魔王の宣言 闘技大会、始動!
「と、闘技大会ですか?」
「その通り!皆で大会を開いて腕試しをするのじゃ!」
宴会の場で大声で宣言した魔王ライア。呆れた顔で見るルーとは別に、王達は興味深そうにライアを眺めていた。
「大会ねぇ……確認するが、どういう趣向でやるんだい?」
「配信を見てる者達なら察しがつくのではないか?あの黒い魔物……豪魔と言ったか。奴らに対抗する為に、今の戦える者達のレベルを確認しておきたいのじゃ。」
「なるほど。国だけでなく、冒険者を始めとした戦力を高めるのも重要という訳ね。」
「勿論タダでとは言わぬ!勝った者には名誉と莫大な報酬を約束しよう!」
ドレイクとジュリアに説明するライア。そこへシンマが割って入る。
「なら参加者の選定はどうするのだ?強さを見るなら、ある程度強い者に来て欲しいのではないか?」
「心配無い、この闘技大会には儂らを除いて誰でも参加出来るのじゃ!」
「……誰でも?それは一体?」
「やる気があれば皆出れるのじゃー!ランクも関係無し!無差別級の大会、本当に誰でも出て良いぞ!」
「おい、怪我人出るんじゃねえかそれ!?本当にそれで大丈夫か?」
「それも大丈夫じゃ。対策は既に考えてある、中身は当日のお楽しみじゃ!とにかく命の危険は無い、これは魔王の名において保証しよう!」
自信満々に語るライア。そして魔導カメラが配信している事を確認して、ドレイクの側へ瞬間移動した。
「な、いきなり何だ!?」
「静かにするのじゃ。これはお主だけに言うのじゃが……ここでお主の国の戦士が名を上げれば、圧倒的な戦力をアピール出来るのじゃ。他よりも優れている箇所を見せる、これはいいメリットじゃろう?」
「ま、まあな。アタシも許可した訳だし……思い切ってやってみるか。」
「では、ちょっと待つのじゃ!」
そして再び瞬間移動。今度はシンマの側に移動した。
「ん、何かな魔王よ。」
「静かにするのじゃ。これはお主だけに言うのじゃが……お主達、色々な兵器持ってるじゃろ?他には無いそれをアピールすれば、お主の国の商売に役立つと思うのじゃ。参加者に使って貰って、皆に自慢してやるのじゃ!」
「確かに……良いではないか。我らとしても力を示せる、実に良い考えだ!」
「そうじゃろう!参加待ってるのじゃ!」
そしてライアはまた瞬間移動。最後はジュリアの側に移動した。
「……何?」
「静かにするのじゃ。これはお主だけに言うのじゃが……以前のティム先生の配信で、国のレベルを見せた訳じゃし……
今回は実力を見せると同時に、特産の物を売ってみてはどうかな?大会は何日もかけて行う予定じゃし、国全体の力をドーンと見せつけてやるのじゃ!」
「……確かにメリットがあるわね。良いわ、こっちには薬草に果物、武器だってある。色々売れれば国も潤うからね、準備しておくわ。」
「やったのじゃ!感謝するのじゃ!では!」
今度は走って宴会の場に戻り、自分の席に座ってから口を開ける。
「もう一度許可を取ったのじゃ!これで安心、安全な闘技大会が開けるのじゃ!」
「ま、待って下さい!やるにしても場所がまだ決まってません!」
「ルー、儂はそれも考えてある。心配無いのじゃ!それに……」
更にライアはシャーユの下へ移動し、言葉を続けた。
「何だ魔王!?俺に用があるのか!?」
「勿論グランド王国も参加出来るのじゃ!勇者よ、お主の実力、世界に示したいじゃろう!」
「お、俺の力を?」
「ここには恐らく実力者が集まるじゃろう……お主最強の勇者なのじゃ。それを倒して名を上げれば、勇者の名誉を高める事も出来るぞ?」
「そうか!魔王のくせに良く思いついたな、褒めてやろう!俺は世界で一番強いんだ、それを証明してやろう!」
ライアは苦笑いしながら席に戻る。そして……
「では、大会の開催は今から一ヶ月後!開催場所は後々伝えるのじゃー!参加を待っているのじゃ!では……続きを飲むのじゃー!」
「もー!閉会宣言!まだしてないじゃないですかー!?」
「そうじゃった!?それでは閉会宣言としようかの!皆の者、これにて会議は終了じゃ。長く付き合わせてしまって悪かったのじゃ!しばらくはゆっくりと過ごしながら、今後について考えてくれ!」
最後にライアはお辞儀をして、閉会の宣言を終えた。その後は今と同じように、皆で宴会に興じるのだった。
「お、おのれ、儂の許可も無く会議を終わらせおって!そもそもこれは王国の会議だぞ!」
「いけません王様、ここは抑えて下さい!下手に口を出すと、王国の悪事への追及が始まるかもしれません!」
「む、むう……まあ良い、闘技大会と言ったな……ジャンヌ、お前も参加しろ!王国の力を見せつけてやるのだ!シャーユもだぞ!」
「おう!全員皆殺しにして、王国の強さを教えてやるぜ!」
「我らに歯向かうとどうなるか、教えてやりましょう!」
ワインを飲みながら、グランド王国の王、ジャンヌ、シャーユの三人は笑っていた。
(これは全部配信されていると言うのに、気づいてないのかのう……まあ、それも奴らの選択じゃ、儂は知らぬぞ。)
ライアはその様子をそっと見て、グラスに視線を戻すのだった。
「さて、私はちょっと席を外そうかしら?」
「何だ、せっかく楽しんでるのに帰っちまうのか?」
「まだ帰らないわよ。私が居なくても国は回るからね。ちょっと挨拶しておきたい人が居るのよ。……そうだ、今回の冒険者への報酬。貴方はどうするつもり?」
何か思いついたのか、ジュリアがグランド王国の王へ質問する。一方の王は怒った表情で彼女を睨みつけた。
「報酬?そんな物出すわけ無いだろう!冒険者共が勝手に国を守っただけだ!我々は知らぬ。」
「そう……。」
ジュリアはしばらく沈黙し……
「フフッ、アハハハハハハハ!」
「お前どうした!?普段そんな笑い方しないだろ!」
腹を抱えて笑い出す。それにドレイクがツッコミを入れていた。
「フフッ、可笑しくて笑っちゃうわよ!あんな強い子達をみすみす逃すなんてね!なら報酬は私が全額出すわ、思いっきり色をつけてね!個人的な恩もあるし、ここで唾をつけるのも悪くないわ!」
ジュリアの言葉を聞いて、しばらく考え事を始める者達。そしてすぐ、ドレイクとシンマがハッとした表情で口を開けた。
「あっ!?こ、ここはアタシが直接お礼を渡すぞ!この会議が潰れれば大変な事になったからな!直接お礼を言わねぇと!」
「いや、ここは私が行かねばなるまい!彼らの様な有望株、ちゃんと顔を見ておきたい!実に素晴らしい冒険者達だ!」
王達が言い争いをしている中、グランド王国の王もジュリアの言葉の意味を理解し、慌てていた。
「き、貴様達!金で釣ろうとは汚い奴らだ!それでも一国を治める王なのか!?」
「助けてくれた相手に感謝もしないような人達に言われたくないわね。……じゃあ失礼!また後で来るわ!」
ジュリアが駆け足で会議室を後にする。それを見た剣聖達も席を立った。
「ではソード、私達も行こう!会議は終わったのだ!強くなったティムの姿、この目に焼きつけようではないか!」
「はい父上!兄上はこちらです!」
剣聖ガイアとソードの二人も会議室を出て、ティムの下へと走って行った。
◇◇◇
闘技大会の配信が終わってから……ラルフさん達は体をぷるぷると震わせていた。
「発表終わったな……闘技大会、面白そうじゃないか!俺、今どのくらい強いのか確認してみたい!やろうぜ皆!」
「いいねー!配信のネタになりそうだし、ミーがもーっと有名になるチャンスだよ!」
「楽しみっすね。ここでテイマーの力を更に見せてあげるっすよ!ね、ティム!」
「うん!レル、楽しみだね!」
「わん!わん!」
僕達も次の目標が決まったぞ!この闘技大会、必ず優勝するんだ!
「時間は結構あるから、まずは特訓しないと!レル、頑張ろう!」
「わん!わん!」
「……………!」
「ラルフ、今何か言ったっすか?」
「え?何にも言ってないけど、何か聞こえたのか?」
「…………むー!」
「ほら聞こえたっす。」
本当だ。目を閉じて集中すると……聞こえてきた。この声は!
「ここです父上!兄上はここに居ます!」
「うおおおお!ティムー!私が来たぞ!久しぶりに顔を見せてくれー!」
やっぱり!ソードと……ち、父上!父上が来てくれたんだ!
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