魔王の思惑と……開幕、闘技大会!
「では、ルールを説明しよう!心して聞くのじゃ!」
ライアの言葉に、僕達は一斉に耳を傾ける。大会の内容は……?
「大会はまず、皆の勝負する舞台を決める所から始めようと思うのじゃ。舞台は幾つか用意してある。皆で選んだ舞台……ここで勝ち上がった者達で戦い続けて、人数を絞っていくのじゃ。最終的には……これは後で考えようかの。」
「それでは皆様、何か質問はありますか?」
ルーがこっちに向けて問いかける。何を聞こうかな……まず舞台を決めるってどういう事だろう?
「は、は」
「はーい!ちょっと気になったら質問するぜ!」
ろ、ロットンさん!?
「はい!どうぞ!」
「まず俺達の戦う舞台、それはどうやって決めるんだ?まさかくじ引きやジャンケンじゃ無いだろう?」
「無論じゃ!これも大会の一部ゆえ、特別な試験を用意してあるのじゃ!ルー、お願いするのじゃ!」
「はい、ただいま!」
ルーがヒュッと姿を消す。上にいる王様達は特に驚いてないみたい、もう準備は出来てるって事?
「お嬢様ー!用意出来ましたー!」
「ご苦労さまなのじゃー!それでは映してくれー!」
「了解でーす!」
ルーの声が、ドームの端っこから聞こえた!な、何が来ても驚かないぞ!かかってこい!
「おい!あれを見ろ!画面が上に出てきたぞ!」
「これは配信かしら?何を見せるつもりなの?」
冒険者さん達が上を見ると、そこにはルーの映像だ。足元には……宝箱?
「皆さんにはまず、これをお配りします!お嬢様、お願いします!」
「聞こえたのじゃー!では、これを受け取るのじゃー!」
「わ、わっ!?」
ライアが頭上に紙をばらまいた!?たくさんの紙が空を飛んで、一気に広がった!
「皆、まずはこれを取るのじゃ!一人一枚、ちゃんと確保するように!」
「せ、先生!早速始まったぞ!?」
「わん!わん!」
「取れた!ラルフさんも早く!」
「お、おう!」
僕達はひらひらと落ちる紙を一枚取る。レルも一枚咥えて、背中のもふもふにそっと隠した。
「レル、それで大丈夫?」
「わん!わん!」
「それなら平気だね!」
周りを見ると皆、紙を拾っている。少し時間が経つと、ライアは再び口を開けた。
「皆拾ったかの?そうしたら名前を書いて、魔力を込めるのじゃ。それでは試験内容は…………」
魔力を?とにかくやっておこう。紙に名前を書いて、魔力を込める。これでいいのかな?
「ルーの持っている宝箱、それにその紙を入れるのじゃ!」
「宝箱?」
冒険者さん達の目は、ルーの側にある宝箱に移る。装飾の違う宝箱が、四つあるんだ。
「この宝箱は今後の舞台を設定する為に必要なのじゃ。宝箱ごとに舞台が違うから、好きな物を選ぶのじゃ。名前が入れられなければ……その人は失格になる!以降は観客として楽しんでもらうのじゃ。」
「…………って事は、ルーと戦うって事!?待て待て勝てるわけ無いだろ!?」
「もう、ラルフは反応が大げさだよー。ミー達が力を合わせれば平気だって!」
「いえ!私は参加しませんよ?今回は運搬係だけやっています。」
画面の向こうからルーが答えた。じゃああの宝箱はどうやって守るの?試験なら、必ず仕掛けがあるよね、トラップ、それとも別に守る人が……
「さて、こんな物かの。固い説明ばかりでも退屈じゃろう。ここにいる皆は準備も万全と思うし、そろそろ始めるのじゃー!」
「待った!ちょっと言いたい事がある!」
ろ、ロットンさん!?また!?
「ふむ。何か気になる事がある、という事じゃな?」
「ああ。今回の予備試験…………随分えげつない事をすると思ってな。」
「え?儂そんなつもりは無いのじゃ。だって適と」
「そう急かすなよ。ここに来るまでに色々考えたんだ。どうしてこんな内容になってるのか。」
そうだ、僕も思ったんだ。試験の中でロットンさんもシュリちゃんも、何かに気づいた様子があった。魔王が考えた試験、やっぱり……!
「この予備試験、規定の日までに会場に到着する。これが内容だったよな。」
「その通りじゃ!」
「魔王であるアンタが提示した能力、それはスケジュール管理と身体能力だ。表向きはな。」
お、表向き?
「ロットン、それってどういう事?」
「ラルフ、それと参加者の皆も。おかしいとは思わなかったか?ここは海の上にある街だ、地続きじゃない。空でも飛べなきゃ……本人の力だけで来るのはめちゃくちゃ難しいんだよ。」
「えっ?だから?」
「お前どうやってここまで来た?」
「船は埋まってたからな……だから、シュリの仲間のワイバーン達に助けてもらったんだ!もう二日経ってるんだよな。あの二人も大会を見学してくのかな?」
「そういう事だ。」
ど、どういう事?
「まともに来るのは厳しいからな。必ず誰かの力を借りる事になる。手段の確保、物資の調達色々な。」
「確かに。俺達もシュリが居なかったら危なかったな。シュリって地竜の国では偉い魔法使い…………おい、まさか……。」
「そう!本当に求められてた能力は……
これまでの冒険者としての実績、それか身体能力だけじゃない高い実力だ!」
………なるほど!そういう事なんだね!
「知らない奴に協力を要請されても、普通は警戒したり断るだろ?でも信頼関係があるなら、力を貸してくれるかもしれない!そしてその信頼関係は、実績で少しずつ積まれる物だ。依頼をクリアした[実績]があれば……!」
「ああ!じゃあ!」
「そう!ここに来る移動手段を用意出来るだけのコネクション、それを頼める位の冒険者としての実績!或いはそんな物必要無いと言えるだけの、圧倒的な強さ!それを試す物だったんだ!」
ぼ、僕達じゃ気づけなかった……ロットンさん凄い!それに、それを仕込んだライアも!
「お嬢様、そこまで考えてたんですか!?私は適当に考えたのかと……流石お嬢様です!」
「えっ?」
「えっ。」
「……そ、そこに気づくとは、大したものじゃ!やはりここに来ただけはある!その通りじゃ!」
「お嬢様?」
「だから俺達はアンタに宣言するぜ!この闘技大会、俺達が主役だ。必ず成功させて……そして優勝してやるさ!そうだろ皆!」
「「「「「「「「「「「おおおおおおおおおーー!」」」」」」」」」」」
ロットンさんが一気に勢いをつけた!これも作戦!?なら僕達も、一層気を引き締めなきゃ!
「では、皆の気合いが乗ってきた所で、大会を開始するのじゃ!心してかかるが良い!」
「……お嬢様、時間は何分にしますか?」
「一時間位で予定してるのじゃ!それでは……」
「闘技大会、スタートじゃー!」
「「「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおーー!」」」」」」」」」」」」」
「俺が先だー!」
「ここは私が先よー!」
一斉に動き出した冒険者さん達。でもここは待った方がいい!ライアが油断出来ないのは改めて分かったし、宝箱が置いてあるだけなんて絶対に変だ!
「この紙を入れればクリアだ!俺が一番乗りだ!」
一人の冒険者さんが、宝箱に手を掛ける。ぐいっと箱を開けて腕を
「ほぎゃっ!?」
「キャッ!?な、何!?」
ぼ、冒険者さんが吹き飛んだ!やっぱり仕掛けがあったん…………
「な、何あれ!?ティム知ってる?」
「え、えっ?」
ミーさんが不思議そうにこっちを見る。だって……
「ミミッ?」
あの宝箱、足が生えてる!?
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