不穏な空気、教会での出来事
「な、何ですかこれ!皆倒れてるじゃないっすか!?」
「ど、どうして!?ギル、ここは安全じゃなかったの!?」
「わ、わん!」
「我にも分からぬ……とにかく依頼者を探すぞ!」
僕達の目の前に現れたのは、教会の中で寝かされている人達。寝ているみたいだけど、体が黒っぽく変色している!これはどう見たって普通じゃない!
「いた……こっちっす!」
「サリア、今行くぞ!」
サリアの側に寝ていたのは、一人の男の人。この人が依頼を出した人なんだ!
「う、うー。」
「大丈夫っすか!起きて下さいっす!」
「あ、あなたは。」
「起きたか!一体何があった!?」
「み、皆さんも……。」
男の人は体を起こし、ぼーっとした表情でこっちを見る。
「はい。皆ここに避難していたのですが、何だか急に眠くなってしまって……他にも体調を崩した者が居たので、神父様に相談したのです。そうしたらここで休んだ方が良いと。」
「特に何とも無いですか?体が痛いとか、動けないとかは?」
「え、ええ。大丈夫です。さ、サリアさんこの子は?」
「彼はティム、あーし達が応援を頼んだ子っす。こう見えてとっても強いんですよ!」
普通に会話出来てるし、体以外に問題は無さそう。大丈夫かな……そうだ!
「あの!神父さんって今どこにいますか?」
「神父さん?今は教会の奥にいらっしゃると思います。私達の為にお祈りをしてくれるらしくて……本当に感謝しかありませんな。」
「じゃあ神父さんに聞くっす!ちょっと用事があるので、ここで失礼するっす!」
「は、はあ。」
僕達は奥に駆け出す。予想外の事態、神父さんにも協力をお願いしなきゃ!
「ここだ!サリア、開けるよ!」
「ええ!急ぐっすよ!」
ちょっと奥に進むと、大きな扉があった。僕達はここを押して……よし開いたぞ!
「いた!あそこだ!」
「よし!神父さーん!緊急でお話があるっすー!」
「おや?君達は?」
神父さんがこちらを振り向く。手には杖をもっていて、どこか神聖な感じが漂ってくる。
「緊急事態っす!魔物が押し寄せてきて、霧も濃くなってるっす。ここから早く逃げた方が良いっすよ!」
「こ、ここから離れる?そんなに酷くなってるのか?」
「あまり時間は無い。今ならここを抜けられる奴が居るのだ。敵も一度追い払った。早くしろ!」
「そ、それは出来ない!もうすぐなんだ!」
神父さん?何か後ろを気にしているみたい。
「もうすぐ?何か用事の最中ですかね?ならあーし達も手伝いますか?」
「駄目だ!これは私一人の仕事だ、今はここを離れるわけには行かない!」
「余程大事な事らしいな。良いだろう、我が護衛してやる!他の奴らは先に外に逃がすぞ!」
「了解っす!ティム、戻るっすよ!」
「うん!」
「駄目だと……言っているだろうが!邪魔をするなぁぁぁ!」
「……貴様一体何をしているのだ!?このままだと全滅だぞ!?いや、待て……この感じ……まさか……!」
えっ!?ギルがいきなり手を鎌に変化させて……神父さんの方へ加速した?
「フンッ!」
ギルの鎌が……神父さんを斬りつけたの!?
「な、何してるんですかギル!?」
「貴様……サリア、ティム!これを見ろ!」
「「えっ?」」
神父さんは頭への攻撃を腕で防いだ。でも腕が……え、何で!?
「い、痛いじゃないか!?どうしてこんな事を!」
「……今のが痛いで済むものか。まともな人間ならな。」
ギルの攻撃は腕を吹き飛ばしたはずだった。なのに……腕がもぞもぞと動いて、再生を始めている!?あれは回復魔法じゃない!
「し、神父さん!今のは……。」
「……全く。困った事をしてくれる。もう少しなのに……。」
周りの空気が変わった……この人ただの神父さんじゃない!
「ここの人間達は供物なのだ……ここから動かれる訳にはいかない!」
「レル!構えて!」
「ギル!行くっすよ!」
「わん!」
「任せろ!」
神父さんが手をこちらに向けると、黒いビームが!僕はジャンプして攻撃を避ける。
「レル!」
「わん!」
空中に居る僕の足に、レルがブレードをぶつける。僕はそれを足場にして……奴に一直線だ!
「そこだっ!」
ブレードを首に叩き込む!でもこれは片手で止められた!
「人間如きが……私に勝てると思うか!」
「ええ!あーし達は勝つっすよ!」
続いてサリアが鎌を振るう!狙ったのは足元だ!
「ふう。」
「……チッ!」
黒い霧が足に纏わりついて、鎌を弾いた。すかさず飛び退いた僕は、状況を整理……違うそれどころじゃないよ!とにかく、あの神父さんは街の人達を殺そうとしている、それを止めるんだ!
「サリア!あの人何の目的があってこんな事を?」
「考えるのは後回し!後ろには寝ている人達が居るのよ。ここで仕留めるわ、ギル、力を貸して!」
「分かっている!全力でやれ!」
サリアが目を閉じ、魔力を鎌に込め始める。そして目を開けると、敵に向かって走り出した!
「喰らえ![魔技]シャドウサイス!」
すぐに高速移動で背後に回り込み、魔力の鎌を地面に撃ち込む!その地面にあるのは、奴の影だ!
「何!?か、体が動かぬ!?」
「その首もらった!」
サリアが鎌を思いっ切り振ると、奴の首に命中だ!これで
「効かぬわ!」
「……えっ?」
鎌の先には黒い霧!?攻撃が当たってない!
「ハアッ!」
「しま、キャッ!?」
「わふっ!」
レルが背中でサリアをキャッチ!もう一度距離を空けて、一度呼吸を整える。
「サリア大丈夫!?」
「平気よ。私の事はいいから、まずはアイツを倒す事だけ考えなさい!」
「分かってる、でも無理はしないでね!」
今ここに居るのは僕達とサリア達の四人。早くしないと街の人達も危ないんだ……お願い!マイラさん、リッチ!異変に気づいて……!
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