大会スタート!ミミックを捕まえろ!
「ミミッ?」
「ミミミッ!」
「ミミ。」
「ミー……。」
「あっミーとおんなじ名前だ!」
「絶対違うからな!」
冒険者さんが吹き飛ばされ、僕達は宝箱を見る。そこに居たのは……足の生えた宝箱!?
「先生、俺あの魔物見た事無いけどどんな魔物なんだ?」
「は、はい。あの魔物はミミックっていいます。箱に変身して、中に宝物を隠す魔物です。」
「宝物?」
「だいたいはご飯とか宝石とかを隠してますね。普段はダンジョンの奥に居るから、地上に出るのは珍しいです。」
「ミーは何回かあるよ!近づくと逃げちゃうんだよね。」
ミミックは臆病な魔物。宝物を取られないよう、素早く動く事が出来るんだ。そのミミックに紙を入れないといけない……一筋縄ではいかないぞ!
「おー。あっちもそろそろ動くのかな。時間はあるしちょっと観察してくか。」
ロットンさんはのんびり会場を眺めている。その視線の先には、サリアとギル達。二人も状況を見てるみたい。
「ティム君、あの二人ならどう攻略すると思う?」
「ミミックは速いし固い魔物です。サリア達でも上手く攻撃出来るか……」
「他の奴らは……おいおい、さっきの見てなかったのか?」
は、走る参加者の人達!目の前のミミックに向かって一斉に武器を振りかざす!
「捕まえるぞ!逃げられたら厄介だ!」
「数で囲め!早くしろ!」
「待って下さい!大声を出したら!」
「ミミッ?」
僕の叫びは皆に届かない!ミミックは冒険者さんを見て……顔を真っ青にしちゃった!?
「ミミミッ!?ミー!?ミー!」
「「「ミミッ!」」」
「ごふっ!」
足の生えたミミックが冒険者さんを蹴り飛ばし、その後を他のミミックが跳ねる!勢いに乗って会場を爆走だ、これじゃ手を付けられない!
「ヤバいな、こりゃ俺でも骨が折れるぞ……。ミー、ティム君。どうする?」
「まだわかんない。他の参加者はどんな方法で入れるんだろうね。ミーもかんがえよう!」
「わん!わん!」
「……うん!やってみよう!ロットンさん、僕達行ってきます!」
「おう行って来い!ここは勝負の場だからな、方法があるなら早く試した方がいいぞ!俺はもう少し考えるから!」
「はい!レル、一緒にお願い!」
「わふー!」
僕達はミミックの側に行く事にした。でも普通には追えない、誰かが足止めをしてくれれば……
「レル、力を貸して!」
「わん!」
ううん、今はミミックを追うんだ!一人でも捕まえられれば、紙を入れて試験達成だ!
「たあっ!」
魔力を使って加速、僕達は一番後ろのミミックを狙う!
「ミミミッ!?」
「とりゃぁぁぁ!」
ミミックの前方に短剣を投げると、びっくりして一瞬止まる。それから右を向いて跳ねていった。他の三人から離れた、まずはあのミミックだ!
「レル、挟み撃ちにしよう。お願い!」
「わん!」
僕はミミックの後ろについて、レルは勢い良く加速してミミックの前に飛び出した!
「ミミミッ!」
「わふっ!?キャウウン!?」
「あっ、レル!」
レルも吹き飛ばされちゃった……やっぱり追うのは難しいかな……。
「……おいどうする?あんなの捕まえられないぞ?」
「困ったわね。」
「このままじゃ全員失格だぞ!何とかしろよ!」
皆焦りが見える。予想よりも難しいぞ……!
「おーい!ティムー!」
あっ!参加者さんの中から声が聞こえた。この声はアオハ君!そうだ、アオハ君達にも相談してみよう!
「アオハ君ー!今行くよー!」
「ティム、いよいよ大会始まったね!僕達も準備は出来てるよ!」
「うけー。」
アオハ君とシロメと一緒に、休むミミック達を観察中。向こうが疲れるまで追い掛ければ……それだと僕達もヘトヘトだ、何か良い手を!
「そう、僕達は大会の準備は出来てるんだ。でもミミックを捕まえるなんてね。」
「うけー。」
「止めるなら強い攻撃を当てるか、何か気を引ける物を探さないと!ティムは何か知らない?」
「一応宝物をあげれば……でも宝石とか、珍しい道具が好物なんだ。そんなの今は無いよね。」
なら強い攻撃を……それだと動きを止めなきゃ……これじゃ堂々めぐりだ、結局同じ問題が出てくる!
「ならカズハに任せようよ!遠くから狙い撃てば、ミミックも気づかないんじゃない?」
「た、確かに……やってみよう!アオハ君、カズハさんは今どこにいるの?」
「あそこ。」
「あそこ?」
アオハ君の指差す方は、会場の端にある柱。その上に……カズハさん!?
「いきなり攻撃されると困るから、離れた場所に登ったんだよ!あれなら気づかれないよね?」
「うん!タイミングはカズハさんに任せるから!」
「分かった!カズ……静かにしようか。」
カズハさんに向けて、弓を引くジェスチャーをするアオハ君。カズハさんは弓を触っていたけど、こっちに気づいたみたい!軽く頷くとすぐに、弓をミミックに向けた。
「これでいいね?後は怯んだミミックの口を開けて、この紙を入れればいいんだ!シロメ、準備はいい?」
「うけー!」
「僕達もだよ!」
「わん!」
睨み合いを続けるミミックと参加者さん達。僕達は魔力を足に溜めて加速の用意……後はカズハさんのタイミングだ、ここはお願いします!
◇◇◇
「ティム?アオハと合流したのか。ラルフ達と別れたなら、何か考えがあるんだろうね。」
「分かった!カズ……」
「この声はアオハか。結構小さいが、何を言おうとしていたんだ?」
弓の調整は出来た。アイツは何をしようと……あれはジェスチャーだね。
弓を引けという事か。ルールは聞いていたが、参加者同士の戦闘が無く、ミミックを狙い撃つなんてね…………警戒心が強いから、遠くに居る私に頼んだ訳だ。
「他のミミックから一体はぐれているな。奴を狙う!」
弓を引き、魔力を込める。頑丈さは知っている、私も全力で撃つだけだ!
「行くぞアオハ!ブラック……アロー!」
魔力を込めた黒い矢が、一直線にミミックの元へ飛ぶ。今こちらを見ていない!これなら……!
◇◇◇
「来た!あれが当たれば!」
ミミックは周りを順番に警戒してる。こっちを見るまで後少ししかない!
「ミ……ミミミッ!」
こっちを見た!でも矢はすぐそこだ!
「ミミミッ!?」
ガチンと音がして、ミミックがひっくり返った!口を開けたぞ!
「今だよ!走って!」
「うん!」
僕達はパートナーと一緒に走る!倒れたミミックはじたばたしてるけど、まだ平気そう!
「これで決まりだー!」
「うけー!」
アオハ君とシロメがまず紙を入れた!僕達もすぐに紙を放り込む!
「アオハ君、ミミックを押さえるよ!皆のチャンスでもあるんだ!」
「勿論!さあ皆、落ち着い」
「入れるチャンスだ、俺が先だー!」
「どきなさいよ、私が入れるのよー!」
「押すな、ここは」
「ギャッ!?」
「ほわっ!?」
つ、突き飛ばされた!待って、今ミミックを抑えないと!
「ミミミッ…………ミー!」
「「「「「「「「「「あっ。」」」」」」」」」」
「ミミミッ。」
お、起きちゃった……
「アオハ君、カズハさんの紙を入れないと!今度は僕達で止めるよ!作戦考えるから!」
「分かった!カズハー!合流しようー!」
「……もう声を出して良いのか?ならそちらに向かう!待っていてくれー!」
まだ始まったばかり、何が何でも皆の紙を入れて、次の舞台に進んでみせるぞ!
きっと大丈夫、僕達なら出来る、僕達なら出来る!
◇◇◇
「速いな。ティムとアオハ達四人、もう決めてきたぞ。サリア、お前はどうするのだ?」
「ええ。ちゃんと見てたっすよ。今度はあーし達の番っす!ギル、一緒にやるっすよ!」
「遠距離から狙うのか?」
「まさか!正面突破ですよ!」
「先生ずるいぞ!先に入れちゃうなんて!」
「ラルフ、これはティムの友達、カズハの勝ちだね。遠距離射撃、ミーじゃまねできないよー。……ロットン?」
「強引にこじ開けるか……俺ならどうするかな?」
「ティム様凄い!流石です!リッチさんもそう思いませんか?」
「サキ、感心してる場合じゃ無いぞ!ワシらも負けてられんよ!」
「びー!びー!」
「びー君、毒針は刺さらないと思うぞ……」
「早速動いたな、俺も動くとしようか!」
「おや、では私も動くとしましょうか。」
「…………えっと。マイラ、だよね?どうして俺の側に?」
「手合わせしたい冒険者の情報収集の為です。カイン、貴方はサリアの所へは行かないのですか?」
「あの二人は大丈夫だよ!自分の心配が先さ!」
「では私も自分の心配をしましょうか。」
「兄上お見事です!俺も負けられない!何とか隙を見て入れないと……あ、あの二人は?」
「ケビン、行けそう?」
「何とかなるだろう。マーチ、援護は頼むぞ。」
「任せなさい!ティム達には優勝は譲らないわよ!」
「元勇者パーティーの二人……絶対に負けられない!兄上、見ていて下さい!俺はソード、剣聖なんだ!俺なら出来る、俺なら出来る!」
「がぁぁぁぁぁ!!!クソがっ!ティムの奴、また目立ちやがった!ふざけやがって!」
「落ち着いて下さい勇者様。ここは身を潜め、機会を伺うのです。このジャンヌもお供致します!」
「そ、そうだな。このシャーユ様が大会を制して、王国の力を示してやるぜ!」
「おおっ?何とか間に合ったけど、皆張り切ってんねー。俺はもう少し様子見っしょ!」
今回も読んで頂き、ありがとうございます。続きが気になる、面白かったと思って頂ければ幸いです。もしよろしければ、ブックマーク、評価を入れて頂ければ嬉しく思います。




