少年テイマー、地上に帰還する
「う、うーん……。」
「起きましたか、人の子よ。」
「うー。……あっ。」
目を覚ました時、僕はヘルキマイラさんの胴体に寄りかかっていた。尻尾が僕の体の上に乗せられ、心地よいリズムでぺちぺちと音を出している。
「びー!びー!」
「わっ、くすぐったいよー!」
ポイズンビーは僕の服に入り込み、もぞもぞと動く。そして顔だけ上に出して、こっちを覗いてきた。
「ありがとう!君のおかげで勝てたんだよ!」
「びー!」
この子は服の中で羽をパタパタ動かしている。仲間が無事で嬉しそう!これで一件落着かな?
「ありがとうございます。私も助けてもらいましたね。」
「あっ、いえ、こちらこそありがとうございます。」
「フフフ。貴方は優しい方ですね。」
尻尾で僕の頭を撫でるヘルキマイラさん。するとヘルキマイラさんは立ち上がり、尻尾で僕をペチンと叩いた。
「では、ここから脱出しましょう。背中に乗って下さい。」
「あっ、ちょっと待って下さい!」
僕はリュックから袋を取り出して、魔物の跡へ。そこに落ちている黒い玉を入れて、ヘルキマイラさんの尻尾に掴まった。あとは魔導カメラをリュックにしまわないと。巣が入ってるけど、別のポケットに入れれば平気だよね?
「それを外に持って行くのですか?」
「はい!僕達の戦利品ですし、外で調べれば何か分かるかもしれません。」
「分かりました、それでは行きましょう。しっかりと掴まって!」
尻尾で僕を背中に移動させてくれたヘルキマイラさんは、壊れた扉をくぐって、僕達が落ちてきた水路に進む。
「さあ、地上に帰りましょう!」
すると翼を広げて、一気に空を飛ぶ。……ああああああ!?急にスピード上げないでー!?しっかり掴まないと!落ちる、落ちちゃうよー!?
◇◇◇
猛スピードで地上に上がる僕達。空中を進むと、頭上には僕達の落ちた床がある。細い光が射し込んでいるから間違い無い!
「しっかり掴まってますね?衝撃がありますから、気をつけて!」
ヘルキマイラさんはそんな事を気にせず突っ込んでゆく。すると床が割れ、僕達はダンジョンの通路に戻る事が出来た!
「ここで間違いありませんね?」
「はい!よかったー。戻って来れたよ!」
「びー!」
外に出ると、辺りは真っ暗だ。早く帰らないと、レルとリースさんが心配してるよね……。
「貴方達は怪我をしてますから、私が運びましょう。地上の家まで案内して下さい。」
「でも、貴方も怪我をしてますよ!ここは降りたほうがいいですよね。」
「いえ……ただ折角地上に戻れたのです。貴方達の家で、少し休息を取らせてもらえませんか?」
「あっ。分かりました!それではこちらになります!」
とにかく一度村に戻ろう。早く二人に顔を見せないと!
◇◇◇
僕達が森をくぐって村に近づくと、遠くから小さい声が聞こえてきた。この声はリースさんだ!森を出ると、彼女はレルと一緒に外で待っていてくれていた。
「レルちゃん、本当にティムさん達を助けに行かなくていいのかな……?」
「わん!わん!」
心配そうに村の入り口に出ているリースさん。レルは
横に座って僕達の帰りを待っている。
「でも、……あっ、あれって!」
「わふ?わん!わん!」
僕達に気づいたレルは尻尾を振りながらこちらに向かって来る。僕達も村に近づき、遂にレルと再会できた!
「わん!わん!」
「ただいまレルー!今回もありがとうね!」
「わふー!」
僕はレルを抱きしめ喜んでいた。後でいろいろ話をするんだ!僕達ですごい敵をやっつけたんだ、それを教えてあげたいな!
「あ、あわわ……。」
「リースさん、どうしました?」
「あ、あの……この魔物はいったい……?」
リースさんの目の前にはヘルキマイラさん……しまった説明しないと!こっちが最優先だった!
「は、はい!僕達はヘルキマイラさんのおかげで助かったんです。」
「へ……ヘルキマイラ!?」
リースさんは腰を抜かしてしまい、慌てながら後ろに後ずさる。
「あ……すみません……。噂で聞いたくらいで、実物は初めて見たもので……。」
「気にしないで下さい。どうです?予想された物とは違いましたか?」
「しゃ、喋った!?」
「リースさん、続きはお家の中にしましょう。色々お話があるんです!」
リースさんは少し混乱してるみたい。一度落ち着いて話を出来るように、僕達はリースさんの家に向かうことにした。
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