閑話 少女テイマー、少年テイマーを想う
今回はサリアとギルの話になります。よろしくお願いします。
「遅いぞサリア、ティムと犬っころの動きは更に速い!」
「ま、まだまだっす!あーしを舐めないでもらいたいっすよ、ギル!」
ストーレの街に着いて数日後。今あーしが取り組んでいるのは高速戦闘の練習。小技で足止めし、大技をぶつける……このメインの戦い方を中心に、練習しなければならないっす!
「[魔技] シャドウサイス!」
「しまった!?」
スピードを上げて鎌をぶつける中、影を刺されて動きを止められた。そしてあーしの首元にはギルの鎌が当てられたっす。
「……少し休むか。あまり急いでも成果は出ないからな。」
「いえ、もう一回勝負っす!闘技大会に向けて練習あるのみっす!」
「やる気があるのは良い事だ。だが休める時は休んでおけ。時間はあるのだからな。」
ギルは鎌をしまい、ストーレの街へ入る。……あーしも一緒に休むっすかね。
「サリア、食事を持ってきたぞ。ここで昼食にしようではないか。」
「ありがとうっす。ここに置いて欲しいっすよ。」
「分かった。後で良い、これに目を通しておいてくれ。」
「あーい。これは?」
「良いクエストを探していたのだ。歯ごたえのある物を選んできた。修行にもなるからな、今の我らには実戦が必要だ。」
「ですね。……ストーレの復興は、もうすぐ終わりっすね。王国で貰ったこれを使えば。」
あーしは王国で貰ったカバンを机に乗せる。中にはたくさんのゴールドが入っているっすよ。
「シュリと言ったな。アースラの魔法使いと言うだけはある。ティム達の配信を改めて見たが、奴は出来るぞ。」
「分かってるっす。今回の件で、彼女以外にも色々見たし、警戒は怠らないようにするっす。」
経験を着実に積んでいるラルフ。スピードとパワーを両立しているミー。カズハは一撃が重いし、アオハは連撃で隙が無い……真っ向からやり合えば苦戦する相手っす。
「負ける気は無いっすけどね。こっちも鍛えてるから、油断しなければ大丈夫っすよ!」
「サキとびー、あの二人もティムと協力すれば手強い。マイラとリッチも居るな……リッチの魔法操作は一流、マイラも我と互角だろう。認めたくは無いがな。」
「他にも強敵はたくさん来るっすよ!さあ、ご飯を食べて、クエストを受けるっす!」
「……了解だ。ならば我は道具を揃えるか。すぐに戻る。」
今はごちゃごちゃ考えるよりも、とにかく特訓!あーしはもーっと強くなって、ティムを超える最強のテイマーになってみせるっす!
「うーん。やっぱりストーレのご飯はおいしいっすねー。手も口も止まらないっすよ!」
今あーしが食べているのはカレーライス!ピリッと辛く、そして野菜が溶け込んだルーが最高っす!コップの水を飲みながら、ギルの持って来た依頼書に目を通す。
「今はお金はあるから、強い魔物が出るクエストを受ける感じっすかね。いや、数の多いクエストを…………いやいや駄目っすねこれじゃ!もうあーしとした事が!」
依頼の先には困っている人達が居る。それを考えずに受けようとするなんて……あーしはまだまだっすね。
「もっとちゃんと考えよう。緊急性のある物を……。」
一人になると色々考える。あーしはテイマーって事で、ティムと同じように偏見も結構貰ってたっすよね……。
でも……依頼が終わって、依頼者が喜んでくれると、とっても嬉しいっす!
今のあーしにはパートナーが居る、認めてくれたこの街の人達も居る。だから平気っす!
◇◇◇
「私の息子達の勇姿を見れるのだ、こんなに嬉しい事はない!」
「流石兄上です!でも俺も強くなりました、兄上には負けませんよ!」
「さーて。じゃあ先生の用事も済んだし、王国会議の配信も終わったな!先生はこれからどうする?」
「は、はい。僕は一度特訓しようと思っています。闘技大会はきっと強い人達が集まる筈です。期間もありますし、今のうちに鍛えようかなと。」
「なら俺とやらないか?俺も特訓考えてるんだよ。一緒にやったらもっと上に行けそうな気がするんだ!」
「それ、ミーも一緒にやっていいかな?三人でやるともっと効率よくなると思うよ!」
「わん!わん」
「びー!びー!」
「ティム様!私、頑張ります!」
◇◇◇
「ティム……。」
同じテイマーのティムと、側に浮かぶ顔。あの子にも、たくさんの友達が出来たんだ。それに、家族も……。
「うらやましいなぁ……」
私には家族なんて居ない。だから、ティムが眩しく見える時がある。同じスキルを持ってるけど……家族と仲が良いのを見てると、本当に嬉しくて、でもちょっと羨ましくて……。
「どうしたサリア?やはり疲れているのか?」
「……ギル?」
あーしは寝てたみたいっすね。ギルの言う通り、疲れが溜まってるっすかね……。
「荷物は揃えた。いつ頃出発するのだ?」
「……ありがとうっす!あーしは何時でも行けるっすよ!これなんかどうですかね?」
「ウム……これならば問題無いな。ならば出るとしよう。終わったら我が奢ってやろうではないか!」
「それは嬉しいっすね。でも急に何でですかね?」
ギルはあーしの前に立って、顔を見てきた。な、何か付いてるっすか?
「お前がティム達を見てる時、何か寂しそうだったからな。家族から絶縁された時を思い出したのだろう?だが心配するな。我も、この街の者達も、皆お前の味方だ!勿論ティム達もだぞ!」
「ギル……。」
「更に強くなって、追い出した奴らを後悔させてやれば良い!さあ、行くぞ!」
荷物を背負い歩くギル。……本当に、ギルがパートナーで良かったっす!
「ティム、私頑張るから。アンタに負けない、最強のテイマーに!必ずなってみせるわよ!」
「何か言ったか?」
「いえ!張り切って行くっすよ!」
気持ちを切り替えっす!闘技大会……必ず勝ってみせるっすよ!
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