街での観光、予期せぬ再会。そして……
今回久しぶりに、元勇者パーティーのメンバーが登場します。よろしくお願いします。
「むー。」
「にゃぁー。」
「わふー。」
「かー。」
ぎゅーっ。
「あ、暑い。何でこうなったの……?」
「みんな起きて!もう朝になったよー!」
「おはようございますミーさん。レルもおはよう。」
「わん!わん!」
昨日は楽しかったなあ。僕達はたくさんご飯を食べてから、ラルフさんの取ってくれた宿屋に直行!早く寝ることにしたんだ。そして今日は!
「さー街を歩くよ!みんな準備はいい?」
「僕達はいつでも行けます!」
「わん!わん!」
「かー!」
「ではしゅっぱつ……ラルフ?まだ寝てるの?」
「もう少し、後三十分だけ……。」
ラルフさんは枕に抱きついてごろごろと動いている。昨日はずっとボートの運転をしてたから、相当疲れてるんだ。
「ミーさん、ラルフさん疲れてるみたいです。もうちょっと休みましょうか。」
「そうだね。ミーは体を動かすけど、ティムも一緒にどう?」
「はい!早速やりましょう!」
僕達は一度外に出て体をピーンと伸ばす!今日も天気が良いし、散歩にはもってこいの一日だよ!
「おはよう!二人ともありがとな、だいぶスッキリしたよ。」
「おはようラルフ!ではしゅっぱつだー!」
「ラルフさん、お願いします!」
「おう!荷物を持つのは俺に任せてくれ!」
ラルフさんが起きてからはあっという間。手早く食事を済ませて、外の景色を眺めながら歩いている。朝の会場はあんまり人が居なかったから、ご飯はほとんどお肉にしちゃった!おいしくてまだまだ食べられそう!
「やったー!昨日の配信凄い盛り上がってるよー!」
「俺の方もだ!一緒にやると見てくれる人も増えるよな!」
「僕もです!皆で食べると楽しいですよね。」
ご飯と配信の感想を話していると、目の前に小さな屋台が出てきた。あ、ミーさんの目がキラキラっと輝いた。
「見て!お店でお菓子売ってるよ!みんなで食べようよー!」
「お前、今食べ終わったばっかりだろ!もう食べるのか!?」
「うん!ミーのおなかは丈夫なんだよ!行ってくるね!」
ミーさん行っちゃった……僕達はここで待とう。
「ラルフさん。大会はもうすぐですよね。僕だんだんと緊張してきました。」
「先生もか。俺もドキドキが止まらないぜ!でも、今までの冒険で強くなったんだ!やれる所までやってみるよ!」
僕達もそうだ。配信者になってテイマーが凄い事を伝える……僕達の当初の目標。今までの配信でだいぶテイマーの事を知ってもらえた、今回の大会で結果を残せば目標を達成できる!
「はい!やれるだけやってみましょう!目指せ優勝!」
「ああ!目指せ優勝!」
「かめー!」
「グルルル……グガァァ!」
「ぎゃっ!?レルどうした!?」
「レル……あっ!?」
え、レルが急に唸り声を……この感じ、誰か来る!
「レル、力を貸して!」
「わん!」
力を借りてからブレードを手に。一体誰が……この感じ、知ってる感じだ。まさか……!
「もう、早くしないと……あっ。」
「どうした?まだ日はある……あ。」
「………先生、あの二人って。」
「……はい。」
僕達の前に現れたのは……
「マーチ、ケビン……」
かつて同じ勇者パーティーに所属していた二人。魔法使いのマーチ、武闘家のケビンだった。
「みんなー。買ってきたよーってあれ?」
スッ。
「……あの二人、ティムの元仲間だよね。ちょっと観察してみよう。」
「な、何でここに二人が?」
一瞬ビクッと体が動いた。で、でも大丈夫。僕達は強いんだ、凄いんだ!自信を持て、僕達なら大丈夫!
「あ、アンタも来てたのね。その……。」
「ティム。俺達も出るのさ、この闘技大会にな。」
「ふ、二人も出るの?シャーユ」
僕はシャーユの名前を出した時、王国会議のシャーユが言った言葉を思い出した。
「そっか……二人も勇者パーティーを抜けたんだね。」
「ええ。今は謝罪行脚中よ。あちこちを回って依頼をこなしながら、迷惑をかけた人達に謝ってるのよ。」
「勇者パーティーの時、俺達は本当にどうしようも無かったんだな。旅を始めてから改めて感じている。自分を律していたお前は立派だった、今になって痛感してるよ。」
「本当よね。」
見た感じ、二人とも以前とはまるで違う。どこか顔が穏やかになってるっていうか、前よりも落ち着いてるみたい……。
「今回ここに来たのは、莫大な報酬の為。壊した物や取り上げた物を弁償する為に、お金が必要なのよ。」
「それと自分を鍛える為だ。以前お前と魔王の戦いを見て、そしてお前の配信も見て、このままじゃ駄目だと思った。修行も兼ねて出る事にしたんだ。」
「…………。」
どうしよう、言葉が出てこない。二人とも、シャーユの悪事には関わってないんだよね。それでも……。
「グルルル……。」
「そうよねレル。私達それだけの事をしてたのよね。……ごめんなさい。」
「俺達はもう行く、お前も頑張れよ。……本当にすまなかったな。」
「う、うん。」
ふーっと息を吸って、僕は二人をじっと見た。やっぱり雰囲気は変わっている。二人は立ち直ろうとしてるんだ。なら僕が出せる声は……!
「お互い頑張ろうね。でも、優勝は僕達が勝ち取ってみせるよ!」
「………!そうね、私達だって負けないわよ!」
「……マーチと同意見だ!俺達も優勝を狙って行く、お前も勝ち上がって来いよ!」
二人は笑顔になって歩いて行った。今までの事もあるけど……まずは一歩。これで良かったんだよね、きっと。
「先生、大丈夫なのか?あの二人、先生の事を。」
「かー……。」
「わふー……。」
「その、まだもやもやしてますけど……あの二人は変わろうとしてるのが分かったんです。だから、お互いに頑張ろうって言ったんです。僕も負けない……これは宣戦布告です!」
「そっか、流石先生だな!でもライバルはここにも居るぞ!この俺がな!」
「みんな!お菓子買ってきたよー!」
……ミーさんの声だ!買い物終わったんだ!
「はーい!さあ先生、観光の続きだ!」
「はい!」
それから僕達は歩いて、街の中央へ。昨日はあんまり見れなかったけど、カラフルな建物に澄んだ青空、まるで絵画のような綺麗な場所だよ!歩くだけで楽しい気分!
「おおー!おっきいー!」
「ここがこの街の名所か。街のシンボルって奴かな。」
「わん!わん!わふー!」
「かー!かー!」
「かっこいい……。」
そして今現れたのは、大きい塔。周りの建物と比べても圧倒的な高さだ!
「えっと、パンフレットによるとね、夜はここの光が船の案内をしてくれるみたい。灯台って事かな?」
「僕達が見たのはここの光だったんだ。ありがとう!おかげで辿り着けたよ!」
「わん!わん!」
周りにはたくさんの人が居る。観光で来てる人も居るね、塔の周りはとても広い道が輪っかみたいに囲んでいるよ。
「あの塔が中心って事ね、ならここ一周してみようぜ!右から行こう!」
「かめー。」
「ラルフ、ここは左からだよ!」
「わん!」
「右!」
「ひだりにしないと持ち上げるよ!」
「左にしよう。」
僕達はのんびりと散歩を続ける。本当に楽しいな!
気分を切り替えて、ここは思いっ切り息抜きしよう!
◇◇◇
「ここが最上階か。随分登ったな。」
「うん。でもこれがひつようなの。」
「後はここから飛び降りればいい。それで戦力を探るんだな。」
「きっとだれかが助けてくれる。そうしたら、その人のつよさがわかるよね?」
「万が一の時は俺に任せろ。絶対お前に怪我はさせないからな。」
「がんばってね。」
「人は集まって来たな、タイミングは俺が…………誰だ!?」
「ウオォォォォォォォ!!」
ガキン!
「しまった!逃げろ!」
「あ、あぶな」
「ウオォォォォォォォォ!」
グサッ。
「がっ!?うう……だ、だめ!にげて!」
「な……き、貴様ァァァァ!」
ガキン、バシッ、ザクッ…………
(いいぞ、まずは二人、このまま参加者を始末するぞ!優勝は俺達の物だ!」)
(はい、……様!)
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