少年テイマー、異形の魔物と遭遇する
僕は目の前にいる魔物、ヘルキマイラを構成しているパーツをじっと観察していた。珍しい魔物なのも理由だけど、動いた時にすぐ対応出来るようにしないと。……あの体はただの獅子じゃない。魔法を使える魔物、魔獅子の体だ!
魔獅子……獣の魔物、その上位に位置する魔物で、魔法が得意分野。強い冒険者が複数集まって、ようやく倒せる程の強さ。
ガーゴイル……全身岩石や鉱物で出来た上位悪魔。魔法は苦手だが、その破壊力は魔獅子をも凌駕する。
そしてドラゴン……数多い魔物の中でも最強クラスの種族。もし襲われれば街や国が壊滅する事もある程の強大な力を持っている。
どれもこれも珍しく、滅多に会うことの出来ない、でも会ってしまえば恐怖する程強い魔物。
そんな強力な魔物のパーツを持つ、災厄のような魔物。それがヘルキマイラなんだ。
「やはりそちらにいるのは……人の子ですね。」
「ひゃ、ひゃい!」
僕はダンジョン地下の大広間で、そのヘルキマイラと会話をしていた。
「こんな所へ何の用があって来たのですか?」
落ち着こう……相手に敵意は無さそうだ。きっと強者の余裕なんだ。いざとなったらすぐに殺せるから、余裕を保てている。ここは機嫌を損ねないように……。
「は、はい!僕は依頼を受けて、ダンジョンの調査に来たんです!帰ろうとした所で穴に落ちて、ここまで来てしまいました!」
「びー!びー!」
「……ほう。そこの魔物の仲間を探していたのですね。そしてそれは私の前足に……。」
「は、はい。」
ヘルキマイラはポイズンビーを見ている。それは獲物と言うより……子どもを見ているような、穏やかな目だった。
「では、用は済みましたね?それならすぐにここを出たほうがいい。」
「そ、それが僕達、上から落下してきたので帰れないんです。地上へ出る方法はありませんが?」
「そうですね……それでは、私の羽を使いなさい。これは対象をある程度の距離でワープさせるアイテムです。水路まで戻れれば入り口に帰れるでしょう。」
「えっ!?ヘルキマイラの羽を!?」
突然の提案に驚く僕達。目の前のヘルキマイラはどこか急いでいる様子だった。
「さあ、早く。急がないと危険です!」
「は、はい!失礼します!」
急いで羽によじ登り、翼から一本羽を取る。……凄い。この羽一本に、凄い魔力が込められているんだ。
「来た道を走って!間に合わなくなる!」
「あ、貴方は……?」
僕はもう一度ヘルキマイラを見た。……ヘルキマイラの足に見えたのは、まるで噛みちぎられたような、深い傷跡。ヘルキマイラが傷を負っている、その事に気を取られた一瞬で……僕の頭に斬撃が飛んできていた。
「あっ!?」
間一髪でその攻撃を避ける。振り向いたその先に居たのは……黒いモヤのかかった、謎の生き物だった。僕の持ったポイズンビーの巣を、すごい形相で睨みつけている。もしかして、巣をここまで運んだのは……。
「ピギャァァァァァァァァァ!!?!?」
「な、何だあれ!?魔物なの!?」
「びー!?びー!?」
「間に合いませんでしたか……。あれが私をここに閉じ込めているモノなのです。」
「ヘルキマイラを閉じ込める!?そんなに強い魔物なんですか!?」
「いえ、恐ろしいのは強さではありません。むしろ……。」
「ピッピピギャァァァァァァ!?!?。?」
モヤのかかった魔物は爪を突き出して襲ってくる。僕はすかさずブレードでガードするけど、足元の地面がヒビ割れ、僕の体が吹き飛ばされた。
「うっ……そこだっ!」
僕は体を回転させて地面に着陸する。更に爪を突き立てる魔物にすかさずブレードで斬りつけた。魔物は吹き飛び、地面に倒れ込む。でも……。
「ピィギャァァァァァァ!!!!!」
「傷が……治ってる!?確かに斬ったはずなのに!」
傷は再生し、再び立ち上がる魔物。それにしても早すぎる!
「恐ろしいのは再生力です。生半可な攻撃ではダメージにはなりません。」
「そんな、どうすれば……。」
「私の後ろに隠れて!タイミングを見て扉をくぐるのです!」
「で、でも!」
「早く!そこの魔物も一緒に!」
「びー!?」
急いでヘルキマイラの後ろに移動する僕達。すると魔物はヘルキマイラへと向かい合う。
「ピギャァァァァァァァァァ!????」
「ハァァァァァァ!」
鋭い爪がヘルキマイラへ襲い掛かるが、ヘルキマイラはその爪を腕ごと引き裂いた。そして翼を振り下ろし、足も両断する。
「ピィ!!????」
「今です、走って!」
「は、はい!行くよポイズンビー君!」
動きが止まった魔物の横を全力で走る僕達。だけど、その魔物は首を捻じ曲げ、扉の方へ顔を向ける。
「ぴ、ピ、ピギャァァァァァァァァァ!!」
……放たれたのは黒色の光線。僕達の入った扉に当たり、爆発した。激しく上がる黒煙、それが晴れた時に見えたのは、崩れた壁によって塞がれた扉だった。
「な、何あれ……。」
「び、びー……。」
そして魔物は僕達を見て咆哮を上げる。
「ピィィィギャァァァ!!!!!!!」
お前達に逃げ場は無い、まるでそう言っているみたいに。
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