テイマー一行、竜の助けを受ける!
「がおー!」
「ぐおー。」
「ぐおおー!」
「うわっ!」
現れたワイバーンは二体、ゆっくりとこっちに降りてきた。僕は一度地面に着地して様子を見る事に。でも聞こえた声は三つ、どこかで聞いたような……
「がおー!」
「あっ、ドラゴン君!?」
ワイバーンの上から、小さいドラゴンが降りてきた。あの子は……もしかして!
「やっぱりここに居たんだ!おーい!こっちだよー!」
「あっ、この声前に聞いたぞ!」
「ミーも聞いたよ!きっとあの子だ!」
僕もラルフさん達と同じ感想。ドラゴン君と上から聞こえた声の正体は、間違いなく彼女達だ!
「ティム君ー!久しぶりー!」
「シュリちゃん?どうしてここに!?」
ワイバーンから降りた女の子は……アースラの国の魔法使い、シュリちゃんだ!
「予想通り、やっぱりここで止まってたんだ!そっか、ラルフとミーも一緒なんだね。」
「ま、待ってどういう事?」
シュリちゃんはすーっと息を吸ってから、その理由を教えてくれた。
「あのね、私達女王様から指示を受けて、ここへ向かう資材の手配をやってたの。急だったけど、アースラって自然が豊富でしょ?木材の質には自信があったから、それを運んで船にしたんだよ!」
「なるほどな。魔王や王様達が事前に準備をしてるから、ここへ参加者が集まるって予想出来てたって事か!」
「でも、皆ワイバーンに驚いてたよね?今まではどうやって来たの?」
「それは船だよ!一気に資材を運べるからね!それらが終わったから、私達は一足早く……って言っても、予備試験が始まってからだもんね。ワイバーンに乗って目的地に向かう所だったの。」
胸を張って説明するシュリちゃん。確かに国の偉い人だから、事前に場所を知ってても不思議じゃないね。
「あ!待った!それってフライングだろ!?皆より先に知ってるのはずるいぞ!」
「そうは言っても、事前に用意してるからこそ、皆船に乗れるわけだし……そもそも私は参加しないから、そんなに影響無いと思うよ?」
「そうなんだねー。じゃあ、シュリもミー達と同じで、今から目的地に向かうんだよね?」
「うん!この様子だと、ここに居る人達は皆、場所は分かってるみたいだね。」
ワイバーンが整列して並んでるのを、他の冒険者さん達はじっと見てる。でもシュリちゃんの事は前の配信で皆見てるから、ここで戦闘が起きる事は無いね。安心したよー!
「ティム君達ならここに来ると思ってたんだよ?だからワイバーンを連れてきたわけだしね!」
「シュリちゃん?それってどういう事?」
「フフフフ……。」
シュリちゃん、手で口を隠して笑ってるね。きっと僕達に自慢したい事があるんだ。
「それはね……」
それは……?
「もし皆が良ければ、ワイバーンの力を貸してあげるよ!」
「「「えっ!?」」」
シュリちゃんから出た提案、それは僕たちにとってはまさに渡りに船の内容だった。
「本当!?でも、どうして?」
「それはね……」
シュリちゃんはまた息を吸って、それからこっちをじっと見た。
「ティム君達がアースラで、私達の事を助けてくれたからだよ!この闘技大会が始まるって決まった時から、ティム君達が出るのは分かってたから。だから……もし困っていたら、今度は私が助ける番だって思ったの!」
「シュリちゃん……!」
「もちろんこの子達にもちゃんと許可を取ったよ、でも会場については知らせてないから!ティム君達が案内するんだよ?」
「シュリちゃん、本当にいいの?」
「うん!きっとこの試験はね……ううん、やっぱり何でもない!さあ、どうする?」
今の僕達には魅力的な提案、これは乗るしかない!
「お願いします!力を貸してください!」
「ミーもお願いします!」
「お、俺も!頼む、力を貸してくれ!」
ミーさん、ラルフさんと一緒にお願いすると、シュリちゃんはにっこりと笑ってから、ワイバーンに指示を出していた。
「皆さん、そういう訳ですから、お願いします!」
「ぐおー。」
「ぐおおー!」
「うん!ありがとうございます!ティム君、この子達に乗って!力になってくれるから!」
「ありがとうシュリちゃん!必ず目的地に着いてみせるよ!」
それからすぐに、シュリちゃんは小さくジャンプ。か、体が浮いてる!
「これで良しっと!私は自分で飛んで行くから!待ってるよー!」
「がおー!」
「わん!わん!」
「かめー!」
ドラゴン君はレル達に挨拶して、シュリちゃんの胸の中に入っていった。
「では!さらばだーってあわわ、動いちゃ駄目だよー!?」
「がおー!がおー!」
ふらふらしながら空を飛ぶシュリちゃん……あっ、姿勢が綺麗になった。バランスが取れたんだ。
「良かったー、これで間に合いそうだね!」
「わん!わん!」
「彼女が力を貸してくれるのは、ティムが頑張ったからだね!ありがとうティム!」
「ああ、ありがとう先生!じゃあ、行こうか!って言っても、ワイバーンは二体、俺達は三人か。」
ラルフさんはちょっと考えてから、手をポンと叩く。いい方法が見つかったんだ!
「なら、俺はさっき言ったボートで行くか!ワイバーンに繋いでくれれば、レルとタルトも一緒に乗れるだろ?」
「確かに!二人が乗るとバランスが取れないし……ラルフさん、お願いします!」
「任せてくれ!早速準備だ!」
「ミーも手伝うよ!」
「出来たー!」
ラルフさんがワイバーンの尻尾にロープを繋いで準備完了!僕とミーさんはワイバーンに、ラルフさん達はボートに乗り込んだ!
「先生、こっちは俺に任せてくれ!そっちも気をつけて動いてくれよな!」
「はい!じゃあ……お願いします!」
「ぐおー。」
「これで行けるぞ!しゅっぱーつ!」
「ぐおおー!」
ゆっくりと翼を広げて空を飛ぶワイバーン。彼らの力を借りれば、余裕を持って会場に到着出来る!
「皆進むぞ!俺の後に続けー!」
「わん!わん!」
「かめー!」
「ミー達はラルフの前にいるよ!」
「皆さん!目的地まで、油断しないで行きましょう!」
空に浮いて加速するワイバーン。僕達はしっかり乗って、目的地に向かうんだ!




