集まる増援、黒きドラゴンの咆哮!
「もうすぐ到着しますね。急がなければ王国が危ない!」
空を飛び王国に向かうマイラ。ティム達の下を離れてから、全力で移動している。
「リッチの予想通りなら、王国にも味方が居るはず。協力すればきっと倒せるはずです。……おや、あれは?」
そのマイラの向かう先、そこに人の姿が映る。見つけたのは獣の耳と尻尾を持った少女だった。
「もしもし!貴方も王国に向かっているのですか!」
「え?うん!ミーも、ってあなた誰!?」
マイラが見つけた少女は、ティムとラルフの二人と一緒に配信していた少女、ミーだった。
「貴方は!そうか、この姿では分かりませんよね。距離的にも丁度いい。ここで姿を変えましょうか。」
マイラが地面に着地し、魔物から人の姿へ。それを見たミーは、目をパチパチとさせていた。
「あ!」
「分かりましたか?」
「うん!マイラだよね、ティムの村で一度会ったもんね!」
「はい。この方向、もしかしてミーも?」
「そうだよ!ティムが配信で言ってたでしょ?王国にドラゴンが近づいてるって。ラルフも一緒だったし、ミーも協力するために来たんだよ!」
マイラはホッと一息ついて、ミーを見た。
「ありがとうございます。今は私一人です。ティム達は後で合流します。」
「へー……マイラの方が速いから、先に来たって事だね!じゃあ、皆はすぐそこに来てるんだ!」
「ええ。彼らが追いつくまで敵を食い止める事が私の仕事です。一緒にやりませんか?」
「もちろん!レアな配信も撮れるからね!」
二人は軽く拳を合わせると、王国に向けて走り出した。
「これでどうだ!!」
「ギャァァァ!ギャァァァ!!?」
「グワッ!?」
「ガウウ!?」
カインの剣の一振りで、多くの魔物達が吹き飛び倒れていく。彼が門を見ると、足元が滑り、地面に倒れ込むドラゴンの姿が映った。
「いい調子だね!これならサリア達が来るまで何とかなりそうだ!そらっ!」
また剣を一振り、そして敵が飛ぶ。カインは魔物の大群を余裕を持って迎え撃つ。
「にしても数が多いな。少し下がってアーマとラディに合流……駄目だな。二人を巻き込んだら危ない!ここで敵を減らしていこう!」
更に押し寄せる魔物の大群。カインはそこに剣を向け、突進していった。
「はぁ、はぁ……。」
「ゴギャァァァァ!!!」
「疲れてきました……斬っても燃やしても、まるで効き目が無い!」
「ダメージが入るのは毒を仕掛けた後、ですね……。」
「も、もう無理……ポーションがあっても、体力が追いつかないわよ。」
ソードとシュリはドラゴンの前に立つが、疲労が溜まっているのか息が上がっている。ウィーはその場に座ってしまい、動けなくなっていた。
「あと少しだ、そうすれば兄上が来てくれる!皆さん、もう少し力を貸してください!」
「勿論です!必ず奴を倒しましょう!」
「お、おー!でも、ちょっと休ませて!」
「ならここは私がやろう!三人は休んでくれ!」
「ゴギャァァァァ??!!」
「えっ?」
「貴方は!」
三人の頭上を誰かが飛び越え、ドラゴンを斬りつける。ドラゴンの咆哮が響く中現れたのはフェイクだった。
「武器は色々持って来た。これで少しは持つだろう!」
剣を鞘に収め、次に出したのは小型のマシンガン。轟音とともに弾丸がドラゴンに襲いかかる。
「ゴギャァァァァ!???ギャァァァ!!!」
「今のうちに後ろへ下がるんだ!ポーションは新しく持って来た!」
「ありがとうございます!シュリさん、ウィーさん!」
「お願いします!フェイクさん!」
三人を退避させ、マシンガンを撃ち続けるフェイク。彼はだんだんとドラゴンへ接近する。
「そろそろ弾切れか。次はこれだ!」
マシンガンをドラゴンの後ろに投げ、次に出したのはバズーカ砲。空中に飛び上がり、背後を取ると引き金を引いた。
「ゴギャァァァァ!!!ゴギャァァァァ!!」
「こっちを向いたらどうだ?よそ見している暇は無いだろう!」
「ゴギャァァァァ!!????!」
門の外へ降りながらバズーカを連射。地面に着くとすぐに、落としたマシンガンに弾を込める。ドラゴンはよろけて、門の外へ歩き出した。
「弾薬はまだあるぞ、全弾持っていけ!」
「お、おいアンタ!気をつけろよ!そのドラゴン、傷がすぐに治っちまうらしいんだ!」
アーマが遠くから忠告する。彼の少し先では、ラディが高速で移動しながら魔物を引きつけていた。
「あれは……なるほど、了解した!」
フェイクは二人の作戦を予測し、あまり近づかないよう位置を決める。
「よし、これなら邪魔にならないだろう。このまま動きを止めてみせる!」
マシンガンを構え、ドラゴンへ発射するフェイク。態勢を崩したのかドラゴンは先程から動けず、彼を睨みつけながら攻撃に耐えていた。
「この調子だ。まずはソード達が復帰するのを待つ。その後は皆で攻撃して、ティム達が来るのを待てばいい。まだ弾はある……撃ち続けるんだ!」
「…………ゴギャ。」
「このままだ……このまま。」
距離を維持して攻撃をするフェイク。だがドラゴンはそれを動かずに耐え続ける。
「ここでもう一度だ!火薬を詰め込んだ弾薬を使う!」
再びバズーカを構え、弾を込めて引き金を引く。だが、この間もドラゴンは動かない。
「……待て、何故動かない?奴は何を考えて……?」
フェイクは自分の位置を確認する。自分とドラゴンは門から離れて、少し進んだ場所。先ではアーマとラディ、更に奥ではカインが戦っている。そして門の中はソード達が奥に退避している。
「皆の距離的に、ここが中心に近い……中心?」
フェイクの予測は、ある場面に行き着いた。
「ティムがアースラのダンジョン……そう、神殿でこれに近い魔物と戦っていた。その時に魔物は衝撃波を出していた。…………まさか中心に来たのは!?」
「…………ゴギャァ。」
ニヤリと笑ったかのような、ドラゴンの声。それを聞いたフェイクは頭で状況を分析する。
「奴はここに私をおびき寄せた!?ソード達から離れて追撃を避けつつ、外で戦う三人にも攻撃が当たる場所……ここを目指していた!よろけた動きは演技だったのか!」
「皆気をつけろ!このドラゴン、大技を」
フェイクが警告を発した時、同じ様にドラゴンも口を開いていた。
「ピギャァァァァァァァァァァ!!!!!!!」
ドラゴンの咆哮。それは地面を抉り冒険者達を襲う。衝撃波が王国の城壁を砕き、魔物を巻き込み広範囲へ広がっていった。
「ピギャァァァァァァァァァァ!!ピギャァァァァァ!??!!」
城壁が砕け、王国の街がドラゴンの視界に入る。それを見て、ドラゴンは一歩ずつ進んで行った。
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