閑話 いざ、王国会議へ
今回はストーレのリーダー、カインとディムの家族の話になります。よろしくお願いします。
「さて、着いたぞ。いよいよ王国かな。はぁ。」
一人の男性がある街から歩き続け、王国の入り口を見る。彼はため息をつきながら門に到着、門番に声をかける。
「すいませーん。王国会議に呼ばれて来ましたー。」
「ん?誰だ一体……お、お前は!」
驚きの声を上げる門番。もっとも、驚くのも当然である。ここに居たのは……
「一応手続きはしておかないとね。ほら、ボディチェックでも何でもすればいいさ!」
ストーレの街のリーダーである、カインその人だったのだから。チェックを通過し門の中へ、すると飾り付けられた街並みが目に入った。
「王が何を考えているかは知らないけれど、もし俺達の居場所を奪うようなら……こっちもやるだけさ。」
「あれは……見て!カインさんよ!超凄腕の冒険者にして、街のリーダーをやってるのよね!」
「だが、奴がやっているのはゴミ共の掃き溜め、ストーレのリーダーだ。奴の実績も名声も、それだけで地に落ちる。」
「本当よね。勿体ないわ……。」
「言いたい放題言ってくれるよ。そうやって他の種族や気に入らない人間を追い出すから、俺が街を作ったんじゃないか。」
周りの声を聞き、苦笑いしながらも足取りは乱れない。会議場所である城に向かって一歩ずつ進んでいった。
そして城に到着。もう一度騎士達から検査を受けた後、城の一室に案内された。
「ここに入れ。会議は二日後だ。全く、貴様のような奴を入れなければならないとは。」
「それは大変だったね。別に俺は何もしないから、安心してよ。」
「当たり前だ。掃き溜めのリーダーなんぞに何か出来る訳が無い。」
そしてカインは部屋に押し込まれ、乱暴に扉を閉められた。
「部屋はちゃんとしてるんだな……この対応俺だからやってるんだよね?他の参加者にやっていたら大問題だぞ?」
自分では無く他の者を心配しながら、彼はベッドに寝転んだ。
「さて、少しのんびりと過ごしますか。そのうち呼ばれるでしょ。疲れてるしちょっと寝よう……」
カインはそう言って、ベッドの上で昼寝を始めるのだった。
◇◇◇
「父上、いよいよですね。」
「ああ。王からの呼び出しとは驚いた。何をするのかは分からないが、早めに来ておいて正解だったな。」
一方、彼らはテイマーであるティムの家族である。父である剣聖のガイアと、同じ剣聖で弟のソード、二人は何人かの部下を連れて王国に顔を出していた。
「最近王国に批判的な意見が出てますよね。それについての対応でしょうか?」
「勇者が絡んでいるようだからな。確かにあの勇者では問題が起きるのも当然だろう。」
「あの男が兄上を……。」
「まあそのおかげで、ティムは配信者として元気にやっているのだ。それは一旦置いておこう。」
ソードは木刀を素振りしながら険しい顔をしている。ガイアは彼をなだめたが、彼の顔もまた険しかった。
「最近黒い霧を纏った魔物が増えている。奴らの対処が議題に上がるかもしれない。ここで情報を集めて、何らかの手を考えたいな。」
「失礼いたします!」
それからガイアが木の陰で考え事を始めてすぐに扉が開き、執事が現れる。
「旦那様!坊ちゃま!おやつの時間ですぞ!今日は我々でクッキーを用意しました!……もしかしてお邪魔でしたか?」
「おお、助かる!ちょうど小腹が空いていた所だ。皆を集めてくれ、一緒に食べようではないか!」
「承知しました、すぐに連れて来ます!」
執事はメイドや料理人を呼びに慌ただしく出ていった。
「俺も丁度いい所ですし、ここで休憩にします!」
「そうだな。では皆で食べながらこれを見ようではないか!さて、どれにしようか……」
ガイアが取り出したのは魔導パソコン。彼がチェックした配信を探している間、ソードは窓の外を覗いていた。
「兄上……負けませんよ!俺は必ず立派な剣聖になります!そして父上も兄上も、絶対に超えてみせますから!」
「ソード、準備出来たぞ!」
「はい!俺も行きます!」
一言空に呟いてから、ソードは家の者達と一緒にティータイムを楽しむのだった。
◇◇◇
それからしばらく。遂に王国会議の日が訪れた。国王や勇者はもちろん、他の国の要人も参加するこの会議に向けて、多くの者達が歩いている。
「す、少し体が……。」
「あまり固くなるな!いつも通りでいいのだ!」
ソードの背中を押して、ガイアは会議場へ向かう。すると入り口には、青髪の男性が立っていた。
「おや?貴方はカイン殿ですかな?」
「えっ?……け、剣聖ガイア!?」
「貴方の活躍は聞いている。ストーレの街をより良くする為にも、王国会議、共に頑張ろう!」
「ち、父上待って下さい!」
ソードはカインにペコリと頭を下げて、一緒に中に入っていった。
「王国は嫌いだけど、あの人は嫌いになれないんだよなぁ……。」
カインは中に入った二人から少し遅れて、会議場へ足を進める。
「なら俺も頑張るぞ!何の議題が出ても、俺なら大丈夫さ!」
カインは自分を鼓舞し、中へ入った。
王国会議がもうすぐ始まる。それぞれが自分の席に向かって歩いて行くのだった。
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