閑話 エルフ達と狩人、故郷へ帰って……
今回はアオハとシロメ、カズハのお話になります。第四章の閑話の続きです。よろしくお願いします。
「頑張れシロメ!もうちょっとだよ!」
「うけー。」
「アオハ、下が見えてきたぞ。そろそろ到着だ!」
ティム達と別れてからしばらく経った後。アオハとカズハ、シロメは自分達の故郷に向かっていた。地面の裂け目からそっと下に降り、入り口を探す所である。
「よし着いた!ありがとうシロメ、ジャーキーあげるよ!」
「うけー!うけー!」
「入り口は幾つかあるのは知っているが、本当にここから来たのか?」
「うん!えっと、どの辺りだったかな。ちょっと探してみるね。」
「……私も探すよ。時間がかかると疲れるだろう?」
二人で手分けして地面を調べる。少しすると、アオハが地面を触り、ポンと手を叩いた。
「あ、ここだよ!二人とも来てー!」
「うけー。」
「見つかったか。……何だか緊張するよ、帰るのは久しぶりだからね。」
「大丈夫大丈夫!きっと皆喜ぶよ!」
アオハが魔力を込めると地面が割れ、中から階段が現れる。そこを下り、目的の場所へ向かうのだった。
「ここを降りたら……はい、到着!カズハどう?懐かしい?」
「ああ。本当に、久しぶりだな……。」
地下に広がる建造物、ここが二人の故郷。人間や他の魔物から隠れて暮らすための小さな集落である。
「おーい皆ー!帰ってきたよー!ここだよー!」
「おい!急に声を出すな!まだ心の準備が……!」
「うけー!うけー!」
「シロメ、お前も少し静かにしろ!」
ドタドタドタドタ……
「おっ来たね!」
「くっ、遅かったか……。」
「うけー?」
三人が気配を感じその方向を見ると、そこには土煙が上がっていた。
「ギャオー!」
「シャァァァ!シャァァァ!」
「グガァ!グガァ!」
「ぐう、ぐう!」
「ほら皆来たよ!」
「全くお前は……仕方ない、ここが正念場だ!」
集まった魔物達に向かって、思いっ切り息を吸うカズハ。そして彼らに一言、ある言葉を伝えた。
「皆ただいま!私も帰ってきたよ!」
「リーダーどこかな?皆知ってる?」
「うけー?うけー?」
「ウガァ!」
「ギャオー!」
「あの建物か。食事中なら丁度いい。」
仲間の魔物から案内を受け、リーダーの居場所に向かう三人。そこには小さな民家が建っていた。
「今はここに居るのか。相変わらずだな。」
「リーダーって庶民的だからね。あんまり威張らないし、意見も聞いてくれるし。」
「まとめ役としては不安だが、皆の支持は抜群だからね。それで、もう開けるのか?」
「ただいまリーダー!帰ってきたよー!」
「うけー。」
「お前は私の意見を聞け!……私も入るしかないか!」
「おや?この声は?」
皆で中に入ると、リーダーは食事中。口に付いたシチューを拭いている所だった。
「おおアオハ、シロメ!帰って来たんだな!おかえり!」
「ただいまー!」
「うけー!」
「そちらは……カズハ!?お前も帰ってきたのか!?」
「……ただいま。」
「お、おかえりなさい!さ、疲れただろう、こっちに来なさい。今シチューを持ってこよう!」
リーダーは家の奥に入り、食器を選び始めた。
「それでは頂きます。シロメにはジャーキーを用意したぞ!」
「うけー!」
「いただきまーす!」
「い、頂きます。」
そして現在、アオハ達はリーダーと食事をしている。三人の顔を見て、リーダーはとても嬉しそうにしている。
「うーん、やっぱり家のご飯はおいしい!」
「そうだろう?ところでアオハ、帰ってきたと言う事は……」
「うん!バッチリ!ちゃんとテイマーの事、見てきたよ!」
「どうだった?テイマーとは、仲良くなれそうか?」
「うん。僕テイマーの二人と知り合いになったんだよ。二人ともすっごくいい人なの!二人ともパートナーの事を、大切な友達と思ってるんだ!」
「配信を見てるから、それは分かってるよ。それで、抑止力にはなりそうかな……?」
(抑止力?)
突如出た言葉に、カズハの動きが止まった。
「うん!僕とサリア、それとティム達。もう仲良しなんだよ。配信で僕達の協力、映ってたでしょ?あれを見れば、狙ってくる敵も減るんじゃないかな?」
「おお!お前達を行かせた甲斐があった!これでここも安泰だ!」
「待て、お前達どういう意味だ!?」
「ん、どしたのカズハ……ってわっ!?」
カズハがアオハの胸ぐらを掴み持ち上げる。突然の事で皆動けずにいた。
「ティムは私の友達だ!彼を何かに利用するつもりなのか!」
「ま待ってカズハ、落ち着いてよ!」
「落ち着けるものか!お前が彼らに近づいたのはテイマーだからか!?彼の事を道具か何かだと思っているのか!」
「ち、違うよ!ちょっと降ろして!」
「くっ!」
乱暴にアオハを降ろすカズハ。ホコリを払いながらアオハが立ち上がる。
「あのね、カズハ。ここって小さい集落でしょ?だから周りに脅威が常にあるんだ。元々の目的はカズハが言った通り。テイマーと仲良くなれば、ここが襲われなくなるかなって思ったんだ。テイマーは魔王と引き分けた。そんな強い人が友達なら……」
「お前がそんな奴だとは思わなかったよ。友達を利用するような奴とはな!」
「は、話は最後まで聞いて!始めはそう思ってた。でも、実際にサリアに会って、パートナーのギルに会って、それからティム達にも会ってね……」
カズハは黙って話を聞いている。
「お互いの事を、心の底から信頼してるのが分かったの。まだ会ったばかりだから、何となくだけど。それで思ったんだ……僕、打算じゃなくて、本当に彼女達の友達になりたいって。」
「…………。」
「だから、その事をリーダーに言いたくて帰ってきたんだ。……リーダー、僕から提案したのにごめん!でも僕達、ちゃんと皆と友達になりたいんだ!だから……」
「うけー!うけー!」
「お前……。」
リーダーはスプーンを咥えたまま、二人の話を聞いていた。そして…………
「そうか……分かった!こ、こっちは私達で何とかするから、アオハは自分のやりたいようにやってみなさい!」
「り、リーダー?震えてるよ……。」
「私にとってはここの者は子どものような物だ!こ、子どもを守るのはリーダーの務めだからな、ま任せてくれ!」
「だから震えてるよ……。」
「お前達のような子が、次の世代を担ってくれるんだ。なら、ここは私が守ってみせるぞ!」
「…………。」
「カズハどうした?お前も私が仕切るのは不安か?」
「……配信を見ていたなら分かるだろう?魔王は他の国々との関係を見直すそうだ。魔物の王が関係を見直すんだ、王国はともかく、人間とも仲良くなれるかもしれない。魔物同士なら……もっと早く関係を作れるさ。」
「そ、それでは!」
「私はずっと外で活動していたから……集落の事に私が口を出すのは違うかな。アオハ、急に掴んだりして……ごめんなさい。」
「う、ううん。僕の方こそごめんね、カズハ。友達を利用してるなんて思ったら、普通怒るよね……。」
アオハとカズハは二人で顔を見て、じっとしている。その二人の口にスプーンが当てられた。
「むう?」
「な、何だ!?」
「仲直りできたかな?ならこっちにおいで!皆も話を聞きたがっているぞ!」
「み、皆?」
アオハが外を見ると、窓から魔物達が中を覗いていた。
「ギャオー!」
「シャァァァ!!」
「ぐう!ぐう!」
「ぷー。」
「……ぷっ!」
「……フフッ!」
顔を見合わせていた二人は、同時に笑った。
「うけー!うけー!」
「うん!シロメ、一緒に座ろっか!」
「うけー!」
「なら私も、冷めないうちに頂くとしようか!」
「それがいい!では、二人が外にいる間の事、色々教えてくれ!」
「分かった!色々あったんだよ!まずはサリアと会った時にね……」
「私が先だ!私は旅をしながら冒険者をやっていて、ある日依頼先でティム達に会ったんだよ……」
「うけー!うけ、うけー。」
「うん、うん……!そうかそうか!」
楽しそうに話す三人を、リーダーと仲間達は笑顔で見守っていた。
「おいしかったー!ねえカズハ、特訓は何時からやる?」
「勿論明日からだ。しばらくは近場の依頼を受けながら地上で特訓をする。お前もやるだろう?」
「うん!僕に追いつけるかな?」
「うけー!うけー!」
「ああ!必ず追い抜いてやるさ!」
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