閉じちゃったからね。じゃあどうしよう?」
作戦にカズハさんを入れるのは難しそう、カズハさんは開いたミミックに紙を入れるんだ、自由に動けるように待機してもらって……
「おー。随分クリアした者が出てきたのじゃー!」
「な、何!?ライア!?まだ時間があるのに!」
頭上には再び画面が現れ、ライアの姿が!何を企んでるの?
「さて。その様子を見ると、順調に紙を入れる事が出来ているようじゃな。」
「どう見たらそう見えるのさ!こっちは今困ってる所なんだよ!」
「うけー!」
アオハ君とシロメが猛抗議、それを見たのかライアはふっと笑った。
「ミミック達、だいぶ疲れてるみたいなのじゃ。そろそろ休ませてあげないといけないのじゃ!」
そう言うと、指をパチンと鳴らす。
「「「ミ?」」」
…………えっ!?ミミックが消えちゃった!
「この子達は儂が確保したのじゃ!紙は規定の枚数まで溜まったのじゃー!」
「ええ!?待って待って!それじゃカズハは失敗なの!?」
「ふふふふ!心配無いのじゃ!時間はたくさんあるし、ミミックはまだ居るのじゃー!」
「ど、どこ?どこ!?」
「落ち着けアオハ、あそこだ!」
カズハさんの見ている方向を覗くと、そこには確かにミミックが居た。でも……
「ミミミッ!」
「…………残ったのはあのミミック!?」
そう、残ったのは足の生えたミミック!あちこち動き回って、冒険者さん達を翻弄してるんだ!
「ここまで来れた諸君ならきっと何とかなるのじゃ!不意打ちも交渉も通じぬが、まあ頑張るのじゃ!」
ライアがそう言うと、画面が消えちゃった……
「な、な……」
「「「「「「「「「何とかなるかーー!!??」」」」」」」」」
「ミミミッ!」
一斉に声が響き渡る。それを聞いてミミックは距離を取り、背中を向けた。
「ミミミッ!」
「あっ逃げた!さっきの話を聞いてたんだよ!ミミック逃げる気なんだ!」
「もう迷ってられない、強引に止めるよ!レル力を貸して!」
「わん!わん!」
僕はレルから力を借りて、足に魔力を集める。さっきみたいに高速移動で接近できれば!
「せーのっ!」
「わふー!」
「ミミミッ?」
僕達は全力でダッシュ!でもミミックの方が速い!
「ならこれでどうだー!」
僕は短剣をミミックに投げるけど、宝箱の体にカチンと弾かれて下に落ちちゃった。
「ミミミッ!」
「いいぞ!このタイミングだ!」
「ミミミッ?」
そう、僕の投げた短剣には爆薬が付いている。それもいつもより多く!事前に準備しておいて良かった!
「この位置なら!もう一本!」
僕はもう一本短剣を投げる。目的は落ちた短剣!
「レル!走ってー!」
「わん!わん!」
投げた短剣が当たって、火花が出る。それが爆薬にかかって……
ドカァァァァァァァン!!
「いっけぇぇぇぇーー!」
爆風で一気に接近、これならミミックに追いつける!
僕はブレードに魔力を込めて、ミミックに叩きつける!
「うりゃぁぁぁあ!」
ガチン。
「……えっ?」
「ミミミッ!」
止められた!?宝箱に傷が付いただけで、ダメージになってない!
「ミミミッ!」
「ギャッ!」
「わん!」
蹴られた僕の側にレルが近づき、もふもふで受け止めてくれた。
「ありがとうレルー。でもこのままだとカズハさんが!何か良い方法あるかな?」
「わふー?わふーわんわん!」
「やっぱり!うん、やってみよう!」
ブレードで押すのは駄目だったんだ、ならこれを使おう!
「レル、準備しよう!これならきっと勝てる!」
「わん!わん!」
僕達テイマーの奥義、魔装を使うんだ!ダメージは無くても、ひっくり返せば口を開けるはず!
「魔力を合わせるよ。レル、お願い!魔装展開!」
「わふーわんわん!」
「ティム!少し待ってくれ!」
「え?カズハさん?」
「私は一度向こうに行ってくるよ。君達はここに居てくれ!」
「え、えっ?カズハさん!?」
どうしたんだろう、急に走って行っちゃったよ!
「ティムー!追いついたよ、急に走って行くんだもん!」
「うけー!」
「アオハ君、カズハさんが!」
「分かってるよ。ほらあれを見て!僕達がやるより、もっと確実だと思うよ?」
「あれ?」
…………本当だ。あの二人がやるなら間違い無い!
「僕達は一度待機だよ!今のうちにティムも体を休めて!」
「う、うん。」
僕はレルと一緒に地面に座って、様子を見る事に。この勝負、しっかり見ておかないと!だって……
「おや。私達、他の皆さんから注目されている様ですね。」
「そろそろ俺も動かないとね!マイラ、そっちはどうする?」
「お手並み拝見……では勿体無いですね。ここで私も準備体操をしておきましょう。」
ヘルキマイラのマイラさん、それに元Aランク冒険者である、あのカインさんが動くんだ!絶対に見逃さないぞ!
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