作戦変更!街からの脱出!
僕達は合流した後、一度拠点の民家に戻る。皆で集まってすぐに、リッチも入って来た。
「お疲れ様じゃな。皆で集まったという事は、何か重要な話があるのじゃろう。」
「リッチ!僕凄いでしょ!皆やっつけたんだよ!」
「俺も頑張ったぜ!今回一番の大活躍だ!」
「アオハもラルフも、二人とも凄いのう!よしよし。」
「もっと褒めてくれてもいいよ!」
「もっと褒めてくれてもいいぜ!」
アオハ君とラルフさんはお互いに手柄を主張している。二人の力があったから勝てたんだ、本当に頼りになるよ!
「かめ……。」
「うけ……。」
「二人とも、彼らが頑張ったのは事実だよ。……私達も頑張ったんだけどね。」
カズハさん達三人は複雑な表情……皆で頑張ったんだもんね。
「リッチ!僕達も頑張ったよ!」
「もちろんじゃ!皆なでなでしてあげるぞ!」
「悪いがそれは後にしてくれ。今から話があるのだからな。」
「わん!わん!」
ギル!それにレルも!二人で何を話してたんだろう?
「あまり時間が無い、早速始めよう。サリアも来てくれ。」
「あーい。どんな話かしっかりと聞かせて貰うっすよ。」
皆で机を囲み、準備完了!それを確認して、ギルが口を開いた。
「貴様達のおかげでこの街を守り抜く事が出来た。本当に感謝している。」
「ああ!どうだ!俺も役に立ったろ?」
「そうだな。思ったよりは強くなっていたようだ。頼りになる。」
「だろ!」
「これからも頼むぞ!……では、本題に入ろう。」
ギルはそう言うと、僕達を見渡して……
「ここに来た敵は一通り倒す事が出来た。当分は安全だろう。」
「ギル?どうしたの?」
「ティム。いや、これは我と犬っころで考えた事なのだが……。」
「何ですかいったい?早く教えて欲しいっすよ。」
「ええ。何をするにしても、敵の居ない今が好機。早く動かねばなりません。」
「分かっている。我の考えは……」
ギルの考えは……?
「敵の居ない今、この街の者を外へ逃がす事だ。」
………………。
突然の提案に、皆沈黙していた。
「ちょっと待った!外に出るとぐわっと……もわっと?とにかく、結構重いぞ!?それに、ここで迎撃作戦を立てたのは、街の人達の安全を守る為だろ?」
「ラルフ、貴様の言う通りだ。しかしこの霧が晴れる様子は無い。敵も……次が来ないとは限らんからな。何度も来られては守り切れなくなる可能性がある。」
「なら俺達がここに居る間に山を調べたらどうだ?サリアとギルってかなり強いだろ?山の原因を何とかすればいいんじゃないか?」
「それも考えた。では……もし我らがしくじった時はどうする?我らで勝てない相手に、貴様達で勝てるのか?」
「そ、それは……。」
ラルフさんが口を閉じる。……僕の知っている限り、サリアとギルのペアは本当に強い。単純な強さはもちろん、二人のチームワーク……これは僕達よりも上かもしれない。負けてるつもりはないけど、もしこの二人が負けるなら……。
「それとレルが言っていたが……その外の空気、段々と強くなっているようだ。このままでは我々も危険になる。」
「待て!それでは街の人達が耐えられない!その状態でここを出るのか!?」
今度はカズハさんが口を開く。ギルは首を縦に振って、彼女の意見に賛成していた。
「それも分かっている。しかし、出るなら今しかない。我々が弱るようなレベルで、普通の人間が暮らせると思うか?」
「だが……。」
「貴様達、一度巨大な魔力を感じただろう?あそこではマイラがバリアを張ったから、何とも無かった。……手を貸してくれるか?」
「なるほど、私が街の人達を外に連れ出すのですね。敵が居なければ……ええ。すぐに避難できるでしょう。」
マイラさんが手を挙げてアピール。これで決まり……かな。
「魔物達も、マイラがここに居るのは分かっている。これは大きな利点だ。消耗した今なら、マイラ相手に奴らも出てはこれまい、これがチャンスになる!」
「ね、ねえ……皆マイラマイラって……強いのは分かるけど、マイラはそもそもどんな魔物なの?」
このタイミングでアオハ君の質問!あ、後の方が……。
「はい。私はヘルキマイラですよ。」
「「ヘルキマイラ!?」」
アオハ君と……カズハさんが同時に驚いた!カズハさんはその場に尻もちをついちゃった。
「ティム、本当か?マイラが……ヘルキマイラ……。」
「はい!でも、とってもいい人ですよ!カズハさんならきっと分かるはずです!」
「……そうだな。会ったばかりだが、確かにマイラは悪い奴じゃない、とは思うよ。でも、驚いたよ……。」
「僕も驚いちゃった!それなら魔物達も逃げ出すわけだね!」
アオハ君が手をポンと叩くと、ギルが机を軽く叩き、注目を集める。
「さあ、話はここで終わりだ!荷物をまとめてくれ!我らは教会に行ってくる。依頼主と交渉して、了解を取り次第ここを出るのだ!」
「行き先はストーレで良いっすよね?あそこなら誰でも歓迎っす!」
「調査は中断か……いや、命の方が大切だよな!分かった、先に入り口に行ってるぜ!」
「かめー!」
「私達も行こう!警戒を続けておくんだ!」
「ま、待ってよー!」
「うけー!?」
ラルフさん達は一度入り口に向かう。そしてこの場に残ったのはマイラさん、僕達、そしてサリア達!リッチもいるよ!
「ワシ空気じゃった?」
「そんな事ないよ!もうひと踏んばり、一緒にお願い!」
「わん!」
「よかろう!ワシに任せるのじゃ!」
「山を調べるのはどうするっすか?あの魔力、やっぱり気になるっす。」
「後回しで良い!まだ動く事は無いだろう。後で改めて来れば良いのだ。」
「了解っす。んじゃ、行くっすよ。皆こっちっす!」
それからあっという間。僕達は教会に辿り着いた!早く事情を説明して、ここを離れないと!
「どうもー、って開かないっすね。何か奇妙な感じ……。」
「敵が近づいた時の為に厳重にしてあるのだろう。……聞こえるか!大事な話がある、ここを開けてくれ!」
「わ……わふ!?わん!わん!」
「れ、レル!?これ!?」
返事がない……ううん、それどころか、人の気配が無い!?
「サリア、大変だよ!早くここを開けて!」
「ええ!何か気になるっすね!後ろに下がって!」
サリアが鎌を取り出し、斬撃を放つ。それが扉に当たると、扉がガタンと外れて隙間ができた!
「フンッ!」
ギルが力を込めて扉を開ける。僕達はそっと中の様子をチェックすると……。
「な、何ですかこれ?」
「ど、どうして……。」
視界に入ってきたのは……寝かされている街の人達だった。気づいた異常を除けば、皆眠っていて、すやすやと寝息を立てていたんだ。
身体中が干からびたみたいに痩せ、肌がどす黒く変色している事を除けば。




